プレゼンテーター:大山 正

1982年東京都生まれ。成蹊大学卒業後、各種広告関係営業、外食企業のプロモーション・広報を経て、2014年1月、31歳で外食メディア「フードスタジアム」フードスタジアム株式会社 代表取締役就任。飲食店若手経営者の会「外食5G(現JFRX)」初代サポーター企業リーダー。2020年3月、株式会社ミライーツを設立。飲食業界における幅広い人脈、情報を持ち、飲食企業のサポートに従事する一方、独自に記事の取材・執筆・文責を手掛ける。
「金沢おでん」を軸にした新たな飲食スポット
計画地は、金沢市内でも随一の飲食店集積地として知られる片町エリア。施設は既存の商業ビル「金劇パシオンビル」内に整備され、茶屋エリア5店舗、横丁エリア7店舗の計12店舗で構成される。茶屋エリアは13〜20坪の比較的大きな区画で、それぞれ専用トイレを備える。一方、横丁エリアは約5〜7坪の小箱店舗が軒を連ねる昔ながらの横丁をイメージした設計となっている。
施設全体のテーマは「金沢おでん」。茶屋エリアでは各店がおでんを提供しながら、それぞれの個性を打ち出す業態を展開する予定だ。横丁エリアでは業態の制限を設けず、多彩な飲食店が集まることで回遊性を高め、横丁ならではのにぎわいを創出する。

記念講演として6月10日に飲食店向けセミナーを開催。当施設に出店予定で「餃子のかっちゃん」など15ブランド90店舗、今年度売上120億への急成長を遂げる(株)doubleの松井代表(左)、飲食店経営からプロデュース、そして当施設の設計施工を手掛けるスパイスワークスの下遠野代表(右)
背景にあるのは、金沢の食文化をもっと身近に伝えたいという思い

金沢おでんは、車麩や赤巻、梅貝、ふかし、加賀野菜など地域ならではの食材を取り入れ、四季折々の味覚を楽しめるご当地料理として近年全国的な注目を集めている。店ごとに出汁や具材が異なり、おでんだけでなく刺身や郷土料理などを合わせて提供するスタイルも特徴の一つだ。今回のプロジェクトは、そうした金沢おでんを一過性の観光コンテンツではなく、街を代表する食文化としてより広く発信していくことを目的としている。地元客が普段使いできる飲食店街でありながら、観光客にとっては「まずここへ行けば金沢らしい食を体験できる」という入口となる施設を目指している。
北陸最大の繁華街・片町だからこそ実現できる集客力
立地する片町は、金沢を代表する繁華街であり、多くの飲食店やバー、クラブ、ラウンジが集積するエリアだ。2021年版のミシュランガイド北陸にも多数の掲載店があり、金沢駅周辺や近江町市場とは異なる”夜の金沢”を象徴する街として知られている。金沢駅からはバスで約10分、今回の施設は片町バス停に直結するため、天候を気にせずアクセスできる点も大きな魅力となる。

屋内型の横丁であることから、雪や雨の多い北陸の気候にも左右されにくく、年間を通じて安定した集客が期待できる。さらに、茶屋エリアと横丁エリアという異なる性格の空間を一つの施設内に設けることで、ゆっくり食事を楽しみたい利用客と、数軒をはしごしたい利用客の双方を取り込める構成となっている。
初出店にも挑戦しやすい施設づくり
出店募集では、経験豊富な飲食店だけでなく、新たに独立を目指す事業者も視野に入れている。店舗内装のベース部分はビル側が整備し、厨房機器はテナントが用意する方式を採用。横丁エリアは初期費用約380万円から、月額賃料約11万円台から、茶屋エリアでも初期費用約730万円から、月額賃料約28万円台からとし、小規模事業者でも参入しやすい環境を整える。



また、施設全体で販促活動を実施するほか、公式SNSやイベント運営なども予定しており、個店だけでは難しい情報発信を施設全体で支援する体制も構築する。
金沢の新たなランドマークへ
全国各地で横丁業態が誕生している一方、地域を代表する郷土料理をコンセプトに据えた施設はまだ多くない。「金沢おでん街」は単なる飲食店の集合体ではなく、金沢という街の食文化や歴史、地域性を発信する場としての役割も担うことになる。インバウンド需要の回復が進み、地方都市の個性がこれまで以上に求められるなか、「金沢おでん」という地域資源を核に据えたこの施設が、新たな観光スポットとして定着するのか。地元客の日常と観光客の非日常が交差する場所として、その今後の展開に注目したい。
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