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コラム

再び増え始めた「立ち飲み業態」に注目!

9月に入ってから、売上げが伸び悩んでいる飲食店が目立つ。とくに、チェーンの大箱居酒屋やダイニングが厳しいようだ。それらがターゲットとしてきた若者の飲み会需要、企業の宴会需要などが、確実に減少しているからだ。そうしたなかで、個店、小箱店は強い。再び、立ち飲み業態の店も増えてきた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


実感のないアベノミクス景気や消費税アップの決定と、懐事情が厳しい庶民には、手頃な価格でサクっと呑め、一人でも気軽に立ち寄ることができる立ち飲みは今後ますます強い味方となる。飲食スタイルのカジュアル化の拡大に、気軽な利便性とコミュニケーション性の高さなども加わり、広く多くの客層に受け入れられている。経営サイドにとっても低コスト開発の魅力もあり、新規出店は絶えない。しかし、ミニマムな箱に低価格設定のMDという現実のなかで高収益や安定した集客は案外難しい。「俺のイタリアン、俺のフレンチ」の成功は特殊なケースで、あまたある飲食店のなかで、立ってまで飲むほどの行く〝価値ある店づくり”をするためには相当の実力が問われる。開業しやすさにつられて、ありきたりの立ち飲み屋を始めて失敗するケースは少なくない。客が入る必然性をつくらないで、すぐに椅子を置いたり、価格を下げたりして失敗する。業界初に違いない“立ち飲みとんかつ”が新橋に登場した。新橋駅前ビル1号館1階にオープンした「立ち呑みとんかつ まるかつ」。専門の定食屋でしか味わえない本格とんかつをはじめ、ハムカツ、メンチカツ、アジフライなどの揚げ物が並ぶ。酒を呑みながら職人が揚げるサクッとした揚げ物を手軽に味わえる。経営は新橋や浜松町で、コストパフォーマンスのいいとんかつ定食で人気のとんかつ専門業態「とんかつ まるや」を展開する、まるやジャパンの新業態。とんかつは定食といった固定概念を打ち破る、新しいニーズに応えたニッチ業態といえる。水道橋駅、南口近くの飲食エリア、五叉路の一角にオープンした「立ち呑み海鮮 魚升」。升に盛った刺身をはじめとした鮮度のよい魚介料理に惣菜、酎ハイや本格焼酎、日本酒までが揃う。自ら“大人の和風スタンディング”と謳うだけに、熟練した雰囲気の板前が腕をふるうワンランク上の店。同じエリアで炉端焼き業態と海鮮業態を展開するダイニングデザインの新業態。ワイン業態の立ち飲み店も増えている。下北沢駅近くの半地下にオープンした「コモレビ」はビオにこだわる立ち飲みワインバル。荻窪「ogikuboHinata」の姉妹店。1号店同様の穏やかな空気感とビオワインが相まって、立ち飲みとは思えないリラックス感がある。西荻窪の南、住宅地へと向かう通りにオープンした「A’nimo(アニモ)」。大きなガラス張りのウィンドーとアンティーク風の扉のセンスの良い雰囲気の落ち着いたバル。ワインに加えシェリーも揃う。人気立ち飲みワインバル「三鷹台バル」の姉妹店だ。新しく登場してきた立ち飲み店はこれまでと一味違う。食材のクオリティ、コンテンツの特化性、地域コミュニティ化といった“ニーズの必然性”をしっかりと捉え、リピーター必至の店づくりに成功している。立ち飲み業態はいまや新しいコンテンツではないが、じわじわと定着した業態として再びマーケットに浸透し始めてきたといえよう。 

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