飲食店・レストランの“トレンド”を配信するフードビジネスニュースサイト「フードスタジアム」

コラム

「北米ライフスタイル系業態」トレンドをどう読むか?

サードウェーブコーヒー、クラフトビール、パンケーキ、エッグ料理、オーガニック料理など、ニューヨークブルックリンやサンフランシスコなど北米の各都市でトレンドになっているネオ・ライフスタイル系の業態が日本でも増え始めている。これらのトレンドをどう読み、これから店舗経営に活かしていくべきか...。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


今年の7月、まるでニューヨークのクラシックなホテルを現代風にリノベートしたような店「MADISON NEW YORK KITCHEN(マディソン・ニューヨーク・キッチン)」が恵比寿にオープンした。恵比寿、表参道、白金台、六本木、鎌倉、銀座でカジュアルリッチなカフェやレストランを展開するMERCER OFFICEの11店舗目となる新たな店で、「ニューヨークにあるビストロをイメージした、レストラン機能を持ったラグジュアリーな空間」と話すのは、同社の副社長兼クリエイティブディレクターを務める森野成貴氏だ。同社は2008年に恵比寿「MERCER CAFE」をオープン。以来、一貫して、ニューヨークの最新の“フードライフスタイル”を提案してきた。森野さん自らニューヨーク、西海岸のロス、サンタモニカなどを視察。「ニューヨークのレストランではいま、“ニューヨークにいながらロスのエッセンスを取り入れたインテリアスタイル”が旬」だと言う。

今年3月に恵比寿にグルメバーガー「Burger Mania(バーガーマニア)」の3店舗目をオープンしたのは、マニアコーポレーションの守口駿介社長。恵比寿駅東口交差点の通りに面している3号店は、オープンテラスで開放的。店舗コンセプトはニューヨークのブルックリンにあるカフェを参考に、小物や装飾品は守口氏がニューヨークで買い付けた。近年、ブルックリンは音楽シーンをはじめ食を含めたカルチャーが世界的に注目されている地域。ブルックリンのカルチャーが注目されている理由のひとつは、等身大で人間味のあふれているところ。ある意味都会の喧噪から抜け出し、ゆるさを体験できることが大きな魅力である。この「バーガーマニア恵比寿店」からも、その空気感がふんだんに伝わってくる。守口さんは学生時代、「牛角」のアルバイトで飲食の世界に入り、独立を決意。好きだったニューヨークの飲食シーンを東京で実現したいと2008年に1号店を白金高輪に出店した。

茅場町から永代通りを永代橋の手前で降りて、隅田川沿いに歩くと、路地の向こうにポツンと「Mile Post Bike and Cafe」がある。デザイナーの矢野寛明さんのプロデュースによってリニューアルしたばかり。1階の「MilePost Pro Cycling Shop」はロードバイク・MTB・シクロクロスのBMC・ANCHOR、小径車のAlex Moultonの販売を中心に、修理・調整など、自転車ライフをサポートする店。2階の「Mile Post Cafe」では、タンドール釜を設置し、モダンインディ料理とインドカレー、そしてクラフトビールとコーヒーを提供。隅田川を一望できるテラス席からは永代橋を眺められる。1階に自転車ショップ、2階にクラフトビールという店は、実は米オレゴン州のポートランドの大人気店のスタイル。ポートランドは70年代から「サステナブル(持続可能な)都市づくり」を目指し、米国のなかでは、いま最も「住みたい都市」。DIY発祥の都市であり、サードウェイブカフェやクラフトビールの店、オーガニックレストランなども、このポートランドからトレンドが生まれたといわれる。自転車(バイク)とクラフトビールの店は、“B&B(バイク&ビール)スタイル”として注目されているわけだ。

ポートランドで生まれたライフスタイル系業態は、サンフランシスコやロサンゼルスに波及し、ニューヨークにも大きな影響を与え、もともとライフスタイルにこだわりの強いカルチャーとコミュニティが形成されつつあったブルックリンで新たな進化を遂げているというのがこれまでの流れだ。そして、そのトレンドの底流の本質にあるのは、マスプロロダクト(大量生産・大量販売)からクラフト(手作り)への文化回帰ということ。在米ジャーナリストの佐久間裕美子さんの「ヒップな生活革命」という本にこう書かれている。
「この新しい文化の潮流は、自分たちが消費するものの本質を強く意識することから始まっています。口に入れたり、身につけたりするものがどこで作られ、どこからやってきたのかを考えよう、社会的責任に重きを置く企業を支持しよう、『より大きいものをよりたくさん』という消費活動と決別しよう、お金さえ払えば誰でも手に入れることのできる高給ブランドのバッグよりも、自分がより強いつながりを感じるものを、たとえば同じコミュニティの一員がデザインし、地元の工場で、自分たちと同じ電車に乗って仕事に通う人が作る商品を使おう、という新しい価値基準の提案です。」(『ヒップな生活革命』より)。
「パンケーキで行列をつくらせることがライフスタイル提案ではない。顧客に「自分たちが消費するものの本質を強く意識」させること、そういうシーンを演出することが必要なのである。

コラム一覧トップへ

Uber Eats レストランパートナー募集
Copyright © 2014 FOOD STADIUM INC. All Rights Reserved.