いま話題の「ワイン業態」、今後さらに注目されるだろう「新世代日本酒業態」、そして一気に盛り上がりそうな「クラフトビール業態」をリードするのが「第四世代」である。彼らの特徴は自らの好きなこと、得意なことを追究し、それを極めた店作りだろう。企業としてのビジネス展開を目指す前に、顧客重視の飲食店運営を優先する。ワイン業態では大ブレイク中の「vinosty」はシャルパンテの経営。オーナー藤森さんを筆頭に3人のソムリエとパティシエの長谷澤あゆみさんが力を合わせたプロ意識の高い仲間が集まった店舗である。“こぼしスパークリングワイン”をはじめとした客を喜ばせ、飽きさせない気配りが大人気。まだ1店舗であるが、酒販免許も取り、vinosty（ワイン好き・ワイン中毒）なファンを増やし、デイリーなワインスタイルを啓蒙するために日々邁進している。新富町にオープンしたばかりの「ぶーみんVINUM（ヴィノム）」。「美味しいものを食べて幸せを分かち合う」を会社のコンセプトにしたシェアハピネスの経営。JRグループで外食部門を手掛けてき代表の白根さんをはじめ、食を愛し、食を尊む仲間が集まり立ち上げた会社である。新富町店舗の原点となる池袋のブタ肉料理専門店「BOOMINN」、ワインと各国のお惣菜が楽しめる神田のワインバル「ばんざい手豆や」を展開している注目飲食グループだ。神保町や市ヶ谷などビジネス街で古民家や古い商家を改装した独特の空気感を放つ飲食店を展開する夢屋社長の小林氏も「第四世代」と言えるだろう。「カギロイ」はいま話題になりつつある発酵食材の雄、味噌料理専門店。「あて」は特製の酒燗器で熱燗を提供する日本酒の店。昭和の氷屋跡を改装した「ビストロアリゴ」は2階の座敷席でワインをがぶ飲みするスタイルを提供。展開スピードは遅いが、一店舗、一店舗しっかりつくり上げてきた。新世代日本酒スタイルで話題の「兼ネル」（西新宿七丁目）の伊東オーナーは、日本酒好きが講じ、飲食業界とはなったく異なる業界から独立したオーナー。ネクストビール世代では虎ノ門「CRAFT BEER MARKET」の田中オーナーはスケルトンから自分の創りたい理想のクラフトビール業態をつくりあげた。グラス500円を切る価格設定は地ビール業界に衝撃を与えている。「第四世代」を考えるとき、グローバルダイニング出身者たちの動向も注目される。青山さんら新鋭2人が池袋に開業した「ワイン食堂 GOCCHI’S（ゴッチス）。またたくまに繁盛店になった。さらに池袋には6月1日、大林さんが「オリエンタルビストロアガリコ」をオープンする。六本木にはやはりグローバルダイニング出身の高瀬さんが東京バル「アジト」を開く。大手企業でノウハウを積み、満を持して独立開業する実力派たちからも「第四世代」は登場してくる。「第四世代」の特徴を3点あげると、まず自分たち独自の「価値観」を軸としている。したがって得意ジャンルによる専門性やこだわり（ストーリー）を持った業態展開となる。「企画」「コンセプト」よりも、「空気感づくり」の落とし込みが上手い。2点目は、「飲食店」が好きで、一店舗、一店舗しっかり創り上げていくことを大事にしている。人に喜んでもらうことに喜びを感じるために、店舗拡大や売り上げ拡大は優先されない。最後は、自分も「客目線」を持ち、コミュニティマインドやホスピタリティを大事にしている。これからの飲食マーケットは、「つくりもの」は排除される。「ものづくり」型の中身のある店づくり、レストランならではの「空気感づくり」をしっかりとしていかなければ生き残れない。第三世代たちがビジネスマネーゲームに走った後、「第四世代」はそうした第一世代（グルーバルダイニングや楽コーポレーションなど）たちがもっていた本来のレストランビジネスのDNAを受け継ぎ、今後、飲食マーケットを活性化していくに違いない。
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