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コラム

「脱・米国型チェーン理論」のススメ

この10年、外食・飲食マーケットを取材してきて、いまほど混迷期はないのではないかと思う。「価格競争から価値競争へのパラダイムシフト」は評価すべきだが、外食産業の成り立ち自体、再考する時期に来ているのではないか。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


外食産業市場は、1997年に29兆円をピークとして下がり続け、いまは24兆円を割れ、さらに縮小するという予測が多い。私も、日々マーケットを取材して感じることは、確実にオーバーストア環境であり、チェーン店は“機能”として完成度の高いブランド以外は依然として、厳しい状況が続くのではないか。そもそも、「外食チェーンストアビジネス」が日本に登場してきたのは、1970年代だ。まだ40年の歴史しかない。そのほとんどは、米国からもたらされたファストフード、ファミリーレストラン業態。人口増加、成長するマスマーケットに対応して、スケールメリットを活かしながら展開していくことを前提として伸びてきた。そのチェーンストア理論に沿って、日本独自の居酒屋チェーンも登場し、これまた米国スタンダードのフランチャイズシステムを導入して急拡大を遂げた。1990年代に入り、グローバルダイニングを代表する「空気感とホスピタリティ」を売りにするニューチェーンレストランが台頭し、2000年代の外食業界は、「旧外食チェーンと新外食チェーン」の戦いになった。しかし、新外食チェーンは証券新興市場の“IPOの罠”に陥り、その最大の魅力だった「オリジナリティ」を失ってしまった。“IPOの罠”とは、個店ごとの斬新なコンセプト、空気感、ヒューマンタッチなホスピタリティサービスが売りだった企業が、証券会社の指導や株価対策として、エンドユーザーが欲していない無理な業態開発や店舗展開をせざるえなくなることである。いわゆる「顧客への裏切り」である。結果として、顧客離れに歯止めがかからず、店は閑散とし、優秀な人材も流出してまうという悪循環に陥ってしまった。“攻め”のスタンスだった新外食チェーンはことごとく低迷し、いまや「身動きが取れない」ところなで逼迫している新興上場企業も少なくない。それにトドメを刺したのは、リーマンショックと3.11東北大震災である。一方、「旧外食チェーン」はどうだろうか。人口が減り、外食のニーズが「マス」から「個のライフスタイル」に移るなかで、外食機能として残るのはFF以外、私には成長のポテンシャルの絵が見えない。しかし、この業態も「中食」や「物販」との境界がますます曖昧になるのではないか。いま、問われることは、「外食チェーンのレゾンデートルとは何か?」ということである。わずか40年の歴史しかない米国型チェーンストア理論、バブル期のあだ花として躓いたが、いまだに総括されていない「ベンチャーリンク型FCビジネスの失敗」。こうした外食業界の歴史を振り返り、今後の40年なり50年を展望したとき、これまでのルールや常識に従うののではなく、マーケットの正直な声に耳を傾け、顧客が真に欲することを白紙になってもう一度真剣に考えてみる必要があるのではないか。ヒントは日本の江戸時代に生まれた外食モデルやフランス、イタリア、スペインなどのヨーロッパモデルである。“脱・米国型”“脱・チェーンストア理論”がいまこそ求められているのではないか。 

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