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コラム

和は「ベタコテ」から「シャレカジ」へ!

ハイクオリティカジュアル「ハイカジ」の流れはますますこれから大きな動きになるだろう。では、客単価2,000~3,000円の「ネオ大衆酒場」はどうなるか?この単価でハイクオリティを追求するのは難しい。そこで、洒落た空間とサービス、酒や料理の提供法がポイントとなる。オシャレカジュアル「シャレカジ」の時代である。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


ワインバルやカジュアルビストロのトレンドは定着してきた。懸念されるのは“同質化の罠”で、同じような店があちこちに増え、顧客からみれば「もう、飽きた」と見放される恐れが出てきた。ここからの勝負は、料理のクオリティやキラーコンテンツ、地方活性化などのミッションテーマを持てるかどうか。“なんちゃってバル”は淘汰されるサバイバル戦場と化すかもしれない。とくに、居酒屋グループがワイン業態に手を出し、とんでもないバルをつくってしまうケースもよく見かける。箱と看板を変え、ワインを出したからといって繁盛するほど、いまのマーケットは甘くない。しかし、一方で「スタッフのモチベーションが上がった」というオーナーの声もある。11月27日、三軒茶屋にオープンした瀬戸内エリアの第一次産業を活性化するというミッションを掲げた「瀬戸内バル コラボ」の関喬史さんは、居酒屋業態を4店舗展開。今回は初のバル業態。「スタッフが洋業態をやることに凄い喜びを感じたようで、社内の雰囲気が一変しました。人材採用面にも好影響が出ています」。経営的視点からみれば、こうした“効果”も無視できない。したがって、今後もますますバル業態は増えていくのだろうが、和業態、居酒屋やネオ大衆酒場業態も、これまでの「ベタコテ」路線から「シャレカジ」路線に舵を切り替えれば、バルやビストロと同様なスタイルをつくりあげることができる。「シャレカジ」とは、オシャレでカジュアルであること。空間はもちろん、酒や料理の出し方、サービスも“オシャレさ”にこだわる。では、オシャレさとは何か。それはブランドを着飾ったり、流行を追うこととは違う。自分の個性にあった表現、イキでいなせな着こなし、顧客の心をくすぐるエスプリである。目的は、けっしてハレの演出ではなく、ケ(日常)の充実である。つまり、シャレたカジュアル「シャレカジ」である。顧客ターゲットの点からいえば、女性客を意識した店づくりをすること。あるいは、女性目線で居酒屋や大衆酒場をつくったらどうなるかを考えることである。いま急成長している「串カツ田中」は、同社の田中副社長が女性目線でつくったことが成功の要因の一つ。彼女ならではの、さりげないシンプルなオシャレさが店の隅々まで行き届いている。和バルでいえば、池袋の「立ち飲み Shin-Washoku 到」や田町の「和飲家 七代目音次郎」。「到」は、女子好みの食材を多く使い、和食とイタリアン、フレンチをコラボレーションさせたオリジナルの創作料理。ドリンクは、人気のワインをはじめ、“ライスワイン”と呼ぶ日本酒に、自家製果実酒をベースにした見た目も可愛いおしゃれなオリジナルカクテルで、女子心をがっちりと掴むメニュー。スタッフは会話好きなイケメン店長&副店長をメインに女子スタッフもいるため、会話も弾み、楽しい雰囲気で立ち飲み初心者でも気軽に馴染める。「音次郎」は、ソムリエの資格をもつ上越の料亭「やすね」の若女将が女性目線でつくりあげた業態。地元の食材、発酵文化などの薀蓄をわかりやすく提供している。薀蓄をわかりやすく表現することも「洒落」である。“シャレカジ大衆酒場”のモデルともいえる店「楽椿」を神泉にオープンしたのは楽コーポレーション。空間デザインを手がけたのはスタジオムーンの金子氏。料理は大衆酒場そのものの値段だが、出し方がオシャレ。日本酒の熱燗はオリジナルボトルを使い、ユニークな自家製の酒燗器で温める。瓶ビールは大瓶、中瓶、小瓶もすべて同じ値段で提供。このエスプリが客を喜ばせる。こうしたエスプリ、ユーモア、顧客を喜ばせようとする心遣いなど“洒落っ気”のシェレも必要。たまたま同席した同社の宇野社長は「この瓶ビールの出し方、オシャレでしょう?」とつぶやいていた。「シャレカジ」の波が、ポスト居酒屋、ネオ大衆酒場のキーワードだ。 

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