大手町に「梯子（はしご）」がオープン。ミシュラン和食店出身の料理人と、最先端栄養学の専門家が手がけるのは、分子栄養学に基づいた「美味しくて、食べるだけで健康になれる」理想のメニュー

これからの食事は「美味しくて、体にもいい」が当たり前に

ビジネスマンで賑わう大手町のオフィスビルの一角に誕生した「梯子（はしご）」。漢字の店名ではなく、“ハシゴ”のロゴデザインが染め抜かれた暖簾が洗練された印象だ。ここは、日本初の「ボーンブロス割烹」。ボーンブロスとは肉や魚の骨（bone）と野菜をじっくり煮出して取った出汁（broth）のこと。旨みエキスが凝縮され、さまざまなビタミンやミネラルが溶け出したスープは、現代人が不足しがちな栄養素を吸収できるとして、注目を集めている。

「自分が50歳を過ぎて、改めて“食”の大切さに気付きました」と話すのは、「博多炉端 魚男 FISHMAN」オーナー であり、数々の飲食店プロデュースを手掛けてきたM&CO.代表の森智範氏。これまでありがちだった「体にいい食事＝美味しくない」、「ダイエット食＝ガマンを伴う」などのイメージを覆し、エビデンスに基づいた“ちゃんと美味しい”、“食べれば食べるだけ、勝手に健康になる”新しい和食を提案したいと言う。

「世の中には、オーガニックや発酵食品など“体にいい”といわれている食品がたくさんありますが、実はきちんとした根拠があるものは少ないんです。なんとなく体に良さそうなものを食べて自己満足するのではなく、美味しく食事をしていたら、自然と健康になった―そんな店を作りたいと思いました」。

そのため、かつて星付き和食店で働いていた寺田嗣佐夫氏、最先端栄養学のスペシャリスト、分子栄養学アドバイザーの岩本綾子氏の監修のもと、健康×美容×食事を科学的アプローチで徹底的に分析。その結果、たどり着いたのが先述のボーンブロスを和食の出汁に使う方法だという。
ところで、外食では塩分や糖質、油脂、グルテンなどさまざまなものを摂り過ぎる傾向にあるといわれるが、同店では、可能な限り使用する量を抑える、ミネラルが豊富なものに置き換えるなどの工夫を惜しまない。一方で、何よりも“美味しい”ことを優先しているのだとか。
「例えば、この調味料を使ったら減塩になるしグルテンフリーにもなるけれど、味がイマイチ…という場合は、迷わず美味しさを優先します」。
食事は毎日のことだから、美味しくなければ続かないし、続けなければ意味がない。ここは「美味しくて、健康になれる食事」を提案する旗艦店であり、これからの時代に向けて“梯子”のような存在になりたいと森氏は言う。

森氏曰く、内装のイメージは“高所得者の別荘”。ピエーヌ・ジャンヌレのチェアーや、セルジュ・ムーユの照明など、上質な家具やインテリアを配置。料理を盛り付けるうつわも“本物”を揃えるなど、一つひとつのこだわりからは、健康だけを意識しながら食事をするのではなく、シンプルに「落ち着いた空間で、美味しい食事を楽しんでほしい」という思いが伝わってくる。

オフィスビル内に構える店舗。ランチ時に提供する「梯子の完全栄養定食」も人気を集めている

店内はモダンで落ち着いた雰囲気。堅苦しかったり、“いかにも”な空間にはしたくなかったという

店舗データ