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コラム

「業態インバウンド」ブームから何を学ぶか?

2014年は「業態インバウンド」ラッシュともいうべき年だった。世界から有名ブランドのレストラン、カフェ、ベーカリー、スイーツなどの業態が日本初上陸を果たし、いずれもオープン時には行列をつくり話題を呼んだ。今年もその動きが加速しているが、いま考えるべきことは何か?

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「インバウンド」は海外からの観光客のことだけでなない。飲食、外食の分野では、「増加する海外からの観光客をターゲットにどう集客やサービスの向上を図るか」に関心が高まっているが、一方で「海外の飲食ブランドのインバウンド」ラッシュをビジネスチャンスと捉える向きも多い。海外の飲食企業、レストラン・フードビジネス関係者は「円安の今こそ、アジア最大の消費国・日本に攻め込むチャンス」と考えているからである。今年に入ってからサンフランシスコ発「ブルーボトルコーヒー」、ブルックリン発「ゴリラコーヒー」、、デンマークから期間限定の「ノーマ」が上陸し、メディアは大きく取り上げた。これからも様々な国から続々と日本初上陸を果たす。それらをファッションビジネスのような単なる流行現象と捉えていてはいけない。飲食ビジネスとして、いかに新しいライフスタイルとして掘り下げられるか、また食材の流通などでもローカライズの視点で視ていく必要があるのではないか。かつて、大手外食チェーンが米国からチェーンオペレーションを持ち込んできたのとは違う価値観で、ライフスタイルにマッチしたカルチャーやカスタマズしたオペレーションを取り込むべきだ。

つまり、「グローカル化」(glocalization)について徹底的に考えてみることである。グローカル化とは、全世界を同時に巻き込んでいく流れである「世界普遍化」(globalization)と、地域の特色や特性を考慮していく流れである「地域限定化」(localization)の2つの言葉を組み合わせた混成語である。「地球規模で考えながら、自分の地域で活動する」(Think globally、act locally)とも関連する言葉だ。私は、このコラムでかつて「アクトグローカル」について書いた。「これからは、海外に積極的に出かけて、様々な国と都市、人種の食文化やライフスタイルに触れ、そこからインスパイアを受け、これまでになかったような新しい価値基準やカルチャーを提案していくことが大事になってきた」と。いまやインターネット、ソーシャルネットワークの普及で、国境はボーダレス、トレンドもリアルタイムで共有される時代。また、円安で今年はインバウンド元年といわれるほど海外から様々な業態が日本に入ってくるだろう。

そして、業態だけでなく、シェフや飲食関係者、生産者も世界から日本にやってくる。そうした海外のアップデートなトレンドと日本の飲食トレンドがミックスした新しい食カルチャーも生まれてくるに違いない。特に北米のブルックリンやポートランドのカルチャー、ライフスタイルは日本の飲食マーケットに大きな影響を及ぼしつつある。クラフトビールやサードウエーブコーヒーなどはすでに大きなマーケットになりつつある。ASEAN諸国や台湾なども、いまや出ていくだけの国ではなく、業態の輸入の対象になっている。そうしたなかで、海外のスタイルを取り入れながら、食材やサービスはローカルスタイルでというネオカルチャー的な考え方も出てくるだろう。グローバルとローカルのミックスカルチャーである「グローカル化」という視点はますます重要になってくる。業態インバウンドのラッシュをただの流行現象としてだけ見るのではなく、「アクトグローカル」を取り入れて、行動を起こすことが大事である。まずは、狭い日本を出で海外を視てこよう。そして、地球規模でできるビジネス、地域に還元できるビジネスについて考えてみよう!

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