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コラム

これからの10年に向けて、「リセット発想」を!

2010年の総括して思うことは、今年ほど外食企業や飲食業態に対する評価のモノサシが揺らいだ年はない、ということだ。大手居酒屋チェーンは低価格競争に走り、居抜き出店ブームは街中にパクリ店"を氾濫させた。一度、既成概念をリセットし、新たなスタンダードづくりに向けて、価値観の再構築を図る必要があるのではないか。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


ゼットンの稲本健一社長は、ある業界忘年会で、「2011年のキーワードはリセット」と発言したらしい。ちょうど10年前に名古屋から東京デビューを果たし、“イザカフェ(居酒屋×カフェ)”業態で一斉を風靡、株式上場を果たしてからは「アロハテーブル」をメインに、カジュアルリッチ路線のハワイアン業態の展開を続けている。稲本さんの「リセット発言」の真意は、「いまどこが勝っているとか負けているということではなく、自分の本当にやりたいことに立ち返って、リ・スタートを切るべきだ」ということではないか。自分と会社がよって立つレゾンデートル(存在意義)、立ち位置の再確認、これがいま重要だということだ。「our own position」の確立である。その軸があってこそ、オリジナリティや個性が活きる。12月22日、六本木に「MEAT 肉男 MAN」というワインと肉の新業態を出したガンさんこと、ベイシックスの岩澤博社長は、いつもブログで「“日本一の飲み屋のオヤジ”を目指している」と書く。楽コーポレーション出身で、楽グループの宇野門下生の番頭角として、素晴らしい店を創りつづけ、後輩たちや業界経営者からリスペクトされている。岩澤さんは、「店舗数や売上げは追わない。目の前のお客さんに楽しんでもらうことがすべて」と言い切る。今回、初めてワインを本格的に置いたが、「ワインの知識があるスタッフはいません。2,500円から5,000円ぐらいまでのワインを揃えています。お客さんに好きに選んでもらえばいいんです」と言う。「ワインを選ぶ楽しみ、飲み比べる楽しみ」もお客さんに委ねているのだ。業界人が岩澤さんに憧れているのは、いい店を創り、客を楽しませることにおいてはまったく軸がブレないからであり、その妥協のない店づくり、人づくりをスタッフとともにとことん楽しんでいるからだ。これまでの10年、マーケットにはあらゆる業態が出尽くした。食材の時代になって、原点回帰がキーワードになったが、そのサイクルも一巡したのではないか。いま本当に強い店の作り手は、業態の垣根にこだわたず、食材特化にもこだわらないプロフェッショナルだちだ。言ってみれば、「専門力への信頼感」のある店だ。単価が高い、安いもさほど関係ない。ただ「高品質でリーズナブル路線」の“ネクストQ”を追求する本気度が問われる。現状の人脈や取引先に満足せず、新しい関わりを求める嗅覚と行動力、フラットでセンシティブな感性を失わない。常に脱皮し、進化を繰り返す、そんな経営者が2011年にはフィーチャーされるだろう。表面的には同じことの繰り返しであり、当たり前のことを当たり前にしているように見えるが、水面下では常にレベルアップに向けて努力している。2011年からの「これからの10年」、飲食マーケットはまさに“高質競争”が展開されるだろう。

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