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大井町出身のオーナーが、さらに街を盛り上げる新業態を放つ。10年に及ぶストーリーが刻まれた「立呑み8」が、大井町に2月24日オープンして話題を集めている

店名の「8」と大きく書かれた暖簾が印象的な入口
コンクリート打ちっぱなしの作りは、一号店の「H」と同様とのこと
「山梨県 信玄鶏の白レバー炙り」(480円)では新鮮な肉の旨みを堪能できる
鮮やかな色彩も特徴の「和ピクルス」(380円)
代表取締役の中田一氏

(取材=三輪 大輔)


JR京浜東北線で品川駅から一駅の大井町駅。その東口周辺には、東小路や平和小路、すずらん通りなどの横丁があり、個性的な飲食店が数多く存在しているため、連日たくさんの人で賑わう。飲み歩きのメッカ・大井町の駅前を走る通りを大井ジャンクション方面に3分ほど歩くと、瀟洒な外観に大きな暖簾の店が目に入る。そこが2月24日にオープンした「立呑み8(たちのみはち)」だ。運営するのは、H(東京都品川区、代表取締役 中田一氏)で、「立呑み8」の隣にある「H(エイチ)」に続いて、2店舗目の展開となる。

今回、大井町が地元の中田氏が一号店目をオープンさせて、同店が誕生するまで10年の歳月があった。その間、同氏は、安田久氏が主宰する外食虎塾に参加して見識を深めたり、飲食経営者と交流したりして、次の出店の機会をうかがっていたという。最終的にオープンを決めた背景について、同氏は「今回の出店は、お客様の声が決め手になりました。『H』は、和食ダイニングのため、単価も5000円を超えますが、おかげさまで大変好評をいただき、ウエーティングになることが珍しくありません。そのため、お客様からは、二号店目を求める声もありました。そこで、飲みながら入店を待てるようなリーズナブルな価格帯の店舗を作ろうと思い立ったのです」と語る。こうして誕生した「立呑み8」は、メニュー開発から店舗デザイン、販促、マネジメントまで中田氏自身が行った。そのため、多くのこだわりが同店には詰められている。例えば、テーブルの高さは数センチ単位で吟味を繰り返し、ロゴの『8』も同氏が1000回近く書いて完成させたほどだ。同氏は「店作りでは、諦めない姿勢を大切にしました。細部まで徹底してこだわるからこそ、来店されたお客様にとって、新しい発見があって楽しめる店になります。店側の気持ちが伝わった時はじめて、お客様はまたこの店に来たいと思ってくれるでしょう」と話す。

現在、大井町の人気店を2店舗展開する中田氏であるが、飲食業界に飛び込んだのは25歳の頃であった。その前までは、父親の経営する鉄工所で勤務していたという。しかし友人の誘いもあり、だんだんと飲食業界に興味を感じて、転職を決意。父親を説得して、フードビジネスへ飛び込んだ。当初、中田氏は和食業態を中心にキャリアを積んでいったが、27歳になった頃、飲食人として飛躍の機会を与えてくれる人物と出会う。それが平林照治(ひらばし・しょうじ)氏である。同氏は、かつて「949(クシキュー)」など飲食店を50店舗ほど展開していた方で、中田氏が出会った当時は、和食居酒屋「JEANS(ジーンズ)」を3店舗ほど運営していたそうだ。「『JEANS』は、私の原点ともいえる店です」と中田氏も話す通り、同店で店作りに関することは、全て経験した。そして、ポテンシャルが開花した中田氏は、瞬く間に店長から本部長へステップアップをしていく。順調に活躍のフィールドを広げていた同氏であったが、人生の転機となる出来事がおこる。30歳になった頃、父親が亡くなったのだ。自ら会社を経営して、生涯を全うした父親。その人生を振り返った時、中田氏は独立という二文字を強く意識したという。

ただ、その道のりは険しいものであった。当時の状況について、同氏は「独立へ向けて準備をしていた頃、大きな事故に遭ってしまいました。私自身も足を怪我してしまい、歩くのがやっとの状況になります。完治まで3年間かかるなど、とても苦しい時期でした。しかし今では、独立のために必要な時間だったと思っています。諦めなかった分だけ、成功へ近づいたのではないでしょうか」と語る。そして苦境をバネにした同氏は、2007年6月21日、一号店として大井町に「H」をオープンさせた。

同店のメニューは、肉や魚をはじめ、揚、煮、焼、サラダ、珍味とバランスの良い構成となっている。なお、中田氏が全て直筆したメニュー表には、写真が載っていない。その理由について、同氏は「料理名から料理を想像してもらって、その裏にある思いを感じてもらいたかったからです」と語る。一品一品ストーリーがある同店のメニューには、大井町で100年以上続く精肉店と取引しているからこそ提供できる「信玄鶏ももたたき」(480円)や「信玄鶏わさ」(480円)、異なる味と食感が楽しめる「からすみといぶりがっこポテトサラダ」(480円)、姉妹店のHの人気メニュー「酒盛ガーリックピザ」(480円)などが並ぶ。

ドリンクについては、「和」を軸にしたラインアップとなっている。日本酒や焼酎はもちろん、「鹿児島県 地ハイボール」(430円)や「岐阜県 地ハイボール」(430円)、「山形 正宗 梅酒」(480円)、「温州 みかん酒」(480円)など、ハイボールや果実酒でも日本を意識したメニューが揃う。ワインも同様で、赤・白・泡と国産の銘柄が用意されている。山梨の「アルガーノ ヴェント(白)」(グラス 450円)や「アルガーノ フォーゴ(赤)」(グラス 450円)をはじめ、ボトルワインも2500円から15000円まで幅広く提供していく。

今後のビジョンについて、中田氏は「飲食経営を通して、もっと大井町が盛り上がっていくように貢献したいですね。街に活気があるからこそ、飲食店は商売ができて、働くスタッフも幸せにできます。一店舗一店舗、お客様の声を聞きながら営業をして、将来的には違う業態で、大井町に5店舗ほど展開をしていきたいです」と話す。「H」がオープンした当時、周辺に飲食店はなかったが、現在は複数の店舗が同じエリアに進出をしている。同氏が、大井町の商圏を広げるキッカケを作ったといっても過言ではない。店名の「8」には、無限という意味とともに、「H」との間で人が行き来する店にしたいという願いも込められている。次のステップに行く準備はできたと話す中田氏。その新たな挑戦が、幕を開けようとしている。

店舗データ

店名 立呑み8(たちのみはち)
住所 東京都品川区東大井5-12-3 ブルーフォレスト 1F

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アクセス JR京浜東北線大井町駅東口から徒歩3分
電話 03-6433-0606
営業時間 17:00~翌1:00
定休日 不定休
坪数客数 17坪・50席
客単価 2500円
運営会社 株式会社H
関連リンク 立呑み8(FB)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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