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コラム

飲食業界世代交代論”について”

安倍内閣の改造人事を見ていると、自民党の世代交代戦争"の裏側が垣間見えるが、飲食業界も最近は20代の成功者が出てきて、にわかに"世代交代論"がかまびすしい。 "

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


私は、飲食業界の「世代論」を論じるとき、グローバルダイニングの長谷川耕造さん、際コーポレーションの中島武さんらを“第1世代”、ゼットンの稲 本健一さん、ダイヤモンドダイニングの松村厚久さんら40代前後世代を“第2世代”と呼んでいる。既存の業界誌紙などは、ファーストフードや居酒屋チェー ンを創って来た創業者たちを“第一世代”と規定しているが、2000年に『ARIgATT』を創刊し、米国型チェーンオペレーション、同一ブランド多店舗 展開型の外食企業とは違う“新世紀型”飲食店クリエーターたちをフューチャーしてきた私にとっては長谷川さんや中島さんは“新外食時代の第一世代”と規定 せざるを得ない。2000年を機に、外食業界ではパラダイム転換が起きたのだから。 昨日、ミュープランニング&オペレーターズの吉本隆彦社長をお会いし、久しぶりにゆっくりと“吉本節”を聞くことができた。吉本さんは、私の世代論 ではまぎれもなく“第一世代”なのだが、ご自分では“第二世代”と位置付ける。やはり米国型のチェーンビジネスこそ外食の極みと考えているからだ。吉本さ んはこう語った。「僕らの“第二世代”は2000年ぐらいからいろんな業態を創ってきてマーケットを変えた。しかし、出せば当たるという時代が過ぎ、展開 しすぎたツケにみんな苦しんで、バタバタ斃れた。そこからスクラップ&ビルドに成功し、生き残ってきた“戦友”はわずかです。飲食ビジネスがそんなに甘く ないということを“第二世代”は身にしみているはず」。ミュープランニング自体も直営店を整理、海外部門も縮小して、「やっとリストラが終わったところで す」と言う。吉本さんはこれから「日本の本物のブランドを海外にもっていき成功させる」という自分自身の夢の実現を“最後の仕事”にしたいと語った。 また、際コーポレーションの中島さんも“生き残り”の一人。スクラップ&ビルドが終わり、最近は自ら「中島塾」を主宰し後進の教育に乗り出したり、 著書『繁盛道場』を出版したり、“1億円投資企画”「伝説への扉」の審査委員を務めたり、いまや“外食伝道師”である。まさか、居酒屋甲子園の大嶋啓介氏 に刺激されたわけはあるまいが、『ARIgATT』創刊の苦労を共にし彼の裏側を見た私にとって、中島さんが“教育者”になるとはとても想像できないので ある。「外食道 食を取ったら 外道みち」ではないが、大嶋さんもそうだが、飲食店経営者が飲食店経営以外の道で成功を目指すというのはどうだろうか。成 功した結果、先導者になるというのが筋ではないか。 話を本題に戻そう。私の言う“第二世代”のゼットン・稲本健一さん、ダイヤモンドダイニング・松村厚久さん、カフェカンパニー・楠本修二郎さんらの 真価が問われるのはこれからだろう。吉本さんの警告にもあるように、今は「出せば当たる」という時代ではない。まして、マーケットはオーバーストア状態、 一等立地の物件家賃は高騰し、「いい立地に出したからといって儲かるとは限らない」時代だ。都心型商業施設でさえ、MDを間違うと客から見放される。最大 公約数ではなく最小公倍数の時代、一店一店の“磁力(その立地に根を張る力)”“引力(客をひきつける力)”が勝負なのだ。稲本さん、松村さん、楠本さん らはそれを“勘”“センス”“DNA”として身につけている。だから、いいと思われる物件が出ても飛び乗らない。それが“第二世代”の真骨頂だ。 さて、“第三世代”はどうか。と、ここまで書いて、具体的人物が浮かばない。20代後半から30代半ばの経営者で、さまざまな人物がいるにはいる。 大嶋啓介さんの「てっぺん」卒業生も面白い。ベンチャーリンクや旧店舗流通ネットのビジネスモデルを進化させ多店舗展開を成功させている起業家たちも30 代が多い。また、「俺こそ次世代リーダー」としてパフォーマンスで群を抜くエムグラントフードサービスの井戸実さんも確かに面白い。郊外型ステーキハウス を展開し、会社設立2期目で年商14億円を見込む。しかし「資産を持たないオフバランス経営」という一見安全な道は未知の道でもある。大嶋さんの「居酒屋 甲子園」も第三回開催を発表した。「甲子園的評価が居酒屋経営評価のモノサシになるのはおかしい」という批判を受けて、今度は、料理項目についての評価を 増やし、店の営業力を総合的に審査したいと、舵を切り替えた。私から言わせれば、その時点で大嶋さんの出番ではない。迷走を続ける“第三世代”はどこへ行 こうとしているのだろうか。

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