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ありえない立地、ありえないファサード、ありえない業態! グローバルダイニング卒業生がブルーオーシャン戦略を狙い、千葉の二等立地に独自業態「イタリアン食堂 Fish labo(フィッシュラボ)」を3月8日開業!

立地から、ファサード、業態まで“ありえない”尽くしで独自性を高め、将来的な多店舗化を見据えながら千葉でのブルーオーシャン戦略を狙う
店内は木の温もりを生かし、アットホームな雰囲気に仕立てる
ワカサギのエスカベッシュなど、多彩に揃えた魚貝料理を売り物に据える
ソウルラボ代表取締役の島田稔丈氏(後列中央)、総料理長の馬場剛氏(後列右)、尾辰商店の河野竜太朗氏(後列左)、そしてスタッフの面々

(取材=印束 義則)


最近の飲食店の開業スタイルで大いに驚かされるのが、以前なら考えられないような不利な立地にあえて出店し、それでいてきちんと繁盛している店が増えてきていることである。もちろん、そのようなスタイルはこれまでにもなかったわけではないが、一般的に悪立地での商売はなかなか一筋縄ではいかず、長年に渡って続けていくことは決して容易でなかった。だが、そうした従来の常識を覆すかの如く、最近の二等立地の繁盛店はみな巧みに戦略を練り上げることで、ハンディを見事克服しているケースが少なくない。かつてこのような店は、「こんな場所に、こんな店が!」といった“隠れ家的”な驚きで目的客を誘引したものだが、最近ではそれに加え、さらに多様な要素を緻密に盛り込むことで不利と思われる立地を魅力ある立地へと作り変えている。そうした手腕を目の当たりにすると「改めて“二等立地”の定義を考え直す必要があるのではないか?」といった気持ちにさせられてしまう。 3月8日、千葉市にオープンした「イタリアン食堂 Fish labo(フィッシュラボ)」も、そうした“二等立地”と呼ばれる場所へ果敢に挑戦した飲食店の一つ。同店を経営するのはソウルラボ(千葉県千葉市)で、代表取締役の島田稔丈氏と総料理長の馬場剛氏は、かつてグローバルダイニングでともに濃密な時間を過ごした間柄。「カフェ ラ・ボエム」で島田氏が店長を、馬場氏が料理長を務め、阿吽の呼吸で通じる息の合った2人だからこそ、今回のような立地にも臆することなく挑戦できたのである。島田氏はアルバイト時代も含めてグローバルダイニングに10年間在籍し、そのうち6年間を店長として勤務。特にユニットリーダーまで務めた実力は折り紙つきで、店舗の立ち上げにも携わった経歴を持つ。グローバルダイニングの店はというと、都心ではあるものの、駅からちょっと離れた微妙な距離感の店舗が少なくない。そうした“近くもないが、遠くもない”、そんな絶妙な距離感を身を持って体験しているのが、島田氏の何よりの強みなのである。 同店のある場所は千葉駅から徒歩5~6分で、駅近くにはちょっとしたオフィス街があり、それを抜けて住宅街へ入るちょうど境目の場所にある。周辺には目印らしい目印もなく、初めて訪れる客だと店にたどり着く前に「本当にこの道で良いのか?」との不安に駆られ、思わず踵を返したくなる、そんな悪立地だ。同店が開業する前はカフェが1年間営業しており、その前は約10年間空きっぱなしになっていた、まさに借り手のいない筋金入りの二等立地である。とはいえ、決してマイナスの要素ばかりではない。店頭が駅への抜け道となっていて朝夕の通勤時は人通りが多く、それだけ多くの人の目に触れやすい。また、賃貸マンションが多いことも有利な条件で、住宅ローンを抱えていない分、それだけ外食に金を割ける客層が潜んでいるとも解釈できる。最近の二等立地の繁盛店に多いのが同店のような立地条件で、周囲に何もなく一見「よくこんな場所に店を出したな」という悪立地に見えながらも、実は駅側からも住宅街からも両方から集客が見込める、隠れた“好立地”なのである。繁華街や住宅街など、どちらか一方の客層に偏らない分、客の利用動機は一気に広くなる。繁華街側から見れば“ありえない立地”で、その隠れ家的魅力は思わず誰かに話したくなるもの。逆に住宅街側から見れば、何もないエリアに店舗を構えてくれた誇るべき自慢の店ということになる。客の絶対数が少なくとも、幅広い客をもれなく拾い上げれば、十分に経営が成り立つだけの需要を見込めるというものだ。 もちろん、こうした“繁盛法則”が成り立つのも、あくまで「わざわざ足を運びたい」と客に思わせる強力な業態力があってのもの。同店が大きな売り物に据えるのが、メニューの7割を占める魚貝料理である。18坪という小規模店ながらも1日20~30種の魚種を扱い、そのうち4~5種は静岡の伊東や沼津、千葉の大原などで朝獲れした産直のものを提供。「カフェ ラ・ボエム」で培ったイタリアンをベースに魚貝の魅力を前面に打ち出した、“フィッシュ トラットリア”とも言うべく独自の業態で勝負をかける。メニュー表には「本日のお魚をお好みの調理法で」と謳った「アクアパッツァ」(1400円)、「ブイヤベース」(1600円)などの“魚”。「マグロのカマ香草焼き」(880円)、「マグロホホ肉の赤ワイン煮込み」(980円)などの“マグロ”。「ムール貝のトマトスパイシー蒸し」(1480円)、「アサリのワイン蒸し」(1250円)などの“貝”。「イイダコのトマト煮込み」「エビとマッシュルームのアヒージョ」(各500円)などの“小皿料理”。その他、「魚介のフリット」(980円)、「アジと焼きキャベツのペペロンチーノ」(850円)、「グリルしたマグロのニース風サラダ」(880円)など、魚貝メニューがずらりと並ぶ。また、その日の珍しい魚貝を盛り込む「本日のカルパッチョ盛り合わせ」(850円)を売り物に据える。 同店がこうした魚貝に特化した売り方を採用したのは、尾辰商店という強力なパートナーを得ることができたことが何より大きい。尾辰商店と言えば、東京都中央卸売市場の仲卸にしてデパートなどにも鮮魚店を出店し、またさまざまな繁盛飲食店と付き合いが深いことでもその名を知られる。今回、尾辰商店が鮮魚店を出店する千葉のデパートの近くに店舗を構えたことで、効率の良いオペレーションを実現。本来、18坪の小規模店では扱えない多彩な魚貝の提供を可能とし、“ありえない業態”として圧倒的なまでの差別化を図っている。アルコールはボトルワインに力を入れ、ほとんどのワインを2500円均一で提供。こうした気軽なプライスゾーンを抑えた上で、ワンランク上のワインを求める客向けに3800円~8800円の価格帯のものもきちんと押さえている。 島田氏が千葉で開業を果たしたのは、尾辰商店との関係の他、都内に比べて競合の少ない千葉でのブルーオーシャン戦略を狙ってのもの。そのために、絶対の自信を持って開業したのが今回の業態である。二等立地ゆえ家賃も安く抑えられ、損益分岐点は150万円で、月商300万円を目指す。今回店舗には置き看板以外は何もなく、いったい何の店かも分かりにくい“ありえないファサード”に仕上げている。看板類はおいおい設置していけば良いとの考えで、当分は全面ガラス張りの店内からこぼれる、客の楽しげな飲み、語らうアットホームな姿を一番の“看板”として通行人にアピールしていく。同店の繁盛を足がかりに将来的な多店舗化を視野に入れ、ブルーオーシャン戦略を進めていく。“ありえない立地”での、“ありえないファサード”による、“ありえない業態”。だからこそきっと“ありえる”であろう「イタリアン食堂 Fish labo」の二等立地の新繁盛法である。

店舗データ

店名 イタリアン食堂 Fish labo
住所 千葉県千葉市中央区新田町15-1

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アクセス JR千葉駅より徒歩 5~6分
電話 043-246-6412
営業時間 11:30〜14:30(L.O.14:00)、17:30〜24:00(L.O.23:00)
定休日 月曜日
坪数客数 18坪・32席
客単価 昼950円、夜3000〜3500円
運営会社 株式会社ソウルラボ
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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