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特集

フースタ繁盛ゼミ「焼酎新時代の到来!」基調講演レポート。黒木本店専務取締役・黒木信作氏が語る、「焼酎づくりの進化とこれからの焼酎マーケットの展望」

飲食店経営者に向けて、よりハイレベルな店・会社・人づくりを目指し、フードスタジアムが毎月開催する「フースタ繁盛ゼミ」。2018年5月のフースタ繁盛ゼミは、「焼酎新時代の到来!」がテーマ。第一部は、「百年の孤独」「中々」「㐂六」などの銘柄で知られる宮崎県の焼酎蔵、黒木本店の専務取締役、黒木信作氏の基調講演。第二部では、黒木本店を含む焼酎蔵の杜氏や、都内の飲食店経営者などを招き、パネルディスカッションを行った。

≪概要≫
フースタ繁盛ゼミ5月度「焼酎新時代の到来!」
(5月25日フードスタジアム五反田オフィスセミナールームにて開催)

【第一部】基調講演 13:40〜14:30
 「焼酎づくりの進化とこれからの焼酎マーケットの展望」
  講師・黒木本店(宮崎県)の黒木信作専務

【第二部】パネルディスカッション 14:40〜16:10
「焼酎マーケットの未来と我々のミッション!」
  ・司会 金関亜紀氏(フリーライター)
  ・黒木信作氏(黒木本店専務取締役)
  ・渡邊幸一朗杜氏(渡邊酒造場)
  ・金丸潤平杜氏(小玉醸造)
  ・中原章仁氏(佐多宗二商店営業部長)
  ・有馬健晃氏(西酒造有馬取締役工場長)
  ・里見順子氏(エー・ピーカンパニー取締役企画本部長)
  ・井上亮氏(焼酎Dining「だけん」店主)
  ・藤森真氏(シニアソムリエ)

【大試飲交流会】立食パーティー 16:20〜17:30 試飲&交流会



(左写真:セミナー登壇者の皆さん。右写真:会場には登壇者の蔵元の焼酎がずらり)

今回は、黒木本店専務取締役・黒木信作氏の基調講演、「焼酎づくりの進化とこれからの焼酎マーケットの展望」の内容をレポートする。


(写真左:フードスタジアム編集長・佐藤こうぞう、写真右:黒木本店・黒木信作氏)

司会・佐藤こうぞう:飲食店経営者に向けて、毎月開催する「フースタ繁盛ゼミ」。今回のテーマは「焼酎新時代の到来!」ということで、焼酎、とくに本格焼酎にフォーカスを当てた画期的なセミナーです。以前、クラフトビールや日本酒の大きなムーブメントのはしりのときにも、フードスタジアムではそれらをテーマにしたセミナーを行ってきました。そのときと同様、これから焼酎マーケットがガラガラと音を立てて変わり、新時代が来ると確信しています。本格焼酎の新しい飲み方、提供法などのニュースタイルが、メディアを賑わす時代が必ず来ると考えています。本日は、わざわざ宮崎県からお越しいただいた、黒木本店の黒木信作さんの基調講演から始めます。それでは黒木さん、よろしくお願いします!(拍手)



皆さんこんにちは。第一部の基調講演を務めさせていただきます、黒木信作です。まずは簡単に自己紹介をさせていただきます。

私は宮崎県高鍋町の焼酎蔵、黒木本店の次男として生まれ、現在30歳です。黒木本店は1885年創業で、私は5代目として2013年に継ぎました。とくに家を継ぐように言われたわけでもなく、大学も東京の大学に進学しました。当然ですが成人するまではとくにお酒に興味を持つこともなかったのですが、学生時代に居酒屋や洋食屋でアルバイトをしたことで食に興味を持つようになり、それが焼酎作りに興味を持った最初のきっかけだったように思います。

突然ですが、実は私、最近、サウナにはまっていまして(笑)。以前は、サウナというと、「ただひたすら我慢する辛いもの」とあまり良いイメージを持っていませんでした。でも、今はサウナも進化しており、ハーブの香りがする蒸気を使ったサウナなんかもあるんです。ハーブのよい香りに包まれて汗をかいて…と、そんなサウナもあるんだと驚きました。よいイメージを持っていないものが、時代の流れとともに進化し、よい印象に変わる。焼酎も、そんなポイントがあると思います。

「黒木本店」と「尾鈴山蒸留所」の2つの蔵


(左写真:黒木本店、右写真:尾鈴山蒸留所)

本日は、私の焼酎の考え方や志、また焼酎作りにおける理念をメインに話したいと思います。

私たちは、「黒木本店」と「尾鈴山蒸留所」の2つの蔵を運営しています。まずは黒木本店について。こちらはご存じの方も多いと思いますが、宮崎県高鍋町にある焼酎蔵です。もうひとつの尾鈴山蒸留所は、黒木本店から20キロメートル少々、山のなかにあります。

尾鈴山蒸留所の開業は1988年、芋焼酎の需要が爆発的に伸びる直前のことでした。時代の流れとともに焼酎の消費が伸びることを見越して、新たな環境で焼酎作りをしようと、もともと山の中にあった黒木本店を移転するため税務署に相談に行ったそうです。ところが、税務署の方から「新しい蔵の経営にチャレンジしませんか?」との提案がありました。焼酎は長らく需要が伸びない酒だったので、多くの蔵は伸びるどころかどんどん潰れていた。そんななかで、税務署から「焼酎の需要拡大のため新しい蔵を作りませんか」という提案があったのは、異例のことでした。そうして開業したのが尾鈴山蒸留所です。

この2つの蔵はコンセプトが違います。尾鈴山蒸留所は山中の自然豊かな場所にあり、小さな蔵ですがすべて手仕事で焼酎を作っています。黒木本店は、手作りにこだわっていることには変わりませんが、ある程度の規模があり、生産量の多い銘柄などを手掛けています。

自社農場「甦る大地の会」



また、加えて「農業法人甦る大地の会」という会社も運営しています。こちらは農作物を育てる畑の事業です。今でこそ、自社畑を持つ蔵は多くありますが、昔はほとんどなかった。20年ほど前から、徐々に焼酎蔵の自社畑は増えています。よみがえる大地の会は、1998年に始まり、2004年に法人化。広さは約40ヘクタール、東京ドーム10個分ほどの畑で、主に芋、麦、米を育てています。加えて野菜やハーブも生産しており、大きく告知はしていないのですが、複数の飲食店で食材として使ってもらっています。ハーブの種類も豊富に育てていますので、今後、飲食店卸のビジネスも本腰を入れていこうかとも考えています。

ところで、なぜ畑を始めたのか?というと、焼酎の消費量が増えるとともに、焼酎廃液も増える。その廃液を肥料として再利用するための手段が必要だった。かつ、安定した高品質の原料を作りたい、という2つの狙いで畑を始めました。

黒木本店、尾鈴山蒸留所、甦る大地の会、私たちの焼酎作りは、この3つの会社があって成り立っています。

焼酎屋としての理念「人を結ぶ。心をほどく」

今回のお話をいただいて、“焼酎屋”としての理念、というものを改めて考えました。私は焼酎を通じて何がしたいのか? それは「人を結ぶ。心をほどく」ことだと思います。

人はお酒を介して打ち解けることができる。歴史的に見ても、お祭りなどの特別なシーンには必ずお酒があった。お酒を飲むことで開放され、心をさらけ出して人と人を結ぶ。とくに焼酎は香りのお酒です。焼酎の香りは人をリラックスできる。焼酎を通じて人と人を結び、多くの人の人生を豊かにしたいと思いました。

土地を敬う焼酎作り



時間、空間、人間の「三間(さんかん)」という言葉があります。この「三間」を醸すということを大切にしていこうと思っています。時を醸す、土を醸す、心を醸す。黒木本店では、何より手仕事にこだわりたい。

そして私たちの使命と考えているのが、「土地を敬う」ということ。先ほどの甦る大地の会で畑を運営していることに繋がりますが、黒木本店では、焼酎を作る過程で発生した廃液も畑の肥料として使用しています。昔は廃液をそのまま流していたこともありましたが、そうすると土が酸性になってしまい、土壌によくない影響を与えます。自分たちで出した廃液は中和してから自然に返す。これが土地への尊敬だと考えます。こうして循環させていくことが、“土地に生かされている”自分たちの使命なんだと思います。

本格焼酎のこれから



本格焼酎のこれからについても考えました。まず、そもそも「本格焼酎」とは、一回しか蒸留しない単式蒸留焼酎で、そのなかでも特定の材料を使用しているなどの条件を満たしたものだけが本格焼酎と謳うことができます。いわゆる甲類・乙類とは違うものと再認識してもらえたらと思います。

例えばコーヒーについても、かつての焼酎と同じブームがありました。スターバックスコーヒーが日本上陸したことで、シアトルのカフェやコーヒーの文化が一気に広まった。ここでいうところのスタバは、焼酎で言うところの霧島酒造でしょうか。さらに、少し前にはコーヒーの「サードウェーブ」というムーブメントがありましたね。それまでの苦みの強いコーヒーから一転、産地に生産者にこだわったスペシャルティコーヒーが台頭し、人々の生活に根づいてきています。

焼酎はそれらに劣るか?そうは思いません。一時は、世の中で酒全体の消費量が落ちているのに、焼酎だけぐいぐい伸びていたときもあった。これから、私は焼酎のイメージを再定義していきたいと思っています。やはりまだ、焼酎と聞いて、「焼酎=甲類」という図式や、おじさんの飲む酒、というイメージを持つ人も少なくないかもしれません。

ワインもあればウイスキー、清酒といったように、世の中には多様なお酒が存在するなかで、焼酎の在り方は何だろうか?と考えました。

食中酒としての焼酎の在り方

そうして今回提案したいのが、焼酎の食中酒としての在り方。これが、これからの焼酎に求められているものだと思います。

基本的に食中酒に甘いものはないですよね。ワインだって残糖はありません。同様に焼酎にも糖はほぼない。香りだけのお酒です。そういう点が、食事とすごく合うんじゃないかと思います。焼酎は、香りでだけで寄り添うペアリング。それが焼酎独自の強みではないでしょうか。

フレンチではワインを合わせるのが定石ですが、焼酎だって、そこに入っていけるかもしれない。ワインだけが食中酒ではない。自由な発想で、焼酎を食中酒として活用してほしいと思います。

本格焼酎は「大地の香水」


これらは黒木本店の畑と、地元の風景です。これらの写真を見て私は、本格焼酎は「大地の香水」なんじゃないかと思いました。焼酎とは、香りを楽しむスペシャルなお酒。

焼酎は、いわばモノクロ写真。
モノクロ写真とは、光の濃淡だけで構図を切り取る手法です。焼酎も同じ、香りにだけフォーカスを当てるシンプルなお酒、飲み手に想像性を任せるという部分が大きいものだと考えます。

「不易流行」



焼酎は常に変化しながら歴史を重ねてきました。麹などの素材も、どんどん新しいものを取り入れていますし、機械化された部分も多くあります。一方で、進化を続けるなかでも、私たちは人にしかできない部分を生かした焼酎を作っていきたい。「不易流行」という言葉がありますが、変わらないでいくこと、変化していくことこそが本質だと思います。

尾鈴山蒸留所の取り組みが、まさに不易流行。昔ながらの土地で、ハーブなどの新しい素材などを取り入れた焼酎作りをしています。

繋がって結ばれていく、人生を豊かにできるものを。そんな思いで、焼酎を作っています。以上で、私からの基調講演は終わりにします。ご清聴、ありがとうございました!

佐藤こうぞう:黒木さん、ありがとうございました。本日このセミナーに来ていただいた蔵元さんは、基本的に原料から栽培する、完全手作り型、クラフトを貫いている蔵元さんばかりです。工場で大量生産する焼酎と、クラフト焼酎、両方がありますが、私は今後クラフト焼酎が来ると予想しています。現在、日本酒がここまでブームが広がっていったのも、小さい蔵が心を込めて作ってきたから。黒木さんは、焼酎を「大地の香水」とおっしゃっていましたが、自然の恵みに感謝しながら、イチから手作りで確固たる思いを持って焼酎作りに取り組んでいる。焼酎のそういった部分を見直してもらいたい。このセミナーを通じて、「焼酎だってこんなにすごいよ」ってことを伝えたいですね。

後編:フースタ繁盛ゼミ「焼酎新時代の到来!」パネルディスカッションレポート。「焼酎マーケットの未来と我々のミッション!」は近日公開です。ご期待ください。

(取材=大関 愛美)

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