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新・編集長コラム

ガストロノミーと大衆酒場の融合「ガストロ酒場」が、外食マーケットの裾野を広げる

ガストロノミーの世界が多様化している。ガストロノミーとは「美食」「美食学」などと訳され、単に空腹を満たす以上の意味を料理に見出し、嗜好性を追求する世界観だ。そうしたガストロノミーの食文化を、リーズナブルに日常使いの大衆ポジションに昇華した酒場が増加中。これを「ガストロ酒場」と呼びたい。高単価レストラン顔負けの品質と、酒場の気軽さを併せ持つ「ガストロ酒場」は、一部のフーディ達のものだったガストロノミーの裾野を広げ、外食マーケットの拡大に寄与する可能性を秘めている。

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


「ガストロ酒場」の震源地は学芸大学

その「ガストロ酒場」の代表格と言えるのが、9月、学芸大学にオープンした「ポップガストロノミーレインカラー」。同エリアで人気を博す「ワイン食堂レインカラー」「大衆酒場レインカラー」を展開する手島義朋氏による新店舗だ。高級食材を効果的に取り入れ、繊細なスパイス使い、ユニークな調理法も駆使したガストロノミックな料理を揃えるが、それらは見せ方やポーションを工夫し、すべて1皿1000円以下に収まるリーズナブルな価格設定。料理の様子からしてドリンクはワイン推しかと思いきや、ホッピーやチューハイなどの気取らない大衆酒場ドリンクで味わってほしいと提案している。「数万円のレストランはハードルが高い」という若い人に、気軽にその世界観に触れてもらいたいという挑戦的なテーマの店だ。

この他にも、学芸大学では相次いで「ガストロ酒場」が登場している。今年3月にオープンした「ホドケバ」も「ガストロ酒場」と言えそうだ。同エリアで人気酒場「アオギリ」を運営する澤出晃良氏の新店。馴染み深い大衆居酒屋的つまみに、本格的なイタリアンやフレンチのエッセンスをさりげなく落とし込み、それらをホッピーやサワーで気取らず楽しんでほしいとオープンした。大衆居酒屋「らしさ」と「らしくなさ」が混在する、不思議な雰囲気が魅力だ。

学芸大学のビストロ「Et-Ça-Qu’est(エサケ)」は、今年2月に「洋食ノスリ」に業態変更しオープン。コンセプトは、日本の大衆洋食をワインとともに楽しむ。ハンバーグやエビフライといった「日本の大衆食カルチャー」を、熟練シェフがフレンチの技法を織り交ぜ、自然派ワインに合う味わいに昇華。大衆食×本格フレンチを、カウンタースタイルでカジュアルに楽しませる。

良質な飲食マーケットを形成する学芸大学。食への感度が高い住民が多く、レストラン慣れしている人も多いはず。そうした人達があくまで「普段使いできる店」としてのニーズに「ガストロ酒場」はハマる。この街で「ガストロ酒場」が増えているのは必然、学芸大学を震源地にトレンドが広がっていきそうだ。

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