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コラム

街を変えるグローバルダイニング卒業生たちのパワー

このコラムの6月9日付けで「受け継がれる『グローバルダイニングのDNA』」という一文を書いた。昨年、大量に退職したグローバルダイニング卒業生たちの独立の動きについて。その後の彼らの展開を追ってみた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


その精力的な活躍が業界で話題になっている池袋のオリエンタルビストロ「AGALICO(アガリコ)」オーナーの大林芳彰さん。6月1日にオープンした「アガリコ」は20坪弱で月商900万円を売る超繁盛店。彼独特の嗅覚で選んだ立地は、誰もがあまり出たがらないエリア。故にそこで勝てば、瞬く間に“地域一番店”になる。その街、通りのランドマークになり、ブランドになる。大林さんはそんな店を次々に手がけていきたいと考えている。その彼が2号店に選んだ立地は北千住の西口のディープな飲食街。そこにわずか6坪の物件を取得し、「アガリコ1/3」を1号店からちょうど半年後の12月1日にオープンした。店名は1号店の3分の1広さから付けた。周りは昔からのベタな居酒屋などが並ぶ。隣は風俗店だ。「この地域に溶け込んで、常連さんをコツコツ増やしたい」と大林さん。6坪だがロフト席もあり、20席を設けた。店先にはおでん鍋のポトフを用意、テイクアウト需要にも応える。「6坪で300万円売りたい」と言うが、あながち無理な数字ではないかもしれない。地下鉄の高田馬場と早稲田のちょうど中間あたり、ラーメン店のほか、最近では韓国、タイ、ミャンマーなどのアジア系飲食店が急増している早稲田通り。「一風堂」はす向かいに11月11日にオープンした「キッチンV」西早稲田店。ここのオーナーもグローバルダイニング卒業生の浅岡憲さん。「アガリコ」と並んで池袋で話題の「ゴッチス」を青山剛平オーナーと立ち上げた。「ゴッチス」もいまや予約の取れない大繁盛店。その仕上がりぶりを確認しながら、独立の準備に入っていた。西早稲田を選んだのは「住んでるところに近いからです」と浅岡さん。店内はあえてハイカウンター、ハイチェアのバルっぽいつくりをせず、ゆったりと座れる広いカウンター、奥にも落ち着いて食事ができるテーブル席が並ぶ。「男前なグミ飲みワイン酒場」と打ち出しているが、流行に左右されないしっかりした「ザ・キッチン酒場」という印象を受けた。とにかくこの店は空気感がいい。浅岡さんが選んだ仲間もキャラクターが立っている。サービスの柿内勇樹さんは巨体だが、スーパーマリオファッションで客に愛想を振りまく。料理長の西山真一郎さんも楽しそうにフライパンを振る。グローバルダイニングを昨年退職し、4月に「アジアンビストロDai」たまプラーザ店、今年2月に藤が丘店をオープンしたプレジャーカンパニーの望月大輔さん。この9月27日に3店舗目となる新百合ヶ丘店をオープンした。南口を出て5分程歩いた商業施設の脇から少し坂を下った静かな通りに店はある。やはり、どちらかといえば目立たない立地。しかし、オープン後からたちまち人気店となり、常連も増えているという。望月さんの考える店舗開発は、「需要と供給がアンバランスな場所へ出店すること」。たまプラーザや新百合ヶ丘などの高所得者層はレストラン慣れしているが、住民が家の近くで楽しめる店がまだ少ない。その潜在的なニーズに目を付けて成功してきた。大林さん、浅岡さん、望月さんのほか、最近オープンしたグローバルダイニング卒業組には、自由が丘「mikiya’s」(11月18日オープン)の竹本幹也さん、人形町「BALLONDOR(バロンドール)」の2号店「PAPIN(パパン)」を湯島にオープンした渡辺さんと堀部さんらがいる。彼らに共通していることは、「地元密着型立地戦略」に加え、「昔からそこにあったような内装」、そして「そのエリアにはあまりなかったグローバルダイニング仕込みの高度なサービス」である。これから、そのパワーがいろいろな街を変えていくに違いない。 

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