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新・編集長コラム

かつての「合コンでサラダ取り分け問題」はなくなる!?「一人一皿」「個別盛り」が酒場のスタンダードに

フードスタジアムでは日々ニューオープン店の取材をしているが、オーナーに話を聞く中でここ最近よく出てくるキーワードがある。それが「個別盛り」「一人一皿」だ。

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


猫も杓子も「個別盛り」

どの店もとにかく「個別盛り」「一人一皿」を謳う。従来、料理を大皿で出してグループ内でシェアしていたところ、最初から一人一皿に盛って提供するスタイルが流行中だ。誰かが気を利かせて取り分けるストレスがないし、他人と箸をつつき合うこともないので衛生面を気にする人にも嬉しい。もともと単価の高いコースの店などではこのような個別盛りが基本だが、これが低単価の店にも広がっている。次いで「小皿」「少量多種」も聞かれるキーワード。ポーションを抑えた小皿料理を、少しづつたくさんの種類を楽しめることを打ち出したものだ。

3月にオープンしたばかりの恵比寿「肴場あおもん」は、五反田「酒肴あおもん」の2号店。席数を多く確保するぶん、お客に窮屈さを感じさせない工夫として「個別盛り」や「小皿」を活用。一人一皿ずつ、小皿に盛り付けて提供。テーブルが狭い分、皿を小さくすることでスペースを確保する狙いがある。

前回のコラム「居酒屋以上割烹未満」の店でも「個別盛り」を取り入れるところは多いと紹介したが、居酒屋、和食に限らず、イタリアンやフレンチ、中華、アジアンなど幅広いジャンルで普及している。都立大学に1月オープンした「ニューレトロイタリアン マーブル」も一人一皿の「個別盛り」が基本。オーナーの渡部氏は「大皿だとうまく取り分けられず、皿にソースが残ってしまったりするのがもったいないと思っていた」ということだ。特に洋食では肉料理(塊だと特に)をナイフやフォークを使ってキレイに取り分けるのは、普通のお客にはなかなか難しい。

特に大皿料理のイメージが強い中華やアジアンを、個別盛りや小皿にすることでお客の使い勝手を上げ集客に成功している例も少なくない。例えば学芸大学の「韓国スタンド@(アットマーク)」は、大皿で提供されることの多かった韓国料理を小皿で楽しめる立ち飲みとして、一人で訪れても様々な種類の韓国料理を少しずつつまめると評判だ。同様の発想で「小皿中華」をコンセプトにする店も多い。

「みんなで同じものを楽しむ」から多様性の時代へ

「個別盛り」や「少量多皿」の背景には原価や人件費の高騰がある。物価が上がり利益が圧迫される中、これ以上食材や調理で差別化するのは難しくなった。そこでこれらが新たな付加価値の付け方として注目されている。「個別に盛り付ける」は大きなコストがかからず比較的どの店でも実行しやすい。「少量多種」で、「量」ではなく「種類」で満足度を高めるのもポイントだ。
もともとはコロナ禍で感染予防の観点から「個々盛り」を始めた店も多いが、コロナの影響が薄れてきた現在も、異なる意味合いで受け入れられているように思う。人々の価値観が「みんなで同じものを楽しむ」から多様性の時代となり、それぞれが個別でものを楽しむ消費形態にシフトしていることも、個別盛りが受け入れられていることと関係しているはずだ。

かつて平成の時代にあった「合コンでサラダをとり分ける女は気が利く(?)」といった話は消えるかもしれない。

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