飲食店・レストランの“トレンド”を配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム」

コラム

「トレンド」は悪なのか?

都心では商業施設オープンラッシュを迎え、街場でも次から次に新しいレストランが産声を上げている。にもかかわらず、業界では「先が見えない」と五里霧中のマーケットの先行きを嘆く声が多い...。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


9月3日、アクシュ・ネット主催で行なわれた、飲食店開業企画に“最大1億円を投資する”というイベント、「伝説への扉」の ファイナリスト発表会に顔を出した。4月にキックオフしたこのイベント、要はWEB版“マネーの虎”なのだが、バックの大手酒販会社の努力もあって全国か ら342企画の応募があり、その中からこの日は最終選考に残った5名の“ライブプレゼン”があったのだ。グランプリを獲得したのは、フードスタジアムの記 事で企画を知って応募したという25歳の富田將人氏。企画内容はヨーロッパの土鍋料理「LaGoo 土鍋食堂」だった。 ファイナリストたちのプレゼンもそれなりに楽しめたが、さらに面白かったのは、J-WAVEのパーソナリティ・ショーンKの司会で行なわれた審査委 員4名によるパネルディスカッション。パネリストは、際コーポレーション代表・中島武氏、マーケッティングコンサルタント・西川りゅうじん氏、ユニマット キャラバン カフェ&レストラン事業本部取締役本部長・金井伸作氏、ダイヤモンドダイニング代表・松村厚久氏。テーマは飲食トレンドやマーケットの先を読むというもの だったが、彼らの話を聞く限り、業界がこの先どうなるのか、それがまったく見えないディスカッションであった。 彼らの議論を総括すると、飲食マーケットは「トレンド」に走りすぎ、客に迎合する店、ディスカウント癖の店が増えた。「オンリーワン」も行き着い た。仕掛け側の企画(釣り針の針)が見えてしまうと客はしらける。このオーバーストア状態のなかで勝ち残るためには「人づくり」しなかい。「客に媚びない 店」「マイクロレストラン」が最後に勝つ。結局、中島氏の「これから100人の経営者をつくる」という“人づくり宣言”で幕を閉じた。議論を聞いていて、 私は業界が本当に先が見えない一種の閉塞状況に陥っていることを実感した。仕掛け人たちが「仕掛けがバレたら終わり」と自ら“白旗”を掲げるマーケットと は何か?「トレンド」を悪として、「結局、人ありき」と結論づけていいのか? トレンドと言えば、「立ち飲み」「スペインバル」、いまや「増えすぎた」業態も、このフードスタジアムでは、3年前の神泉「BUCHI」、新宿3丁 目「日本再生酒場」、恵比寿「立呑」、銀座「バニュルス」、恵比寿「18番」、恵比寿「buri」から取り上げてきた。それが、立ち飲みはいまや各駅の一 等地には必ずあるし、商業施設にも出現するようになった。スペインバルも大手居酒屋チェーン店が新業態として出店攻勢をかけるありさま。ラムラもついにカ レッタ汐留に「VENGA VENGA」を出店。私は、新丸ビルに「再生酒場」が出たとき「立ち飲みは終わった」と思ったが、ラムラがが出たことで「スペインバルも終わった」と感じ た。「終わった」という言葉は刺激が強いが、要は、トレンドのピークアウト現象であり、業態としての定着である。ただ、これから整理淘汰が加速することは 言うまでもない。 それでは、生き残るにはどうしたらいいのか?それは“ダーウィンの法則”しかない。進化するしかない。マーケットには必ず目に見えない隙間がある。 その隙間に切り込んで進化を遂げるしかない。例えば、新宿3丁目のスタンディングワインバー「マルゴー」は隣の再生酒場のブームにあやかって出店したのだ が、立ち飲みにこだわっている間、店は閑散としていた。しかし、椅子を置くことによって、「スタンディング」以上「ビストロ」未満の「カジュアルワイン バー」という隙間業態を新たに創造することができた。いまや、毎日満席である。「業態にこだわるから業態が見えなくなる」「コンセプトに頼りすぎるからコ ンセプトが見えなくなる」。逆に言えば、まだ目に見えていない業態はいくらでもある。それを見つけるには「トレンド」から目を背けてはならない。

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