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コラム

2011年のキーワードは「ネクストQ」

ようやく大手外食専門誌が「価格から価値へ」という特集を組むほど、業界には「価値志向」が高まってきたが、私はあえて宣言したい。「もはや価格でも、価値でもない!」と。2011年のキーワードは、「ネクストQ」である。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


 私は1年前に「価格軸から価値軸への転換を」と業界に向けて宣言した。今年の1月7日付けのこのコラムでも「『バリュー・パフォーマンス』の時代が来る! 」と題して、以下のように書いた。「低価格をコンテンツとした業態の拡大や、価格競合の激化のなかでは、『価格』はすでにキラーコンテンツとはなりにくく、価格を超えた満足感が求められてきている。…いまやCPを競うのは当たり前で、顧客はそれだけでは満足しない。私は昨年から、CPに代わるキーワードとして『バリュー・フォー・マネー(価格に見合う価値)』を提案せよ、と言ってきた。つまり“価格軸”から“価値軸”に発想の転換をせよ、ということだ。そうすれば、『FL管理』というこれまでの飲食経営の係数中心思考を改めなければならない。ときに『原価』を無視して売りとなる希少食材を投入したり、画期的なメニュー開発のために投資をしたりしなければならない。…この外食不況、デフレ悪化を乗り切るには、さらに“価値軸”を極めなければならない。もう『バリュー・フォー・マネー』では生温い。『バリュー・オーバー・マネー(価格を超える価値)』を提案しなければ勝てない時代が来た。言い換えれば、『コスト・パフォーマンス(CP)』から『バリュー・パフォーマンス(VP)』へのパラダイムの転換である。『価値の満足』こそが、これから求められるのである」 こうした「価格軸から価値軸への転換」の必要性については、数々の講演でも説いてきた。しかし、マーケットでの低価格競争は止まず、業者を巻き込んだ値下げ競争合戦は泥沼化している。大手専門誌もそんなマーケットを見かねて「価格から価値へ」という特集を組んだのだろうか。しかし、特集の中で、「原価率を50%に…」といった発言をしている経営者がいる。そういうことではないのだ。肝心なのは、価格でも、価値でもない、これからはより高い「品質」が求められるのだ。原価よりも提供する商品、サービスの品質が大事なのだ。ユニクロの柳井社長は、「ウチは低価格を売りしているのではない。価値ある品質のものを適正価格で売っているのだ」と述べている。品質=クオリティであるが、外食の三要素である「QSC」の「Q」ではない。これから求められるのは、「ネクストQ(Next Quality)」である。それは、業態でも食材でもなく、オペレーションでもない。業態パッケージコンセプトなど、もはや過去のものだ。 では、「ネクストQ」とは何か?そのヒントは、現下のマーケットでの真の勝者に隠されている。圧倒的に強い一品、それを真剣に伝える力。あるいは、小商圏(密域)で勝利している絶対的な店舗力をもつ「密域繁盛店」。たとえば、サードG経営者の中では、スプラウトインベストメント・高橋社長の「いかセンター」。通常の店なら4,000~5,000円はする活イカを3,000円以下で提供する。それは商品力だけでない仕入れや物流面のイノベーションを伴う。バイタリティ・岩田浩社長の「鳥番長」もそうだ。串焼きを常識としていた焼き鳥を、七輪で提供。丸ごと一羽を提供するバリュー・パフォーマンス。アズザクロウフライ・小林社長の「カニカンバー」。鉄板蒸しカニがお通しで出てくる。ハウスワインはグラスではなく700円のボトル。もはや原価率云々という基準では測れない圧倒的なマグネットアイテムで客を引き寄せる。オペレーションはチーム力だが、こうした「ネクストQ」はクリエーティブ力が勝負。クリエーションは、個の力から生まれる。強いピンポイント商品は、組織ではつくれない。2011年は「価値の時代」が当たり前。その中で突き抜けるには、「ネクストQ」がなくてはならない。

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