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コラム

「バナキュラー」と飲食トレンド

『日経ビジネス』誌における関橋英作氏の記事「ヒット商品ランキングで見えてきた『2011年のマーケティング』」で指摘された「バナキュラー」というキーワードが注目を集めている。ツイッター上でもたくさんコメントが寄せられ、今年のマーケットを展望するうえで欠かせない視点を提示している。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「バナキュラー(vernaculer)」はもともと建築用語で、「土着的」とか「その土地固有の」という意味。マーケティングでは、「そこに昔からある固有のカルチャーやコンテンツを活かしたコンセプト」とでも表現すべきだろうか。作りモノではない、根のあるストーリーを核とし、真のオリジナリティーを創りだす手法と拡大解釈してみると、まさに現在の飲食マーケットをリードしている“軸トレンド”と言える。高架下の空間や古くからある商店街を再生してネオ横丁を作り続けるプロデューサーの浜倉好宣氏の仕事はまさに「バナキュラー」である。また、地方のその土地で昔から受け継がれてきた郷土料理やB級を含めたご当地グルメも「バナキュラー」だろう。ネオ横丁ブーム、産直・地方活性化トレンド、B-1グランプリのブレークなどは、すべて「バナキュラー現象」として説明がつく。2011年の飲食トレンドを考える場合、このバナキュラー・マーケティングの切り口は非常に重要なポイントに違いない。関橋氏は、「マスより個」「メジャーよりマイナー」「新しいモノより古いモノ」「モノより心」と述べている。脱マスマーケット志向はますます強まるだろうし、見捨てられたり、見過ごされてきたマイナーコンテンツを発掘し、古き訪ねて現代に蘇らせることが肝要になる。日本橋、浜松町で2店舗展開している「ご当地酒場 北海道八雲町」(ファン・ファンクション)は、地方のマイナーコンテンツを具現化した好例だ。本物の民俗芸能や地方の祭り文化などを再現するといったテーマも重要になってこよう。昨年6月にオープンした「銀座阿波おどり」(エイチワイシステム)はまさに、オンリーワンのバナキュラー・マーケティング成功例だろう。これまでのマーケティングと違って、バナキュラーコンテンツを探し出すには、はっきりした目的意識よりも、偶然の出会いや発見を意味する「セレンディピティ(serendipity)」を持つことが重要になる。本来求めようと思っても得られないものが、人のつながりや縁から思いがけずもたらされるということ。そして、それは結果として、自分だけのものではなく、顧客や市場が求めている普遍的なもの、言い換えれば必然の産物だったりする。従って、「バナキュラー」と「セレンディピティ」はつながっているような気がする。これらから導き出された“真のオリジナリティー”とも言うべきコンテンツを作り上げるには、常に「本質とは何か」「本物とは何か」ということを求める探究心が必要だろう。関橋氏は言う。「見捨てられたモノやカテゴリー、見向きもされなくなった場所。ここに、今の日本が気づかなければならないことが隠されているかもしれない。その一つ一つを掘り起こすことで、新しい展開が生まれる」。 

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