お店にお客さんが来ないと不安になります。「何かしなければ」と焦ったとき、多くの飲食店は手軽に始められるSNS集客をすべきなのか?と考え始めます。
インスタグラムに映える料理写真を投稿したり、インフルエンサーを呼んでPR投稿をしてもらったり……今やすっかり定着したこの手法ですが、正直なところ、もうネットの海には情報が溢れすぎています。
確かに一時期はそれが機能しました。しかし、素人が片手間でやるSNS集客が、果たして今も効果を上げられるのでしょうか。
「宴会部長」に飛び込み営業
みんながSNSに向いている今こそ、いっそアナログな施策が効くのではないか、と思うことがあります。
取材を重ねる中で、印象に残った事例を紹介します。恵比寿「amme」など居酒屋を展開する志成NEXTの話です。
開業当初、売上が振るわない時期があったといいます。そのときに取った施策はちょっと意外なもの。店長が近隣のオフィスにスーツを着て乗り込み、受付で「宴会部長はいますか?」と飛び込みで訪ねて行ったそうです。「会社の飲み会でぜひうちを使ってください」と売り込み、団体利用を獲得していったとか。
同社の代表の佐藤氏は、飲食出身ではなく、証券会社でバリバリの営業マンだった人物です。同氏にとって営業は「当たり前に」に過ぎませんでした。しかし飲食業界ではそうではありません。「他にそんなことをする飲食店はない」と面白がってもらえたといいます。
※このエピソードを紹介した記事はこちら(中目黒「kosamme」)
おにぎりを持って、残業中のオフィスへ
もう一つ紹介したい事例があります。渋谷に6月、オープンした焼肉店「良味苑(りょうみえん)」です。
開業したばかりは暇な日もあります。そこでオーナーが考えたのが、店でつくったおにぎりと10%オフ券を手に、21時以降もまだ電気のついている近隣の会社へ出向くことです。「近くで焼肉店をやっている者なのですが、ご挨拶兼ねて、残業中のみなさんにおにぎりを…」と、飛び込み営業をするそうです。
渋谷という場所柄もあってか意外と話を聞いてもらえて、面白がってもらえるのです。なにより深夜まで残業している人たちに、おにぎりが刺さります。そこから実際の来店につながったこともある、といいます。
さらに、この取り組みにスタッフを同行させることで「お客様が来てくれることは当たり前じゃない」を肌で感じさせられることにも意義があるとオーナーは言います。

渋谷マークシティ裏、ビルの地下1階にオープンした「良味苑」
SNS戦国時代に、素人が戦えるか
暇になると焦り、何かしなければと思います。そこで安易に「SNSをやろう」となりがちです。
しかしSNSはすでに戦国時代。それなりの戦略を立ててやらないと効果は得られません。
一方で、自らの足を使って近隣オフィスに飛び込んでいく飲食店はほとんどいないでしょう。だからこそ「面白い」と思ってもらえる。誰もやっていないことには、それだけで価値があります。
お客を「待つ」から、こちらから「出向く」へ
飲食店とは、ひたすらお客の来店を「待つ」ビジネスだと思われがちです。店を開け、お客が来るのをただ待つ。しかしこの2つの事例はそれが思い込みに過ぎないことを教えてくれます。どちらの店もオーナーは異業種出身です。だからこその視点が生きています。
原点に返ること。それがこの時代における最も斬新な集客戦略なのかもしれません。



















