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入場料1500円を払えばあとは原価で楽しめる!斬新な売り方で話題沸騰の革命的バー「原価BAR」が11月22日、五反田で2号店をオープン

「駅のホームから目立つ場所」を条件に物件を選定。広告費にお金をかけない分、店の存在自体を“広告塔”にして集客を図る
お客はまず、店内入ってすぐそばのレジで入場料1500円を支払う。あとは注文カウンターでその都度注文しながら会計。「原価販売」のため、財布の紐も思わず緩みがちに
テーブル席と壁側に向いたカウンター席とで客席を構成。2階店舗よりゆとりを持たせて客席を配置し、落ち着いた雰囲気にする
ハイテンション代表取締役の横山信夫氏(写真中央)と店長の内田佑樹氏(写真左)が中心となり、店を切りまわす

(取材=印束 義則)


JR五反田駅のホームからひと際目立つ紅白の看板。「すべてのメニューを原価で提供!!」と書かれたその言葉のインパクトに乗降客は目を丸くし、強い関心を覚える。いや、乗降客だけでなく、そこを通過する山手線に乗車した人の誰もが、同様の驚きを抱くに違いない。そしてそのキャッチコピーの上に掲げられた「原価BAR」という店名こそが、業界の常識をくつがえす同店の凄さをストレートなまでに表現している。同店を経営するのはハイテンション(東京都品川区、代表取締役:横山信夫氏)で、2011年3月、JR五反田駅前のビル2階に同店を開業。25坪・40席の店舗に連日満員のお客を集め、満席のためお客を帰してしまう状態が続いていた。そこで駅の反対側に2号店を出そうと物件を探していたところ、運よく1つ上の階の3階が空き、そこに2号店開業の運びとなったのである。
オープンは2011年11月22日。3階の新店舗は2階とほぼ同規模の25坪・38席で、プラススタンディングスペースが4人分ほど。一部メニューの除き、基本的に同じ売り方を採用する。店内入ってすぐのレジには「こちらで入場料1500円をお支払い下さい 店内はすべて原価で商品を提供しております 楽しいひとときをお過ごし下さい」と書かれ、お客はまずここで入場料1500円を支払う。するとあとは飲み食いするすべてのメニューが“原価”価格となる。お客は客席に着いてメニューを決め、注文カウンターでメニューを注文し、その都度会計する。「ポテトチップス」(70g・90円)、「ミックスナッツ」(80g・120円)などの乾き物はその場で、アルコールはドリンクカウンターにてセルフサービスで受け取り、席に着く。調理する料理はできしだいスタッフが客席まで運んでくれる。
原価販売だけにアルコールはバーの概念をくつがえす価格設定で、例えば生ビールは、「クリアアサヒ」(360ml・130円)、「アサヒスーパードライ」(360ml・180円)、「バスペールエール」(340ml・250円)、「ドラフトギネス」(400ml・300円)というお値打ち価格に。50種揃えたカクテルも5種のビールカクテルなどが150円と330円で、残りはすべて90円(ダブル180円)、120円(ダブル240円)、150円(ダブル300円)の価格で提供。カクテルの王様「マティーニ」もわずか120円(ダブル240円)で楽しむことができる。「ベンネヴィス」「ビーフィーター」「スミノフ」「バカルディ」など、ウイスキーやスピリッツの最も安い価格は60円(1shot 30ml)というから驚きだ。ワインは白ワインの「ジネステ・セレクション・シャルドネ」、赤ワインの「ジネステ・セレクション・カベルネ・ソーヴィニヨン」をグラス120円で提供し、ボトルも840円で供する。原価販売だけに、高いワインほど他店とは比べ物にならないほどのお得さで、通常なら2万円以上する白ワインの「エール・ダルジャン」、赤ワインの「シャトー・キルヴァン」も1万500円なのでグッと手に届きやすくなり、そのためせっかくだからと祝いの席などで利用するお客の姿も。
フードも原価販売だからといって高くついては、「気軽に楽しめる店」とのコンセプトから外れてしまう。そこで仕込みに手間をかけ、お手頃価格に抑える。3日かけて仕込んだ「手間暇かけた自家製ビーフジャーキー」(210円)、高級食材を用いた「フォアグラのテリーヌ」(420円)、「自家製ローストビーフ」(300円)、「じっくり煮込んだビーフシチュー」(240円)、「自家製ピクルス」(90円)。さらには3階のみで提供する「ポテトフライ」(120円)、「フィッシュ&チップス」(300円)など計25種揃える。
2階のみの営業時は月商800万円を上げていたが、夏場は満席で1日20~30人ものお客を泣く泣く帰してしまっていた。3階の2号店がオープンした現在はそうした問題点も解消し、2階月商700万円、3階350万円の計1050万円を上げる。3階店舗の認知度の高まりとともに、いずれは3階月商450万円まで伸ばしていきたい意向だ。客層は30歳前後のサラリーマン、OLを中心に、20代前半から60代までと幅広く、男女比は6.5対3.5。客数は1日に、2階平日60人、週末80人、3階平日30人、週末40人が来店。平日は近隣で働く会社員が利用し、逆に土日は評判を聞いた目的客が遠くから訪れる。そのため、2階日曜、3階月曜とそれぞれ定休日をずらし、お客を逃すことなく集客している。
そもそも同店が「原価販売」という売り方を考案したのも、現代のお客の感じるお値打ち感を強く意識してのもの。バーという業態は雰囲気のよい店の“空間”を売る付加価値の高い商売であり、お客も居酒屋のようにふんだんに飲み食いするわけではない。そのため店側としては利益を確保するためには、どうしても高めの価格設定をせざるを得ない。そうした売り方が現代のお客から次第に敬遠されだし、いまという時代にそぐわなくなってきているのも、また事実。そこで同店ではお客1人あたりの客単価を約3000円と想定し、その半分を入場料1500円として徴収することで、粗利1500円を確保。残り1500円が原価という考え方で、一般的な飲食店に置き換えると原価率5割の商売ということになる。通常の商売よりも利益率は落ちるが、「原価販売」というインパクトの大きさで大勢の客数を集め、その分を補っている。
業種による違いはあるものの、飲食店の原価率は一般にフード3割、アルコール5割とも言われており、いまなおこうした昔ながらの数字に倣う店も少なくない。だが、外食慣れした現代のお客にお値打ち感を感じてもらうには、ある意味、思い切った発想の転換が必要になってくる。特にバー業態はカクテルの原価率が2割とも言われており、「原価販売」という手法を取れば、相当なお値打ち感を打ち出すことも可能となる。雰囲気に重点を置きながらアルコールを楽しむバーから、アルコールそのものに重点を置いて楽しむバーへ。1500円を払いさえすればこれまでなかなか気軽に飲めなかった酒も、何の気がねもなく思う存分楽しむことができる。3000円ほどの金額でそこそこ贅沢な気分に浸れる同店のスタイルは、これまで手つかずとなっていた隙間ニーズを見事、掘り起こしたとも言えよう。
ハイテンション代表取締役の横山信夫氏は「100%ビジネス街でないと難しい業態です。例えば、若者の多い渋谷などではちょっと厳しいものがありますね」と同店の業態の特殊性を分析する。その一方で、また違った立地での可能性も模索し、「早い時期に3、4号店を出し、年内に5店舗位はいきたい」と今後の展望を語る。「原価BAR」は屋号とロゴで商標登録取得済みで、今後も直営店での展開を検討。「20店までいけば上場も可能ではないか」とさらなる高みを見据えつつ、飲食店の新たな可能性に果敢にチャレンジしている。

店舗データ

店名 原価BAR
住所 東京都品川区西五反田2-5-8 野津ビル3階

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アクセス JR・地下鉄五反田駅より徒歩1分
電話 03-6417-9909
営業時間 火曜〜土曜17:00〜翌1:00(L.O.フード24:00、アルコール24:30)
日曜・祝日17:00〜24:00(L.O.フード・アルコール23:00)
定休日 月曜
坪数客数 25坪・40席
客単価 3100円
運営会社 ハイテンション
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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