三軒茶屋に「タイ酒場 JAM」がオープン！渋谷、恵比寿で人気のタイ料理店「CONROW」の系列店。ベーシックなタイ料理をベースに創作料理やオリジナルドリンクも揃う

ホテルの洋食部門を経てエスニック業態へ。3店舗目は意外性を意識した店舗に

三軒茶屋駅南口からなら徒歩で2、3分。多くの店が並ぶ茶沢通りなどと比べると店も人通りも少ないエリアにあるビル2階にオープンした「タイ酒場 JAM」。代表の野中氏は「今のところ、普段からこの道を通るという方ばかりです」と苦笑しつつも、初めから繁華街を避けていたと言い、「渋谷の物件は地下、恵比寿も2階。認知されるまでに時間がかかるのは初めから承知の上です」と笑顔を見せる。

野中氏は調理師専門学校卒業後、キャピトル東急ホテルの洋食部門において13年にわたり腕を磨いた後、先輩シェフが立ち上げから関わった西麻布「Tetes（テテス）」（現在は閉店）を通して、初めてタイやベトナム料理に触れたという。「当時はまだ、タイやベトナムなどの料理をまとめて“エスニック”と呼んでいた時代でした。先輩に色々な料理を食べさせてもらったら、とても美味しくて。いずれフレンチで独立したいと思ってはいましたが、既に多くのレストランがある中で実力ではかなわない。かといって、このままホテルに勤め続けるのも…と思っていた時期でもあったので、エスニックで独立しようと決めました」。

ホテル退職後は銀座のベトナム料理店「ラ・スコール」（現在は閉店）、「ジム トンプソンズ テーブル タイランド銀座」、先述のシェフが開いた「クロープクルア」を経て2011年に独立し、渋谷・道玄坂に「CONROW」をオープンする。東日本大震災発生の4か月後の開業だったことや地階という立地も影響し、初めの内は苦戦したが、それでも順調に売り上げを伸ばし、2019年には恵比寿店もオープン。こちらも徐々に認知され、ようやく店が軌道に乗った頃に、今度はコロナ禍に見舞われる。スタッフにはずっと「店舗展開したい」と伝え続けてきたが、当時はただ店を継続することに必死だったという。ようやく状況が落ち着きを見せ始めた2022年、三軒茶屋の物件が目に留まり、曰く“衝動買い”のような勢いで契約。以前から三軒茶屋での出店を意識していたこともあるが、次に向かって動き出したい思いが抑えられなかったのだ。

「去年の内に契約し、4月のビル完成までに準備できると思ったのですがあっという間に時間が経ってしまって。ほとんどスタッフがいない状態で始めてしまいました」と野中氏は苦笑するが、既存店スタッフが成長したからこそ3店舗目の出店に踏み出せたのであり、店を任せることでさらなる成長に繋がるのではないかとも語る。

店名も新たにオープンした「タイ酒場 JAM」の内装デザインは、古い友人でもあり、スタジオムーンから独立したgris designの花岡美穂子氏が担当。「特にコンセプトがあったわけではないのですが、『えっ、こんな所でタイ料理が食べられるんだ』と思われるような、意外性を持たせたいと思いました。インテリアも、私の好みを把握した花岡さんが選んでくれたものです」。タイ語で書かれた看板やメニューなど、いわゆる“タイ料理店らしさ”を排除した空間は、一見すると無機質で、カフェのような印象も与える。

三軒茶屋でも飲食店が少ないエリアに構える店舗。夜になれば「タイ酒場 JAM」のネオンが灯る

野中氏の長年の友人でもある花岡氏が手がけた内装デザイン。テーブルの他、キッチンの側にはカウンター席も配した

店舗データ