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コラム

ドリンクで「付加価値」を付ける時代!

ワインブームの到来が火を付けたのだろうか、にわかに「ドリンクメニューを見直そう」「アルコールで差別化しよう」という動きが出てきた。いろいろなサプライズドリンクやユニークな提供法で顧客価値を上げる店が増えている。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


カジュアルワイン業態でグラスいっぱに注ぐ「すりきりワイン」や「こぼれスパークリングワイン」が登場し、これが“がぶ飲みワイン”スタイルの象徴となってブームを牽引した。神田「ヴィノシティ」が仕掛けた「こぼれスパークリングワイン」は瞬く間に広がり、池袋、恵比寿、六本木などで同様の出し方をする店が繁盛店となっている。10月18日、その「ヴィノシティ」2号店としてオープンする「ヴィノシティ マジス」は、多種類のロゼワインとワインカクテルを売りとする。今度の仕掛けはワイン業界の専門メディアなども注目している。また、「国産ワイン」「日本ワイン」を提供する店も増えた。専門店も続々と増えていることは、このコラムでも書いた。六本木でイタリアン業態をリニューアルした「白ワイン酒場 トスカーナ」は、その国産ワインを一升瓶で提供。客の前でグラスにこぼすまで注ぐ。日本酒を出す店ではよく見かけるパフォーマンスだが、それが甲州ワインとなると、客はびっくりする。ハイボールブームに陰りが出ているとわれる。私は「角ハイボール」までは、その仕掛けを評価して飲食店にも勧めていたが、「トリスハイボール」の無差別的な押し込み型導入に懸念を抱いていた。せっかく築いた「角ハイ」の価値観を、マスブランディング先行の「トリスハイ」によって打ち壊したのではないかと思う。マーケットは「価格」ではなく「価値」を求めている。それに逆行したのではないか。案の定、ハイボールブームが停滞し、それがターゲットにしていた「サワー」「酎ハイ」マーケットがここにきてよみがえってきた。とくに、下町のもつ焼き屋や老舗の大衆酒場人気のあおりだろうか、シンプルな「レモンサワー」や「焼ハイ」の魅力が見直されてきたのだ。「ハイボールの次はレモンサワーがブーム」という見方もあるが、たしかにレシピがシンプルゆえに、割り方や提供法に店のこだわりが出る。このこだわりが大事で、サワーブームが戻ってきたからといって、業務用のコンク(濃縮果汁)に頼っていてはならない。コンク前提でサワーや酎ハイメニューをメーカーにつくらせる店も見かけるが、それでは差別化を図れない。繁盛店は、店内で自家製のサワードリンクをつくるとか、地方の名産柑橘にこだわったり、旬の果実や野菜を使ったさまざまな工夫ををしている。私も広島出張の折に、「みよし」という居酒屋で「鎌苅レモンハイ」を飲んで感動。いまだに記憶に残っている。そんなに酸っぱくない愛媛産の「青いレモン」入れた酎ハイだった。話題のAPカンパニー「四十八漁場」では、宮崎県日向の名産「平兵衛酢」を使ったサワーを売りの一つにしている。大手居酒屋チェーンでも、最近はパイナップルの半身を客が専用の絞り器で絞って飲む「生パインサワー」などのサプライズドリンクを出している。これらが人気なのは、やはり「新しい体験」「記憶に残る味」という価値を顧客に提供しているからだろう。手軽だから、原価が安いからという店側の都合だけで、コンクに頼ったサワーや酎ハイを出している店は、灯台下暗しである。改めて、ドリンクメニューを見直してみよう。ノンアルコール系の飲料へのニーズも高まってきている。手間をかけたオリジナルドリンクを持たない店は、大きなチャンスロスをしていることに気づくべきだ。 

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