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コラム

「エー・ピーカンパニー」上場のインパクト

9月25日、東証マザーズに新規上場したエー・ピーカンパニー。公開価格2350円に対し初値3305円を付けた。上場二日目には一時、高値4310円、さらにその後も堅調に推移している。外食企業の久々の上場だが、市場にはこれまでの企業とは違う大きな期待感があるようだ。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


残念ながら、外食ベンチャー企業の上場は、これまでの結果を見る限り、上場高値でいまや公開価格を下回って株価も業績も低迷を余儀なくされている銘柄がほとんどだ。新興市場ブームに乗って上場し、結局「上場がゴールで、その後の成長が期待できない」とさえ揶揄されてきたのが現状である。私もこのコラムで過去に「何のための上場か」という問題提起を何度かおこなってきた。オーナー色を強みにして伸びてきた外食企業が上場してパブリックな存在になることのデメリット、四半期決算というカルチャーは飲食ビジネスにはなじまないこと、そして、店舗拡大と収益至上主義は飲食業本来の「顧客満足」「顧客感動」とは矛盾相反することなどを指摘した。外食企業において、「株主満足」と「顧客満足」を同時に追求することは至難の業なのだ。そうした厳しい環境のなかで、エー・ピーカンパニーの米山久社長はあえて上場に向けて突き進んできた。その彼の成算とは何なのか。上場後、テレビ東京「WBS」で米山氏はこう語っている。「我々は飲食業ではなく、製造業の発想で取り組んでいる。4~5年後には、現在の直営80店舗100億円を400店舗500億円にもっていく自信がある」。つまり既存の外食企業とはミッションもビジネスモデルも異なるということだ。「第六次産業化に貢献する」というミッションの下で、鶏にしろ肉にしろ魚にしろ「生産・販売一体型」モデルの事業を展開していくこと。第一次産業の生産者を活性化し、第二次産業の流通を改革し、そして第三次産業としての外食や小売りビジネスを販売の出口にする。このモデルだからこそ、既存の外食企業とは評価が異なり、企業成長の伸びしろが無限大にあるのだ。上場初日、ある株式評価のニュースに、「エー・ピーカンパニーは“内需関連株”としても買われている」という記載があった。生産者活性化や流通革命は、まさに内需を刺激する役割を果たす。私が米山氏と出会ったのは八王子から東京進出を視野に入れて動き出した2005年だった。それから、「ありきたりじゃない企業を目指す」という夢を掲げ、次々に理想を現実に変えて行った。宮崎に自社養鶏場を構えたあたりからスイッチが入った。夢が理念に変わり、ミッションとビジョンが明確になった。そして本社を東京に移すあたりから、ブランディングのレベルが上がった。米山氏を支える野本氏、里美氏、大久保氏などの人材も固まった。トップから幹部、店舗最前線のアルバイトにいたるまで、同社のミッションは共有されている。「付加価値」が何よりのクオリティであることも浸透している。エー・ピーカンパニーにとって、上場とは「ゴール」ではなく、新たな「スタート」なのだ。

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