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コラム

つぶやき的”外食業況診断”

昨日の夜、銀座「函館別館」(エイチワイシステム経営)において、約50名の飲食業オーナーたちが一堂に会した。安田久氏のセミナー後の二次会懇親会である。外食大不況という大波にあるいま、彼らの発言から外食業況"を診断したい。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


この懇親会の趣旨は、「この大不況、激動の時代をどう乗り切るのか、経営者たちが集まって意見交換をしよう!」(安田久氏)というものだった。まず は「飲食業界の虎」改め「カントク」の際コーポレーション・中島武社長が登場。「売上げが悪いのを店のせいにしてはならない。店長が悪いとか、立地がよく ないとか、そんなことを言ってたらだめ。悪いのはボス。本部がちゃんと売れる環境を用意してやらなければならない。立地が悪いと思うなら、立地に合う業態 に変えればいい」と“ボスの責任”を強調。カントク流のドスの効いた掴みに、一堂シーンと聞き入っていた。 さらに「いまは売って売って売りまくる店をつくるしかない。売るためには、美味しさを伝えるデザイン、力を入れないでいいものをつくることが大事。 いかに新しくしないか、いかにフォーマルにしないか、そこがポイント。月坪100万ぐらい売る“噂になる店”をつくりなさい。そのためには“底力とタフ さ”がなければ…。いいですか!売って売って売りまくることです」と檄を飛ばした。際は現在350店舗、売上げ200億円を超える。スクラップ&ビルドも 終わり、業績は順調とのこと。「ウチは銀行が毎年20億円は貸出枠を設定してくれる。僕なんか銀行にほとんど行かない。システムや仕組みばっかり考え、銀 行通いしているような経営者はダメ」とも。ボスは現場に出て、“売れる空気”を常に店に注入することが大事だということだ。やはり“人間力の時代”という ことか。 この不況下にも関わらず積極的な出店を続けているダイヤモンドダイニングの松村厚久氏は余裕の登場。不況こそ味方なのか、事業の話には触れず、安田 久氏との“腐れ縁”について披露。「大きくなっても安田さんだけには逆らえない」と発言し、笑いをとっていた。カフェカンパニーの楠本修二郎氏は12月に シンガポールに出店することを発表。「忘年会はシンガポールでやりましょう!」。いま、業界では、ミュープランニングの吉本隆彦社長を中心に、シンガポー ル、香港への進出を検討する外食企業が増えている。楠本氏もその流れに乗った一人だ。 一方、やはりシンガポール出店を計画していたゼットンの稲本健一氏は、「今回の不況は大きな波だ。バブルを横目で見ても経験していない僕たちがこの 波の上で乗り越えることを考えるよりも、波の下で潜り抜けることが精一杯じゃないか。ウチはすべてのプロジェクトを見直して、止めるべき案件は勇気をもっ てやめて行こうと決めた。だからシンガポール出店もギリギリのところでキャンセルしました」と告白。「波が過ぎるには1年ぐらいかかるのではないか。いま 俺らは自分が得意とすることだけに集中すべきじゃないか。それを伸ばしていけば、この中から次の“マネーの虎”が生まれるよ、きっと!」とハッパをかけ た。 最後にスピーチしたのはAPカンパニーの米山久社長。宮崎に自社養鶏場をつくるなど、独自の“産直ブランド発信スタイル”で急成長している。「僕は 僕のやり方しかできない。稲本さんが、“自分の得意なところで勝負”って言ったけど、僕もそれしかないと思う。みんなそれぞれの道で、それぞれのやり方で やるのがいいのじゃないか」と締めた。司会進行をつとめた“サードG世代代表”のエムグラントフードサービスの井戸実社長がちゃっかり締めの締め発言で自 己PR。彼はロードサイドでステーキ&ハンバーグ店を展開。大手チェーンの退店物件を安く仕入れ、居抜き出店で売上げを伸ばしている。自ら称するように 「ロードサイドのハイエナ」だ。その彼にいまテレビ局から取材が殺到しているという。「夕刊フジ」で“不況に強い会社”として取り上げられたことがきっか けのようだ。この外食大不況で最も注目されるのが、“逆張り”発想で荒波に乗り、スリリングなサーフィン経営をする井戸氏かも知れない。不況に勝つための 正解はない。それぞれの道、それぞれのやり方を見て行くしかない。

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