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コラム

“家賃破壊”が始まった…

「ついに」というか、「やっと」というか、飲食店舗物件賃貸家賃の相場が値崩れを起こし始めた。オフィス賃貸に比べ、閉鎖的な店舗物件流通の世界だけに、ある意味タブー"な発言だが、あえて書く。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


なぜならば、それは飲食プレーヤーにとって“千載一隅のチャンス”だからだ。店舗の家賃はこれまで、あまりにもサプライサイド、つまりディベロッ パーやビルオーナー、不動産仲介業者、リーシングブローカー、サブリース業者の側に主導権があり過ぎた。とくに東京の都心部、中央区、港区、渋谷区では、 坪家賃30,000円以上が当たり前、1階路面物件になると40,000~60,000円という物件も少なくなかった。2003年、2007年の二度のレ ストランバブルを経て、まだ都心に大型商業施設開発余地があったうちはいいが、もはや残された物件は中小型ビルで、ちょうどファンドやリートなどの金融の しくみを導入した利回り目的、転売目的の新興不動産企業の成長ビジネスモデルの道具だった。これが9月の“リーマンショック”を機に、その道具は玩具でし かなかったことが明らかになった。彼らを支えていた外資や投資ファンドはマネー供給の蛇口を止め、はしごを降ろして去っていった。 もう、“砂上の楼閣”は崩壊した。そして“家賃崩壊”“店舗流通ビッグバン”が起きる。その兆候は現れている。大手ディベロッパーでさえ、都心のブ ランドの高い商業施設を坪20,000円前半、ところにより10,000円台でリーシングを始めている。新興不動産企業の新築商業ビルも、坪 35,000~40,000円を目論んで利回りを弾いていたが、その見直しを迫られ、「いくらで貸していいのかわからない」とリーシングスタンスの足元さ え揺らぎ始めた。その結果、「ビルは建てどもテナント決まらず」という、“新築ビル空洞化現象”があちこちで起きている。ただでさえオーバーストアー現象 を引き起こしていた飲食店舗マーケットである。これはタダゴトではすまないだろう。こうした情報は、すでに業界筋の間では半ば常識で、水面下では貸し手と 借り手の腹の探りあいや駆け引きが始まっている。そして、彼らの共通の関心事は「いったい適正相場をどのあたりで着地させるべきか」ということである。 私は常々、店舗家賃については、月坪売上げが30万円上げられる物件なら坪30,000円、20万円なら20,000円が適正ではないかと思う。つ まり、対売上げ家賃比率10%である。あとはテナント側の努力で売上げがそれ以上いけばFLRコストのR(家賃)コストは8%にも7%にもなる。こう考え ると、貸し手側も借り手側も、「この物件はいったい月坪売上げをどのくらいに想定すべきか」という問題設定をすべきであって、貸し手側が一方的に、あるい はビジネス上の事情で家賃を決めるのはおかしいのではないか、と思うのだ。両方がその物件についての価値を共有し、適正利益をシェアし、長くディールを続 けることこそ重要なのではないか。 貸し手側が家賃を下げたくなければ、その物件の付加価値を上げるために、真剣にリーシングコンセプトを企画し、テナント選定の基準をマーケットオリ エンテッドにシフトしなければダメだ。ディベロッパーや不動産仲介会社はもっと「マーケットの声」を聞くべきなのだ。“家賃崩壊”時代の到来は確実。物件 のサプライサイドの大きな転換期がやってきたといえよう。テナント側もアクションを起こすべきだ。適正家賃に戻すために、既存の契約条件の変更やリスケ ジュールを迫ってもいいという環境がやってきたと言うのは、言い過ぎだろうか。

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