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新・編集長コラム

コロナ禍で減る外食機会、「おまかせコース」と「専門店」がこれからの時代に強いワケ

コロナに伴う酒類提供制限の影響によって人々の外食機会は減少した。コロナの収束もまだまだ先になりそうな現在、今後もその傾向は続くはずだ。その分、お客は1回の外食に今まで以上に期待や意味を持つようになっている。選ばれるのは「なんとなく入ってみる」店ではなく、「ここに行きたい!」と強い目的意識を持って行く店。そうしたニーズの変化をくみ取り、今までとは異なるスタイルに挑戦するオーナーが相次いでいる。コロナ禍や、さらにその先の未来を見据え、将来どのようなスタイルが求められるのかを考察した。

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


「はしご酒文化」がコロナ禍で消える?飲食店はどう動くべきか

酒類提供の時間が制限されたことで、一軒の店だけでなく、二軒、三軒と店をまわるはしご酒をするシーンは減った。そんな変化を察知したオーナー達は早速行動に移している。

例えば、8月にオープンした居酒屋「代官山ひなた」。オーナーは赤川登希夫氏、学芸大学の人気酒場「ひとひら」を運営している。「ひとひら」は1日に3~4回転する人気ぶりで、じっくり腰を据えて長時間居座るというよりはちょい飲み客がメイン。どちらかというとリーズナブルな価格帯で多くの客数をさばいて利益を出すスタイルだ。はしご酒にもよく使われている。

コロナ禍により外食機会の減少、引いてははしご酒文化の弱まりを感じたという赤川氏。行きついたのが「二軒目がいらない、一軒で満足できるおまかせコースの店」だ。「代官山ひなた」の単価は8000~1万2000円と、居酒屋にしては高価格帯に設定。おまかせコースを主体とし、前菜からメイン、〆、デザートまでひと通りを提供。ゆっくりと長い時間をここで楽しめる、「二軒目どこに行く?」を考える必要のない店づくりを目指した。

そもそも、この高単価業態の構想はコロナ禍以前からあったそう。多くのお客をさばく薄利多売型の店よりも、少数のお客を高単価でもてなす方が、将来、年を重ねて体力が衰えた時のことを考えても良いだろう、とのことだ。

また、奇しくも日本酒バル「青二才」を展開する小椋道太氏も同じ考えだった。それは11月にオープンした新店舗「角打ち割烹 三才」に反映されている。同社は「日本酒をもっとカジュアルに」をモットーに日本酒バルを展開してきた。本店の「青二才」は、飲み屋が数多く軒を連ねる中野の立地もあり、はしご酒御用達の店だ。小椋氏は赤川氏同様、コロナ禍でははしご酒文化の消滅を危惧した。今回の「角打ち割烹 三才」では、これまでのカジュアルバルから一転、1万2000円の日本酒ペアリング付きおまかせ割烹コースを提供。一軒で満足できる高単価の店を出すことで新しい客層の獲得を目指した。なお、同店では1つの店舗を2つにゾーニングして、一方で気軽な日本酒バルとしても営業する二毛作スタイルだ。ちょい飲み客とコースの目的客の両方のニーズを取り込んでいる。

これまでははしご酒を前提にしたちょい飲み業態を展開していたオーナー達は、いま、単価を上げた「一軒完結型」に挑戦し始めている。

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