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コラム

“ビル一棟借り”が増えている!

金融不況の影響で、都心の商業ビルのテナントがなかなか埋まらないという現象が起きているが、3~4階建ての小型ビルを一棟ごと一括して借り受ける動きが最近にわかに増えている。飲食業界は個店主義の波を迎えているが、個性を強烈に打ち出せるこの出店方法、ブームにさえなりそうだ。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


もちろん、昔から一軒家や2階建てのビルを飲食店として丸ごと借りるケースは多い。しかし、最近は3階建て、4階建てのビルを一括して一業態で借りたり、業態を分けて出店する例が増えているのだ。最近のケースだけでもこれだけある。・「根室食堂」(渋谷、4階建て、立ち飲み)・「焼きもん屋 炉端かば」(五反田、4階建て、炉端居酒屋)・「手前みそ」「三三八」(五反田、3階建て、串焼き、魚串)・「銀蔵」(銀座、4階建て、寿司)・「魚がし日本一」「のぶちゃん」(新橋、3階建て、立ち食い寿司、もつ焼き)そ して、11月18日にオープンしたばかりの「薩摩八郎」(九州料理)は9階建てビルを一括して借りて出店し、業界を唖然とさせている。関西で40店舗展開 するHASSINの東京進出第1号店だが、デザインを若手のカームデザイン・金澤拓也氏に依頼し、この点でも話題を呼んでいる。 こうした“ビル一棟借り”は、「フェイスを作りやすい」「ビルそのものが看板になる」「エリアや通りのランドマークになる」「企業パワーを誇示でき る」などのメリットがある。そして、何よりもディベロッパーや家主、他のテナントを意識しないで、大胆なプレゼンテーションができることが大きい。飲食 マーケットトレンドが1業態多店舗化のチェーン主義から多業態少店舗化のニューチェーン主義、そしてオンリーワン志向の個店主義にシフトしている中で、こ の一棟借りはいわば“究極の個性化”と言える。 これまで“大型店”といえば、大型の商業ビルのワンフロア100坪以上、あるいは50坪以上の2層借りというのが一般的だったが、それが「1階は家 賃が高い」「空中階は集客が難しい」という判断が広がり、さらに他のテナントと看板を共有し、客を奪い合う形の“没個性”型の出店は、もはや魅力を失って きた。一方で、パワーのある大型店志向の外食企業が個店主義の走る一つの方向性として一棟ビルに目をつけたと言えるのではないだろうか。 そして、ここにきての“家賃破壊”による借り手有利への市場環境の変化。“脱・商業ビル”“脱・ディベロッパー”の動きはますます強まるのではない か。今後は、一業態一括借りから、一棟ビルで複数業態を出す「手前みそ」「三三八」のサザビーリーグのようなケースが増えそうだ。横(ヨコ)丁ならぬ“タ テ丁”ブームが来るかもしれない。

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