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コラム

新宿戦争”にルミネエストが参戦!”

5月30日、新宿ルミネエスト(旧マイシティ)7~8階のレストラン街「SHUN-KAN」が「7&8DINNER(シチハチダイナー)」に変身、4店舗の新店がオープンした。ルミネがどう変えたのか、さっそくリサーチしてきた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


2002年11月に開業した「SHUN-KAN」は私にとって思い出深いレストラン街。25年ぶりの改装とあって、既存の地権者的なテナントに退店 願うために、フロア全体を一つの“街”として開発、総合プロデューサーに店舗デザイン界の大御所、スーパーポテトの杉本貴志氏を起用した。各店舗のデザイ ンは、森田恭通氏ら5人の著名デザイナーが担当。話題性のあるテナントを誘致したいマイシティ側から、当時『アリガット』編集長だった私がテナント説明会 の基調講師に駆り出された。オープンしたときは、“東の丸ビルvs西のマイシティ”と騒がれたほどだった。 20店舗が入ったが、丸ビル並みの高単価客ターゲットの8階には杉本氏が自ら「KITCHIN SHUNJU」を出店、地権者でもあり株主でもあった伊勢丹系の伊勢丹プチモンド(出版社がよく打ち合わせに使っていた)はイタリア料理の“鉄人”、アル ポルトの片岡護氏監修による「ペスケーリア ポルトアマーレ」に衣替え、際コーポレーションが高級中華「碧麗春」で挑戦、ほかにオイスターバー「GUNBO&OYSTER BAR」、江戸前寿司「鮨 竹山」が出た。その後、7階のカジュアルゾーンはまずまずの成績だったが、肝心の8階がかなり厳しかったようだ。 際の中島武社長も自身のブログでこう告白している。「杉本貴志さんの作ったフロアー。とても格好よいのだが、なぜか来客数は少ない。その中でも当社 のチャイニーズ『碧麗春』はよくない。最初、ビル側から『新宿には2万円くらいとれるお客様が沢山いますから高級業態で』というお話。確かに新宿にはその ような方々がいるだろう。しかしここには来ない…」。マイシティ側には大きな危機意識があった。当時の担当者は私に「今回のSHUN-KANは背水の陣な のです。これを失敗したらルミネに吸収されてしまうから」と打ち明けてくれていた。それだけ肩に力が入り過ぎていた。その思い込みが8階の客層をミスリー ドする原因だったのかもしれない。 テナント指導が厳しいといわれるルミネによってマイシティが“落城”、「ルミネエスト」 として生まれ変わったのは2006年4月1日。それ以来、物販の入れ替えなどで売上げは急上昇、二年をかけて徹底したテナント調査や教育を行なってきた結 果、「SHUN-KAN」のシンボルだった「KITCHIN SHUNJU」と「ペスケーリア ポルトアマーレ」が退店することになった。まるで“A級戦犯”扱いだ(私も戦犯の一人だが)。際は生き残ったが、この春「碧麗春」は2分割して使い勝手の いい「新宿トンポ」「ドラゴン飯店」にリニューアル。おそらく「変えなきゃ出て行って」と迫られたに違いない。 そして5月30日に生まれ変わった7&8DINNER、退店した2店舗の跡にポトマックの「CONANA」、エーディーエモーションの「MOKU OLA Dexee Diner」、ジェリーフィッシュの「やきもんやSaute」、そしてストリクトリー・シアトルの 「ラ・メゾンアンソレイユターブル」の4店舗が入ったのだ。地下鉄副都心線の新宿三丁目駅開通で盛り上がる駅東口の“新宿戦争”に参戦するためのミサイル 第一弾だ。これらはいずれも、20代後半~30代の“ルミネ族”の女性にターゲットを絞ったコンセプト。昨日は22時現在でとくにアッタの戸井田氏デザイ ンの「MOKU OLA Dexee Diner」に人気集中、他店も8割の入りだった。 ルミネの強さとは何なのか。「ショップマスター研修」やテナント同士をベンチマークさせ競わせて相互のレベルアップを図る手法や、厳しいテナントス タッフへのCS教育はよく知られ、「ルミネに入れば強くなれる」という神話さえある。逆に言えば「テナントはオーケストラのコンダクターであるルミネの一 奏者」でなければ続かない。昨日歩いたかぎりでは、リニューアル後の際の店舗は微妙、拡大となった「GUNBO&OYSTER BAR」も接客レベルが追いついていない。まだ手がついていない7階はこれから戦々恐々だろう。…でも、ホッとしたのは杉本氏が監修した環境デザインの エッセンスである昔の新宿をモチーフにした壁のデザインがそのまま残されていたこと。鬼のルミネにも仏の心か、優しさを感じた。いや、それとは逆に、世界 的に名がある杉本氏にしてみれば、代表作の一つである「SHUN-KAN」を半端な形で残されるのは、忍び難いことなのかもしれない。

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