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コラム

「立地戦略」の常識が変わった!

飲食店にとって、出店する立地戦略は非常に重要なテーマだが、「個店志向」「地域密着志向」「ソーシャルメディア化」という三つのマーケットの変化によって、これまでの常識が変わってきた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


これまでの立地戦略の常識は、店前交通量の多い「ターミナル駅前の1階路面」が最高とされてきた。せいぜい専用階段のある地下と2階物件までで、空中階は対象外という飲食企業は多い。土日のきかないビジネス街やローカルエリアの住宅街なども、できれば避けるというセオリーが一般的だった。しかし、最近の繁盛店を見ると、「えっ、こんな立地で、なぜ?」と驚くことが多くなった。事例を上げれば、「ヴィノシティ」は神田でもあまり人が通らない外れにある。池袋の「アガリコ」や「ゴッチス」も信じられないような悪立地で開業しながら、連日満席を続けている。世田谷通り、松涛神社駅と上町駅の真ん中の商店街を抜けた辺鄙な場所からスタートした「串カツ田中」は、都心から離れた住宅街立地で常連客をつかみ、すでに7店舗目を準備中である。「アガリコ」「ゴッチス」同様、グルーバルダイニング出身者が経営する「アジアンビストロ Dai」はたまプラーザ駅近くの2階物件で1号店、藤が丘で2号店、そして9月27日、新百合ヶ丘駅前の商店街を抜けた目立たない立地に3号店を出した。こららのオーナーたちは、「わざわざ競合店の多い駅前や家賃の高い立地に出すことはない。いい店をつくればお客さんは探して来てくれるし、いいお客さんが常連になってくれる確率が高い」と割り切る。結果的には、“ブルーオーシャン戦略”だが、要はリピーター客を呼び込む自信があるから、初期投資や家賃が安くてすむ立地を選び、浮いたコストを食材やスタッフ、そして利益は次の店に投資するのだ。その背景にあるのは「個店志向」「地域密着志向」というマーケットの変化。駅前のチェーン店には行かない、自分の価値感にあう料理やサービスを提供してくれる店を選ぶ、顔や名前を覚えてくれている店で居心地のいい時間を過ごす、“サク飲み”や“〆飲み”ができる使い勝手のいい店に通う、――こうした顧客の個々のニーズやウオンツに応えられるプロフェッショナリズムが必要な時代になったのだ。店と客が「価値のシェア」をし合う時代の到来である。そこで大きな役割を果たすのが、「ソーシャルメディア」である。「私たちはお金がないので、こんな場所できか開業できませんでした。でも食材には特別な思いがあり、料理やサービスにも自信があります。コスパは言うまでもありません」と自店の価値をライブにリアルタイムで伝えられるのが、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアである。店が発信するメッセージに共感した客は、どんな悪立地にあっても一度は訪ねたくなる。一方で、一等地の駅前の1階路面の店でも、チェーン店的なマニュアル性を感じる店には行きたくない。「あのチェーンがやってる店はコンセプトだけで中身がない。いつもガラガラですよね…」というようなネガティブ情報がソーシャルメディアで伝わったりしたら、本当に厳しい。その店は、どんなに安売りをしても、続かない。しかし、「あそこはチェーン店でも、食材にこだわっているし、ホスピタリティが高い」といったポジティブ情報が拡散されれば、チェーン店でも勝っているケースが少なくない。ソーシャルメディア時代には、忌み嫌われている駅前の「空中店舗」でも、コンテンツ力と発信力次第で勝ち組に入ることは可能なのだ。 

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