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コラム

2011年は真の「個店力」が問われる!

2011年は「ソーシャルネットワーク」の急激な浸透、個のメディア間の情報交換やウィキリークスによって、企業や団体グループの実態が透明化し、「真の姿」がさらけ出される時代の幕開けといわれる。外食、飲食の分野でも、「真の企業力」や個々の店舗力である「個店力」が問われるだろう。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


2010年の年の瀬も押し迫った12月27日、首都圏で74店舗を展開するサムカワフードプランニングが投資ファンドのポラリス・キャピタルへ持ち株全てを売却することが記事となった。「鳥良」ブランドに続き、最近は海鮮業態「磯丸水産」を積極的に展開し、注目されていた。新興市場では時価総額30億円以下の上場企業がゴロゴロしているなかで。「売却価格は60~70億円」と報道されたサムカワフードプランニングの企業価値に業界はアッと驚いた。新興上場企業が概ね株価維持のための収益アップに四苦八苦しているなかで、ある意味、快挙だと言えなくもない。サムカワの「企業力」「店舗力」が率直に評価されたということだろう。その実力は、都心部で24時間営業を貫く「磯丸水産」に行けば理解できるだろう。鮮魚×アルコール業態では群を抜いている。昨今、上場も視野に入れた店作りや出店の在り方が注目されている。ビッグビジネス化を念頭に、最大公約数的なニーズを反映した業態開発や、積極的にメディアを使った話題提供や仕掛けを先行する企業も少なくない。しかしながら、外食市場に不透明感が覆うなか、正攻法では苦戦を強いられる企業も多く、なりふり構わぬ同業へのM&Aや目先の話題づくりに汲々として、飲食業を極めるというよりも、マネーゲームに焦点をおいた傾向が顕著になってきたのではないか。サムカワが評価されたのは、トレンドを取り入れたり、先行する個店繁盛店を徹底的にベンチマークしながら、独自の店舗力をつくり上げ、それをまた徹底的に磨き上げるパワーである。いわば、「個店力」の底力と言ってよいのではないか。いま問われているのは、個店であろうが、展開型企業であろうが、飲食業としての立ち位置にこだわり、そのポジションを崩さない「個店力」を磨き上げようという地道な努力だ。これからマーケットで評価される企業は、積極的な出店で数のパワーを目指すのではなく、1店舗1店舗を育てながら、着実にステップアップしていく基本マインドを持つグループだ。例えば、いま最も注目されているワイン系業態の中では、夢屋の「骨太フレンチビストロ「アリゴ」、リヨンブルーアンテルナショナル「Termini」、三軒茶屋の「FUJIYA GRILLBAR」、楽グループの「東京ワイン食堂・楽」などをベンチマークしてみると良い。それらに共通するのは、どの店も1店舗としてのネームバリューを持ち、個店力がブランド力となっている店だ。それらの運営企業は、既存店舗のクオリティの維持にこだわりながら、少しずつ伸びてきた“亀型”の実力企業といえる。景気低迷のなか、共同購入クーポンやツイッター販促など新手の手法も登場したが、集客を促すのはそう容易なことではない。厳しいマーケットだからこそ、真のファンを創り、生き抜いていける強いブランド力の決め手である「個店力」が改めて注目されるのだ。いま、飲食マーケット活性化への期待感として、プチリッチ志向が注目されている。「ワイン」「日本酒」というビバレッジ軸から付加価値型のMDを考案するアプローチが有効になってきたのだ。ここで大事なことは、業態コンセプトよりも顧客マインドをゆさぶる力、顧客に選ばれるMD構築力と卓越性である。マス・マーケティングではすくい切れない顧客のウォンツやニーズが飲食にはある。その小さな顧客のマインドを重視すべきだ。それを取りこぼさないためには、リアルなマーケットと向き合い、真の「個店力」をブラッシュアップしていくしかない。 

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