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特集

フースタ繁盛ゼミ「焼酎新時代の到来!」パネルディスカッションレポート。焼酎杜氏&飲食店オーナーが語る、「焼酎マーケットの未来と我々のミッション!」

飲食店経営者に向けて、よりハイレベルな店・会社・人づくりを目指し、フードスタジアムが毎月開催する「フースタ繁盛ゼミ」。2018年5月のフースタ繁盛ゼミは、「焼酎新時代の到来!」がテーマ。第一部は、宮崎県高鍋町の焼酎蔵、黒木本店の専務取締役・黒木信作氏の基調講演。第二部では、黒木本店を含む焼酎蔵の杜氏や、都内の飲食店経営者などを招き、パネルディスカッションを行った。

≪概要≫
フースタ繁盛ゼミ5月度「焼酎新時代の到来!」
(5月25日フードスタジアム五反田オフィスセミナールームにて開催)

【第一部】基調講演 13:40〜14:30
 「焼酎づくりの進化とこれからの焼酎マーケットの展望」
  講師・黒木本店(宮崎県)の黒木信作専務

【第二部】パネルディスカッション 14:40〜16:10
「焼酎マーケットの未来と我々のミッション!」
  ・司会 金関亜紀氏(フリーライター)
  ・黒木信作氏(黒木本店専務取締役)
  ・渡邊幸一朗杜氏(渡邊酒造場)
  ・金丸潤平杜氏(小玉醸造)
  ・中原章仁氏(佐多宗二商店営業部長)
  ・有馬健晃氏(西酒造取締役工場長)
  ・里見順子氏(エー・ピーカンパニー取締役企画本部長)
  ・井上亮氏(焼酎Dining「だけん」店主)
  ・藤森真氏(シニアソムリエ)

【大試飲交流会】立食パーティー 16:20〜17:30 試飲&交流会


今回は第二部、蔵元&飲食店オーナーによるパネルディスカッションの様子をレポートする。



金関:第二部で司会を務める、焼酎ライターの金関亜紀です。以前の焼酎ブームの際に焼酎にハマり、それ以降、焼酎に関する執筆活動をしています。焼酎を追いかけ全国津々浦々、蔵元の皆さまにストーカーのように付きまとっています(笑)。それでは、本日来ていただいた蔵元の方々を紹介します。



中原:佐多宗二商店の中原章仁です。鹿児島県南九州市の頴娃町(えいちょう)の蔵元で、代表的な商品は、「晴耕雨讀」、「AKAYANE」などがあります。

金関:佐多宗二商店は、なんと海外から蒸留機を仕入れ、焼酎の枠を超えた多様なフレーバーの焼酎、「AKAYANE」シリーズを造っていることで注目を浴びている蔵元です。



黒木:先ほど第一部の基調講演でも登壇した、黒木本店の黒木信作です。「㐂六」、「中々」、「山ねこ」、「百年の孤独」などの焼酎を造っています。



渡邊:宮崎県宮崎市にある渡邊酒造の渡邊幸一朗です。「旭萬年」シリーズが代表銘柄です。私と弟に加え、母とスタッフ1名の計4名で蔵をやっています。仕事の8割くらいは農業で、焼酎のためのお米やお芋を作っています。黒木本店みたいに農業法人というわけではなく、小規模ですが、100年以上受け継いでいる3ヘクタールの畑があり、ここで焼酎の8~9割の原料をまかなっています。毎日、畑か田んぼに行きますし、雨が降ったらやることない。晴れているときは畑で作業。そういう造り方で100年以上続いてきた、ちょっと変わった蔵です。



有馬:鹿児島県日置市にある西酒造の有馬健晃です。

金関:西酒造では、「吉兆宝山」をはじめとする「宝山」シリーズで有名ですね。今日来ていただいた蔵元の中では比較的、量も造れる蔵です。独自の研究室を持っており、お芋の品種違い、酵母の違いによる酒質の違いなどのデータを蓄積しています。社員総出で農業にも取り組んでおり、鹿児島県産のお芋とお米を使って、地元に根差した焼酎を造るのがコンセプト。米の精米も蔵元内で行っています。



金丸:宮崎県日南市の小玉醸造、金丸潤平です。もともと宮崎市内で日本酒、焼酎、醤油を造る蔵をしていましたが、父の代で他の蔵と合併しました。その後、2000年に小玉醸造を父と引き継ぎ運営しています。引き継いでからはまだ18年しか経っていない比較的新しい蔵です。ここで、「杜氏潤平」という、私の名前が付いた焼酎を造っています。「潤平が造ったんだから潤平という名前にしたら」という、父の軽いノリで決めたものですが、思いをこめて造っています。

金関:とにかく手造りにこだわり、麹作りを大切にしている蔵。でも、金丸さん、実は麹アレルギーで……アレルギーがひどいときほど、いい焼酎ができるということです(笑)。

以上が蔵元の皆さん。そして、ここからは焼酎にまつわる飲食店の関係者の紹介です。まずは、八丁堀の「焼酎Diningだけん」店主の井上さん。



井上:「焼酎Diningだけん」の井上亮です。17席ほどの小さな店ですが、焼酎に特化して営業しています。よろしくお願いします。



藤森:ワイン酒場「VINOSITY(ヴィノシティ)」を展開する藤森真です。今はワインの店が中心ですが、18年前、ソムリエの田崎真也さんが運営する焼酎バーの初代店長をしていました。焼酎蔵もたくさん回りました。今日来ているのは飲食店オーナーが多いかと思いますが、皆さんと同じ目線で「こんなふうに焼酎売っていた」という話をできればと思います。



里見:「塚田農場」を展開する、エー・ピーカンパニーの里見順子です。「塚田農場」の立ち上げのときから焼酎に関わってきました。生産者の顔の見える、できれば宮崎の小さな蔵の焼酎を使いたいと、いまでや社長の小倉秀一さんと一緒にメニューを作ってきました。焼酎の蔵元さんと長く付き合いをする中で、焼酎ブームが終わった苦しい時期も、蔵元さんと一緒に経験してきました。今日は「売り手としての伴奏者」として意見を言わせていただきたいと思います。

かつての焼酎ブーム、そして焼酎の今とは?

金関:それではパネルディスカッションに移りましょう。まずは、「本格焼酎の現状について」。日本酒人気の今、かつての焼酎ブームの際にそれぞれの蔵元が感じたことを語ってください。この中では有馬さんが、焼酎歴が一番長いそうですね? では有馬さんから。いつから焼酎造りに携わっていましたか?



有馬:私が蔵に入ったのが1995年、23歳の時でした。その当時、「焼酎はお湯割りで飲むもの」と言われていた。しかし、暑い夏にお湯割りは好まれない。そこで、ロックでもおいしい焼酎を造りたいと思った。ロックなら柑橘系の香りが合うだろう、というコンセプトで生まれたのが「富乃宝山」でした。とまあ、自社製品について語りだしたらキリがないので、この辺で割愛しますが……(笑)

いわゆる焼酎ブームというのは2003年ごろから始まったと言われていますが、それよりも前から焼酎人気というのはすでに水面下で始まっていたように感じていました。それが一気に顕在化したのが2003~2004年。一斉にメディアが「焼酎ブーム」と取り上げました。それにともない、焼酎消費量も激増し、絶頂の頃の焼酎は甲類含め、4千億円から8千億円ほどになりました。焼酎ブームによって、焼酎を飲む人が増えたことはとても有難かった。

そして2007、2008年ごろになると、大手の焼酎メーカーが台頭してきてパック・値引き等の焼酎が出回るようになり、同時に「安ければよい」という風潮になってきた。飲み手が安いものを選ぶのは当然なのかもしれませんが、焼酎には、思いを持って手造りで生産している蔵もある。そういったものが見過ごされていたのは残念でした。日本酒でも、大量生産をするパック酒があれば、思いを込めた手造りの日本酒もあるという点では同じ。ですが、日本酒の場合は、流通がその線引きをはっきりさせ、良いモノは別路線のものとして売り出していたので、小規模な蔵の思いが大手メーカーのパック酒と混同されて食いつぶされることはなかった。焼酎はその点が弱く、流通の段階での区別が曖昧だった。思いを持って造っているところを流通や飲み手に伝えきれなかったのが悔やまれますね。

金関:なるほど。飲食店の皆さんはどう感じていたのでしょうか?

藤森:先ほどの有馬さんのお話のように、ブームによって焼酎の飲み方が変わったのは大きかった。田崎さんが「焼酎をロックで」と言い出したのは、当時びっくりしました。ワインのような、グラスで、氷と一緒に焼酎を飲む。ボルドーワインのグラスのような形で、足なしのグラス。氷を入れて香りを楽しませるのという飲み方が一気に広がりました。そのころから、「これからは焼酎を追っていこう」という酒屋が出現し始めて、これから焼酎のブームが来るのだろうと思いました。私が店長をしていた焼酎バーでは、焼酎の蔵元から直接、もしくは地元・鹿児島、宮崎の酒屋から仕入れていたので、利益率も良く、好調でした。ただ、「焼酎をロックで」だけで終わってしまい、さらなる新しい焼酎の飲み方が続かなかったのが、ブームの終わりに繋がってしまったのかなと思いました。その後、私はワイン業界の方へ行って、焼酎は横から見ていた恰好になりましたけど、やはり焼酎は売り方をもっと考えるべきだったのではと思います。焼酎を拡大させるには、より多様な提案が必要でしたね。焼酎ブームは、人々に焼酎を噛みつかせるだけで、定着まではさせられなかった。



金丸:私は現在の焼酎蔵に入る前、日本酒蔵で修業していたのですが、焼酎造りを始めたときは、まさに焼酎ブームが始まったころ。当時はまだ宮崎の焼酎は売れておらず、鹿児島の焼酎が市場を席捲中。2年ほど経った後に、宮崎の焼酎が伸びてきました。試飲会などに行くと、そのころにはすでにロックで飲ませるというのは定着していました。とくに関東地方はロック一辺倒。一方で宮崎など、地元はお湯割りがメイン。地元では焼酎を食中酒として飲んでいくことを定着させようとしていて、安易にロックするなと言っていましたね。ロックだとどうしても度数が高いままなので、食中に飲むにはお酒が勝ってしまい向きませんから。

あとは、当時、焼酎の多様性も謳っていました。「焼酎はどんなシーン、料理にも合う」ということ。ですが、そのような広い言い方をすると、「では一体、焼酎はどのように飲むのがベストなの?」と言われてしまいました。「何にでも合う」だと、よくわからなくなる。日本酒のような醸造酒では、その酒にぴったり合うというものがある。この酒ならこれに合う、と言えるんです。でも、焼酎は蒸留酒。また、焼酎はアルコール度数が25度もあり、ストレートで飲むのは難しい。それを「なぜベストの状態で出せない?」と言われました。つまり、「なぜ、わざわざお湯割りや水割りにして飲むの?」と。ウイスキーだってそう。なぜ、完成した製品に加水して飲むのか? 自分でもよくわからなくなって、何が正解なのか?と、一時期は悩みましたね。だったら、「この料理にはこの焼酎!」という、飲み方の提案ができるようになる必要があるのではないかと、焼酎ブームを通して感じました。

金関:ありがとうございます。では、そうして焼酎ブームを経験し、いま現在、蔵として取り組んでいることを教えてください。

中原:先ほど冒頭で金関さんから紹介のあった通り、うちの蔵では海外から蒸留機を取り寄せるなど、焼酎造りのなかでもとくにハードの方にこだわっています。これまでの焼酎造りでずっと守っていた製法を崩してみたり、時間を変えたり、なんてことも試しています。そうするなかで、焼酎造りは料理と同じだと気づきました。料理でも、使う鍋のかたち、材質、煮込む時間などで、料理の仕上がりが違う。蒸留も一緒。やはり私も、焼酎も食中酒でありたいという思いがあります。食事ありきのお酒を造りたい。焼酎の主な成分は水とアルコール。香りの部分も実は1%以内。発酵、原料の違いで多様性が生まれる、それが焼酎なんです。当社では、山椒、ショウガ、ユズ、ヨモギなどの香りの蒸留酒を造っています。酒税法上はスピリッツになりますが。山椒はタレ系の焼肉と相性がいいですし、魚料理ならショウガを。こういった具合に、料理に合わせて焼酎を選べるよう提案していきたいと思っています。

黒木:私は造っている土地を大切にしたいので、有機農法に力を入れています。東京は、水の塩素のにおいがきついですね。東京の水で割って飲むと、これはうちの焼酎ではないのでは? と思っちゃうこともあります。やはり宮崎の土地で造るからこそうちの味が出せる。これから100年、200年この土地で焼酎を造っていくことを考える。そのために有機農法で土を活性化させたいと思っています。



渡邊:うちの蔵でも、5年前から自然発酵に取り組んでいます。身の回りにあるその土地の原料で、自然界に馴染む方法で、気候に合わせた造り方を大切にしています。

ここ数年で、冷却装置で冷やすことを前提にしてもろみを造ることはやめました。蔵の場所というのは基本的に動かせませんから、その土地の気候にはあらがえないという考えで、機械冷却でコントロールせずに、その場所特有の微生物と気候を生かした焼酎造りをしています。お芋に付いた畑の土も、完全には取り除かず、もろみに入れて、活性化させます。

3年前から自然農法、無肥料無農薬にも取り組んでいます。南九州は農業にとっての3大栄養素、リン、窒素、カリウムが多いんです。これらは自然界から来る、自然の恵み。窒素は雷の電流で発生するので、雷多い年は豊作になります。リンは黄砂に含まれます。黄砂というと中国から流れ込んでくる害のあるものというイメージですが、実は農作物にとっては良いもの。カリウムは桜島などの火山灰に含まれます。このように南九州には農作物にとっての栄養素が豊富で、理論上は肥料が必要ない。下手に肥料を入れると雑草が増えて管理が大変になります。肥料を使わない自然農法をやろうと、実際に自然農法をしている農家さんを回りました、雑草も、生えてきたらしっかり伸ばしてたねが付く前に刈る。そうすると、次第に草が生えなくなるということを教えてもらいました。同じようにして、3年かけてうちの畑も雑草が生えないよう手入れをして、ようやく来年からベストの状態になります。今後、そうして作物を栽培し、焼酎を造っていきたいというのが力を入れている取り組みです。

有馬:うちの蔵では、1~7月は屋根のない蔵(畑)で芋焼酎の仕込みをしています。この時期は、蔵総出で、お芋とお米を育てています。私が焼酎造りを始めた1995年ごろは、さつまいもの表記に品種名はなく、白い芋も赤い芋もすべて“さつまいも”の表記だった。今は品種名を表記する蔵が増えましたけど。例えば、うちの製品のひとつ「宝山 蒸撰綾紫(じょうせんあやむらさき)」は、「あやむらさき」という品種の芋で焼酎を造ったら絶対おもしろいよね、という話から誕生した商品です。このように、お芋の品種にまでこだわることが、今、とくに力を入れている取り組み。求めるお芋を中途半端な時期に収穫すると、そのお芋のポテンシャルが出せないということもあるので、収穫時期も適切な時期を見極めています。お芋の品種の違いはワインのブドウの違いに近い。芋焼酎にこんな表現の幅ができるのもお芋の品種の違いがあります。求める味わいを表現できるお芋を作っています。

金丸:日本酒だと、麹は何を使っているか? なども気にされます。焼酎は、芋なのか麦なのか米なのかは気にするけど、麹菌や酵母までは、飲む人にはあまり注目されません。もちろん、芋の品種もこだわっていますが、うちでは酵母にもこだわっています。フローラルの香りがする酵母や、熟成かけると甘くなる酵母もあるんです。焼酎のレシピというのは、昔から受け継がれてきた基礎のレシピから、そこまで大きく変えないのが普通ですが、最近はそういうところに疑問を持って、試行錯誤するようにしています。焼酎は、日本酒と比べて1/3の発酵日数で終わりますが、日本酒と同じくらいに発酵期間を伸ばしたら、明らかに香りが違っていたりもします。芋だけでなく、麹、酵母、もろみなど、あらゆる要素をひとつずつ検証しています。

金関:先ほどの話のなかで、焼酎を食中酒として楽しむという話が出てきましたね。食事とのマッチングについて、飲食店の方のご意見はありますか?

井上:やはり東京ではロックで飲む人多い。ただ、食中酒としてはアルコール度数が高いため、料理に対してお酒が勝ってしまう。度数を落とすことが食事に合わせるカギかと思っています。焼酎は魚より肉の方が、相性がいいと言われています。刺身との相性は清酒に勝てないですが、肉の脂は焼酎で流す方がいいですね。

蔵元直伝!おいしい焼酎の飲み方

金関:では実際に各蔵元の焼酎の、食中酒としてのおいしい飲み方を教えてください。



金丸:この「杜氏潤平」はソーダ割りがおすすめですね。度数が25度あるので、焼酎3、ソーダ7の割合で割ると、アルコール度数は7,5度になり、ちょうどいい。この配合が一番おいしい飲み方です。



有馬:「富乃宝山」は、先ほど話したように“ロックでおいしく飲める焼酎”というコンセプトで造られた品。一方、寒い時期はお湯割りも飲みたくなるよね、ということで造ったのが「吉兆宝山」。季節や好みにより、ロックとお湯割り、それぞれが銘柄で楽しめるよう2つ併せて1つの提案なんです。

今、アルコールの市場でもっとも多く飲まれているのは、ハイボール、サワー。とくに若い人はそれらを好んで飲んでいる。そんな状況で、ロックの焼酎を定着させていくのはなかなか難しいのかなと。そういった意味では、炭酸割りは大事。「吉兆宝山」は炭酸NGですが、「富乃宝山」の炭酸割りはいいですね。焼酎3、ソーダ7のアルコール7.5%くらいがちょうどいい。若い人には、ソーダ割りでまず焼酎に親しんでもらって、そこからロックやお湯割りといった楽しみ方を知ってほしいです。



渡邊:この「黒麹旭萬年」、「ROCK湯(ロック ユ)」というおすすめの飲み方を紹介します。簡単に言うと、ロックのお湯割り。「ROKC YOU」と掛けたダジャレじゃないですよ!(笑)

焼酎って香気成分の塊で、ほとんどがアルコールと水、0.02%だけ油と香り成分が入っていて、糖質もありません。だけど温度の上下や、加水によって甘みや香りがガラッと変わる。お湯で割る方が、香りや甘みが強くなります。一方、ロックは引き締まって飲みやすくなりますが、香りは感じづらくなることが多い。この「ROCK湯」の作り方は、焼酎の液面から飛び出すくらいたっぷりと氷を入れ、焼酎を注ぎます。その後、氷にめがけて、少しずつゆっくりとお湯を、2,3回に分けて注ぎます。焼酎に直接お湯を注いでしまうと、アルコールが気化してしまい、ツーンとしたアルコール臭がしてしまいます。ゆっくりとお湯が入ることで、水割りと同じような状態ですが、焼酎の油分じわじわ溶け出し、通常の水割りよりも香りが引き立ちます。日本酒の燗冷ましのようなものですね。氷とお湯を用意しなくてはならないのでひと手間かかりますが、「ROCK湯」、ぜひ覚えて帰ってほしいです。



黒木:「ROCK 湯」、名前からしてキャッチーでいいですね(笑)。私の場合、飲み方はシチュエーションで変えるべきと思っています。「この焼酎はこう飲んでください」というコピーがあるとわかりやすいのは承知ですが、私の考えとしては、ある程度いい焼酎ができれば、飲み方によってそのよさが大幅に増減することはないと思います。それぞれの飲食店で、この料理にはこの飲み方、とシチュエーションに応じて、こちらから提案するのではなく、自身で選んでもらうのが一番楽しいのではないでしょうか。



中原:当社の「AKAYANE」の場合はスピリッツなのでちょっと違うのかもしれませんが……、「AKAYANE」シリーズのひとつ、ジェニパーベリーの香りがする「AKAYANE CRAFT GIN(ジュニパーベリーオンリー)」は、芋焼酎ベースのジンです。ジンですから、ジントニックにするのがおすすめ。酒1にトニック9が定石ですが、そうするとトニックの甘みがやや強い。そこで、ソーダとトニックを合わせる「ソニック」がいいですね。ソーダ6、トニック1、酒3で合わせ、そこにブラックペッパーを少々、カットレモン投入で最高に肉に合いますよ。ショウガフレーバーの「AKAYANE 生姜 スピリッツ」も炭酸割りがおすすめ。ショウガ同士、ジンジャーエールで割るのもいい。ショウガの香りが魚料理にぴったりです。

金関:ありがとうございます。すぐにお店で試したくなる提案ばかりでしたね。

世界から見た焼酎

金関:次の質問ですが、今後、焼酎を日本だけならず世界に対してにどのように発信したらいいか、アイディアを教えてください。ここはぜひ、世界進出もしているエー・ピーカンパニーの里見さんに。



里見:3年前に、宮崎の蔵元がイタリアに焼酎を輸出することになり、一緒に現地視察に行ってきました。彼らの焼酎を、イタリア人がどう評価しているか、イタリアのウイスキーの展示会場でさまざまな反応を見ました。イタリアでは、「透明だ」、「度数が低すぎる」、「芋という原料になじみがない」などの意見があり、海外で焼酎を広げるのは難しいのか、と最初は思いました。しかし、何年か続けていると、海外ではなにか強い個性を打ち出せば受け入れられることができるのではないか、と感じるようになりました。

今日、蔵元の皆さんは「香りを表現する」と強調していましたが、日本の香りをどう表現するかが、海外に焼酎をアピールのカギになるのではないかと思います。

こと日本市場になったときに、現在は、特定の超大手の焼酎だけが売れるという時代になっていると思います。そんななかで飲食店がすることは、自らが気に入って「売りたい」と思った焼酎を、どう楽しく、そのよさを伝えていくのかが使命だと思います。

当社エー・ピーカンパニーでは、今年の4月、新宿にある宮崎県の物産館「新宿みやざき館 KONNE(コンネ)」2階に「くわんね」という宮崎県の郷土料理の店をオープンしました。宮崎ということで、焼酎を求めてくるお客さまも多い。そこで、焼酎の新しい飲み方を提案しています。もちろん、ベーシックなロックやお湯割りもあるが、宮崎の香りを表現するということで、宮崎県に生育される杉の飫肥杉(おびすぎ)の樽に、黒木本店の焼酎「百年の孤独」を入れて香り付けして、東京のマーケットニーズに合わせてソーダ割りで香りを強調して提供しています。宮崎の香りを感じるお店にしたい! という思いから生まれた提供方法です。

このほか、同店では甲類を一切使わずにサワーもすべて本格焼酎をベースにしています。店でのアルコールでは、焼酎の売上が一番多い。宮崎のクラフトビールも置いていますが、最初の1杯から焼酎を注文させる世界観を作っています。

焼酎ファンを増やすために

金関:では蔵元の皆さんに最後の質問です。焼酎の消費者をより増やすため、蔵元から飲食店などの売り手に向けてやってほしいことを一言でお願いします。

金丸:第3次焼酎ブームと言われた2000年。そのころに生まれた子どもが、ようやく酒を飲めるようになってきました。焼酎は、飲み方を知らないだけという人が多いと思います。カクテルやサワーもいいけど、「焼酎もどう?」という一言を添えることで、飲み手が増えるのではないでしょうか。

有馬:若い人にも焼酎に親しんでもらう方法は大切ですね。ハイボールのように、炭酸割りがいいと思い、富乃宝山ハイボールというのは提案しています。ぜひやってほしいです。私たちはこれからも変わらず焼酎とともに生きていくので、もっと私たちのことを知ってほしい。鹿児島にも遊びに来てください。

渡邊:皆さんと一緒に焼酎の第4の波、フォースウェーブを作りたい。我々だけではなく、飲食店の皆さんと一緒に考えたい。まずは焼酎を本当に好きになってもらいたい。売り手に蔵を見に来てほしいです。どういう人がどう造っているか。ワインは、品種や年代について、みんな語ってくれる。蒸留酒、焼酎だってそれできると思います。こういう原料で、こういう気候で造っている、と。実際にその姿を見たか見てないかでは違う。この料理にはどう合わせればいい? なんてことも相談してほしいですね。蔵元と飲食店、一緒になって焼酎に取り組めば、お互いもっといい商売できるのではないでしょうか。



黒木:渡邊さんのおっしゃるとおり、まずは売り手に焼酎を好きになってもらうことが大事。それぞれの蔵を見に来てほしい。例えばコーヒーの場合、子どもはいきなりブラックコーヒーを飲まないですよね。まずはコーヒー牛乳から入る。そこからコーヒーのおいしさに気づいて、次第にブラックコーヒーを飲むようになる。味覚は経験値に基づいて構築されていく。焼酎もコーヒーと同じ嗜好品なので、いきなりロックの焼酎を飲んで苦手意識を持たれない工夫が必要。ソーダ割りにしたり、カットレモンを加えたり。そうして、ゆくゆくはロックやお湯割りの楽しみ方も知ってもらえれば。おいしいという経験を積んでいって、焼酎の魅力に気付いてほしいですね。

中原:言おうとしたこと、皆さんに全部言われました……(笑)。焼酎は食中酒として、食事と一緒に合わせたおいしさを伝えたい。当社の「AKAYANE」も、飲んだあとに「芋焼酎だったんだ? おもしろい!」という驚きを与えたい。焼酎っておもしろい、割り材も使ってもらって、若い、新しい層に焼酎の魅力を知ってもらいたい。流行にも柔軟に対応して、飲んでもらえるような酒を造っていきたいですね。

金関:では、飲食店の皆さんはどのようにして焼酎の啓蒙に取り組んでいきたいと考えているか、教えてください。

井上:当店は焼酎専門店だけあり、焼酎をめがけてくるお客さまは多い。ですが、実際に焼酎をよく知らない人も多い。焼酎が造られる背景、飲み方の多様性を伝えていきたいです。最近、ソーダ割りは定着してきましたね。柑橘類を加える、ジュース割りなんかも。若い人に向けてそういった飲み方の提案も勉強していきたい。

藤森:私は、今はワイン側の人間ですが、焼酎にも携わっていた経験から両方を見てみると、焼酎って多様性があると思います。皆さん、焼酎があまり売れてないように思っていますが、実際にはワインの方が消費量は少ない。伸び率ではワインが伸びていますが、それは製品の多様性が人々に知られているから伸びているんです。ワインは、ソムリエ協会が体型的にワインの知識を教えている。また、田崎さんみたいなスターソムリエの存在も大きい。焼酎は、ワインに比べて原価が低いし、販売する上でワインよりリスクがないんです。ワインのように温度に気を遣う必要が少なく扱いやすい。ワインは開栓したらすぐに売り切らないといけませんが、焼酎は開けてもある程度は大丈夫です。気軽に売れるアイテムなのに、売る人が難しいと思っていると売れません。私はロゼワインの店をやっています。「ロゼワインは売れない」と、散々言われていましたが、ロゼワインの可能性を信じてきたので、これまでやってこれています。飲み方を知らない人には、飲み方を提案すれば、馴染みのない人にとっての基準軸を作ることができます。好きに頼ませて好きに飲ませるのではなく、ひとつ、そのお店がいいと思うおすすめの飲み方を教える。そうすれば焼酎は扱いやすいアイテムだと思います。うちの店も、フランス料理ですが焼酎を置いています。だって、料理を作っているのも食べているのも日本人。ここは日本なので日本の酒である焼酎を置くのは当然。そこに隔たりを作ってはいけない。焼酎に独特のクセがあることは個性だと思い、まずは売り手が「わからない」ではなく、「焼酎が好き」という思いを持つところから始めてほしいです。

里見:時代に合わせて、焼酎の個性をどうお客さまに伝えるかを考えるべきではないでしょうか。現在、別件で日本ワインの事業にも携わっているのですが、なんと、「赤ワインの甘口がじわじわ売れ始めている」という話を聞きました。驚いて、「えっ、どんな人に売れているの?」と聞くと、60代以上の女性にウケているそうです。ここ最近で急に売れ始めているということで、超高齢化社会という時代のニーズを感じました。これからの未来では、「健康」、「長寿」がキーワードになるのではないでしょうか? そういったことに焼酎を広めていく意味が眠っていて、それがもう目の前にきていると感じました。ということは、売り手が知識を持っているが重要。売り手が、焼酎の最大の特徴である「香り」を、どう表現していくかですね。

金関:皆さん、ありがとうございました。まだまだ話したいことはあるかと思いますが、時間が来たのでここまでとします。本日はありがとうございました!



前編:フースタ繁盛ゼミ「焼酎新時代の到来!」基調講演レポート。黒木本店専務取締役・黒木信作氏が語る、「焼酎づくりの進化とこれからの焼酎マーケットの展望」

(取材=大関 愛美)

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