学芸大学に「有縁（うえん）」がオープン。フェアグランドやWAT出身店主による、小料理と純米酒のカウンター9席の酒場

開業前には全国の生産者を巡る旅へ

機が熟し、独立へと舵を切ることにした蝶野氏は、恵比寿や代官山で物件を探していたが、希望に叶うものに出合えなかったという。そんな折、WAT時代の縁で学芸大学の「GAKUDAI COLLECTIV」内で出店することになった。実は蝶野氏自身、学芸大学には長らく住んでおり土地勘はあったが、当初、ここでの開業は考えていなかったという。「駅からもやや離れており、人通りは帰宅途中の人がメイン。不安もありましたが、落ち着いた店にしたいという希望からすればいいのかもしれない、という気持ちもあり決めました」。

蝶野氏が店を通じて実現したいのは、日本酒の中でもとりわけ純米酒の美味しさを知ってもらうこと。開業前には、全国各地、距離にして約3000kmの生産者を訪ねる旅に出てたという。福島から始まり、名古屋、大阪、京都、淡路島、高松、小豆島、広島、島根、鳥取を車で巡り、日本酒蔵を中心に25の生産者を回った。

内装は淡路島を拠点にするヒラマツグミ一級建築事務所が手掛け、「茶室」をイメージした静謐な空間に仕上げた。酒米の稲を連想させる土壁や、日本酒の「米を磨く」から発想を得た研ぎ出しのカウンターなど、コンセプトに呼応する要素が散りばめられている

店舗データ