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コラム

「恵比寿で店を出す」ということ

最近、「恵比寿がつまらないな」と思っていたら、久々に恵比寿らしい「あいびき」という店に出会った。戦後からあった山下マーケットが「恵比寿横丁」に生まれ変わったし、いま「恵比寿に店を出すこと」について考えてみた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


恵比寿は飲食店にとって一種の“業界デビュー”である。1号店が当れば、次のステップへの道が開けやすい。それだけ業界人が注目するエリアであり、 “飲食スター誕生”の舞台といえる。“スチーム料理と美味しい酒”の「頂」から5年目、昨年秋、西口五差路近くに「あいびき」という“豚肉とソーセージ” の店をオープンしたロックハンズ。“「あいびき」で逢引きしましょう”というメッセージ。小さな店だが、オリジナルな料理とアットホームなもてなしにこだわる恵比寿らしい店が一つ増えた。 東口に戦後焼跡から生まれた「山下マーケット」の跡には、“魚屋系居酒屋”の仕掛け人、ネオサポートの浜倉好宣さんが、超ベタ系専門店系を13店舗集めた「恵比寿横丁」を 5月30日にオープンさせた。昼は一部の店しか空いてないが、夜は横丁らしい空気感が出てきた。「テーマパークになったら恵比寿では難しい」といった意見 もあるが、彼自身がブログで、「物の貸し借りや、出前、挨拶、という昔ながらの近所づきあいが自然になってきました」と書いているように、隣同士のつなが りや人間くさいエピソードがこの横丁から出てくれば成功だろう。 フードゲートの村上宣史さん。村上さんは豆腐料理「空ノ庭」「板蕎麦香り家」「うどん山長」などを手掛けている。決してトレンドを追わず、日本食の 原点であるごはん、蕎麦、うどん、豆腐といった業態をつくってきた。「長く続く店をつくること」が村上さんの基本だが、同時にどこか恵比寿らしいセンスが 光る。細部にこだわったメニューの提供法、一味違う洗練さが漂う。「日常の日本食を非日常的な雰囲気で」という飲食の楽しさの追究を忘れていない。目立た ないが、恵比寿に着実に根付いている。 恵比寿だけで楽しい韓国料理や関西系粉もの料理を6店舗展開するブルームの 平古場伸さん。最近も恵比寿西口交差点の超好立地に「ボムの家」という韓国家庭料理ともつ鍋の店をオープン。昔、“個室ブーム”つくったメッドで「忍庭」 を立ち上げた経験をもち、独立してから年に1店舗ずつ店を増やしてきた。「とにか、いい物件を取ること」に徹している。「ポムの家」の物件も、直接家主の ところに何度も通い、口説き落としたという。成功するために妥協はしない。無駄な宣伝費をかけるよりも目立つ店名をつけ、どこにも負けない大きな看板を架 ける。3店舗目の「だるまさんが焼いちゃった。」はいまやや恵比寿名物である。 恵比寿で勝つには、宣伝はいらない。ディープな客が多いから、「あの店は美味しくて面白い」という評判が立てば、またたくまに店は埋まる。しかし、 それが続くには、しっかりした店づくりとオーナーのこだわりがなくてはならない。オーナー100%のエネルギーをかけて個性を注入しなければならない。 「客がつくまで何もしない」余裕が必要だ。客が来ないからとあれこれ目先の対策をしていると、「やっぱりダメね」と見抜かれる。軸をブラしてはならないの だ。じわじわと常連がつけば勝ちだ。恵比寿で成功している店は、みんなドミナントである。客はオーナーのメッセージをくみ取り、ファンになる。だから、 オーナーの顔が見えないチェーン店は難しい。

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