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コラム

銀座のカジュアル化と「原点進化」

銀座の「顔」が変わりつつある。「ユニクロ」世界旗艦店のオープンがその象徴だろうか。カジュアル化の波はファッションの分野だけではない。銀座の飲食のポジションもこれから大きく変わるのではないだろうか。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「ユニクロ」が3月16日、銀座に世界最大のグローバル旗艦店を出店、すぐ近くのアップルストアでは同じ日に「新iPad」発売で、それぞれ長い行列が出来ていた。その日に、銀座で話題の飲食店を見て回った。ファッションの世界では、銀座はいまや老舗百貨店や高級ブランドショップを凌いで、いわゆるファストファッションが主役に踊り出てきた。「普段使いできるカジュアルで品質がいいもの」を求めて、若者に限らず老若男女が銀座に押し寄せる。そんな時代になってきたということだ。「プライドの消費」から「本音の消費」へ変わってきたということかも知れない。その変化の波は、当然のように飲食の世界にも波及している。「高級ブランド」を売りにしてきた飲食店はいま、非常に厳しい選択を迫られているのではないか。銀座七丁目の路地裏に最近オープンした「しまだ」。外からは高級割烹か小料理屋にしか見えない。重圧感のある扉を開けると、そこには客でいっぱいの立ち飲みカウンターが現れる。まず、そのギャップに驚く。そしてメニューを見てまたびっくり。小鍋をはじめ十数種類の500円つまみメニューと店主こだわりの割烹系4桁メニューに分かれ、メリハリがきいている。店主は、三ツ星の「麻布 幸村」で修業した島田博司氏。バックには「俺のイタリアン」のバリュークリエイトがついているようだが、「俺のイタリアン」同様、料理人の格、料理の質量と価格との“圧倒的なギャップ”が売りになっている。高級感をキープしながら、これでもかというぐらいにそのギャップでお客さんを驚かせる。もともと高級志向のある銀座でそれをやることの意義は確かに大きい。ビジネス的には、薄利多売、高回転率。そのために立ち飲みという業態を選んだに違いない。銀座三丁目、松屋の裏には国産ワインと豚料理のバル「マ・サール」がオープン。オーナーは「マ・サール」の地下でワイン懐石の「囃hayashi」を営むフードプロデューサーの林マサル氏。北海道のブランド豚「ひこま豚」を1頭買いして、手作りのパテや、ソーセージ、ベーコンなどを提供。国産一升瓶ワインを日本酒のように枡にこぼして出すなど、エスプリもきいている。林さんはもともと北海道SPF豚の専門料理店「いのこ家」を立ち上げた人。「しまだ」の島田さんも、林さんも、自分の原点は変えていない。しかし、いまの銀座が求めるものに照準を合わせ、自分の軸を守りながらカジュアルなスタイルをつくって繁盛店になっている。「原点回帰」ならぬ「原点進化」だ。自分の価値観、軸をブラさないで、業態、メニューを進化させた。「原点回帰」という言葉が頻繁に使われるようになったが、いま求められているのは「原点進化」ではないだろうか。 

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