もちろん、恵比寿らしいオープンもある。ニューヨーク・マンハッタンにジャンジョルジュと組んで「松玄 ニューヨーク」を出し、早くも「New York Times」紙で三つ星を獲得した松下義晴・ピューターズは8月11日、恵比寿東口の「ZEST」裏通りに、初の中華業態となる「MASA’S KITCHEN47」をオープンした。シェフは渋谷「文琳」元料理長の鯰江真仁氏。松下さんが鯰江さんの料理を気に入り、出店を決めた。その「ZEST」の向かい側には、松下さんのゴルフ仲間でもあるハワイアンレストラン「Tunami」グループの山岸大・アドリブが7月8日、6店舗目となる「BANZAI（バンザイ）」をオープン、やはり山岸さんが行きつけの店の料理人歴30年超という植垣秀二氏と組んで出店した。恵比寿にはオーナーシェフ系の店が多いが、こうした人気実力企業オーナーと独立志向の料理人とのコラボレーションのケースが今後増えるかもしれない。 一方、恵比寿ドミナントで伸びている成長企業、ガチガチの外食新興企業の“大箱出店”が話題になっている。西口改札を右側に出たすぐのところに建った東急不動産の「EBISU Q PLAZA」に、「ももたろう」「SACRA」や巨大な水槽のある、｢Luxis」などを展開するジャパンチキンフードサービスが300席の「MEDUSA」（地下1階）を、大阪を拠点とするきちりが 池袋、秋葉原、赤坂に続き東京4店舗目となるカジュアルダイニング「KICHIRI」（6階）を近くオープンする。「MEDUSA」は9月11日オープ ン、そして「KICHIRI」は通算50店舗目、160坪のやはり大箱で9月15日恵比寿デビューを果たす。恵比寿駅前の新築ビルで160坪、300席級 の巨大飲食店が果たして成り立つのだろうか。2001年にオープンした100坪200席以上ある「Aoyuzu」は、すでににっぱんグループから独立、家賃が低いこともあって安定した運営が続いているが、駅前新築で160坪、かなりの家賃負担になるのではないか。かなり思い切ったチャレンジといえよう。 そうかと思えば、西口エリアの「ももたろう」「ぶたや」「buri」などのある飲食通りに、ベタな居酒屋、酒場が相次いでオープン、話題を呼んでいる。この通りには、3月にダイヤモンドダイニング の恵比寿2店舗目の「九州男道」がオープン、西口商店街の「波平」に続くベタ路線で勝負を臨んできた。そこに8月29日、もつ鍋とやきとんの「電撃ホルモン酒場」が登場。もともと、アジアンエイトの「周之家」だった物件。それを今年6月にアジアンエイトを買収した三光マーケティングフーズ が“東方見聞録プロデュース！”と銘打って、“超ベタコテ”の業態で恵比寿初進出してきたのだ。そして、そのちょうど真向かい、フードスコープの「今井屋茶寮」跡に、東口五差路でも80坪の大箱をやっている創コーポレーション の「肴や」がやってくる。9月15日オープンだ。埼玉で創業、池袋から恵比寿に出てきた創コーポレーションはこれで、恵比寿エリアで5店舗だ。その恵比寿進出の中心人物だった松崎陽子氏は、7月1日恵比寿東口の社会教育館近くで和食「わさび」を開けている。 先日、このつぶやきコラムで新橋が“おしゃれ化”していると書いたが、いま恵比寿は逆に“ベタコテ化”しているといっていいだろう。きっかけは、ピューターズの「立呑屋」「プレハブ酒場」だろうが、西口ロータリー近くに「カドヤ」や「えびす酒家」ができ、「だるまさんが焼いちゃった」「ボム」などの平古場伸・ブルームも 元気。さらに今年は東口に「恵比寿横丁」が誕生。恵比寿“ベタコテ化”の波は止まりそうにない。それは、新旧居酒屋チェーンの“飲食の聖地”恵比寿を舞台 とした“新業態競争”の勃発でもある。果たして、きちりや三光マーケティングフーズが、アンテナの高い“恵比寿族”に受け入れられるだろうか？
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