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9月1日、神楽坂にオープンした「ふしきの」。料理と酒と器でもてなす“和酒会席”が提案する、新たな日本料理の味わい方とは?

カウンターのみのこぢんまりとした店だが、プライベート感があり、ゆっくりと食事が楽しめる。奥に飾られた店名の掛軸は有名書家によるものだとか
酒器に魅せられた中村さんのコレクションが特注棚に美しく並んでいる。ここから好きなものを選び、日本酒を味わうことができる
取材日の椀メニューは鱧と松茸。名残りを惜しみつつ味わう繊細な椀に、多田さんが選ぶ日本酒を合わせる
日本酒のスペシャリストである多田さん。日本酒はメニューが無いので、すべて多田さんのセレクトにお任せするのが基本

(取材=小野 茜)


このところ新しい飲食店のオープンが目立つ神楽坂エリア。古き良き日本の面影を残しつつも、どこかフランスの街並みによく似た場所で、表通りから細い路地に至るまで、飲食店がひしめき合っている。そんな神楽坂の新たなビルの2階に9月1日、日本料理と日本酒、酒器でもてなす「ふしきの」がオープンした。わずかカウンター9席という限られた空間だが、“和酒会席”という新しい日本料理の味わい方を提案する店として誕生した。 料理と酒と器の調和。これらは食事をより味わい深いものにするために、とても重要だが、それをコンセプトにつくられたのが「ふしきの」だ。同店は男性3人によって営まれている。オーナーである中村さんは学生時代に興味を持って以来、趣味であらゆる作家の陶芸作品をコレクションしており、なかでも酒器に特化して造詣も深い。一方、料理を担当するあらまきさんは京都の有名料亭での修行に始まり、出身福岡の実家・和食店での経験も含めた日本料理のプロである。さらに、日本酒を提案する多田さんは、ホテルの日本酒バーで長年、利き酒師として働いていたキャリアの持ち主。3人が、「それぞれの得意分野を生かして何か出来ないか」と考えたことが、この店を立ち上げるきっかけだったという。 料理は毎日市場から仕入れる旬の食材を軸に、丁寧な仕事が施された繊細で上品な料理を、「和酒会席コース」(7500円)もしくは「日替わり酒肴3品セット」(3500円)のどちらかで味わう。その日の仕入れ状況や季節によって、メニュー内容が少しずつ変化するようだ。例えば今の時期であれば、夏の名残と秋の走りが交差する時期ゆえ、鱧や秋刀魚、きのこ類などを使うことが多いという。このひと皿ずつ食す料理と同じように、日本酒もコース仕立てで味わおうというのが、同店の面白い点だ。そのためには、酒器・銘柄・温度・時間という4つの“違い”が鍵となる。 店内にはオーナー中村さんがコレクションした酒器が、特注で作られた棚にずらりと60種以上並べられ、好きな酒器を手に取って2~3種選ぶことが出来る。酒器には大きく3つの特徴があり、口造りの厚さは甘味の違いを、口径の大きさは酸味の違いを、器の高さは苦味の違いを感じさせてくれるため、形の異なる酒器を選ぶ事がポイントのようだ。では、それぞれの料理にどの日本酒を合わせるのか?これは多田さんが一つ一つ、好みなどを聞いた上で提案してくれるためリストなどの用意がない。銘柄、供される温度に関しては、店に委ねることをお薦めしたい。そして、いよいよ日本酒を味わう場面では、“時間”に注意を払いたい。飲み始めから、甘味・酸味・旨味・苦味を舌の上で感じながら余韻として残る最後の香りまで、ゆっくりとその経過を味わい尽くすのが“酒器の楽しみ”で、これらの手ほどきが、メニューとともに各席に添えられているのも嬉しい。 茶室風の内装はいかにも日本的で日本料理の原点を想起させるが、どこかモダンで今に馴染む空間だ。この「ふしきの」が提供しているのは、「美味しいもの」にとどまらず、「美味しく頂く工夫」が凝縮されている。日本人が持ちえる食への好奇心を掻き立たせる、新たな楽しみを提示する同店に、今後の飲食店の発展のヒントが隠されているかもしれない。

店舗データ

店名 ふしきの
住所 東京都新宿区神楽坂4‐3TKビル2階

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アクセス JR・地下鉄 飯田橋駅より徒歩6分
電話 03-3269-4556
営業時間 18:00~23:30
定休日 月曜(月に一度、日・月連休あり)
坪数客数 10坪・9席
客単価 12000円
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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