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【新・外食ウォーズ】多種多彩なコラボ戦略で、 総合居酒屋「養老乃瀧」を再活性化する!養老乃瀧(株)店舗運営・開発グループ営業戦略セクション 執行役員・谷酒匡俊氏インタビュー

 居酒屋チェーン最古参の養老乃瀧が、予想外のコラボレーション(コラボ)戦略を次々に実施、その成果を活かし新しい「養老乃瀧」を創ろうとしている。養老乃瀧は1938年(昭和13年)に長野県松本市に大衆食堂「富士食堂」を開業したのが始まりだ。56年に横浜市曙町に24時間営業の大衆酒蔵「養老乃瀧」1号店を開店、大繁盛させた。当初「大衆食堂と居酒屋」をミックスした業態であったが、酒・ビール、焼き鳥、煮込み、刺身、揚げ物など居酒屋メニューに絞り込んでいった。これが現在の‟総合居酒屋„の先駆けである。養老乃瀧は70年代に直営・FCで1000店舗を超す、最初で最大の居酒屋チェーンに急成長した。だが居酒屋業界は浮き沈みが激しい世界だ。近年では専門居酒屋チェーンが台頭するなかで、ワタミのように総合居酒屋の「和民」や「わたみん家」を専門居酒屋の「ミライザカ」や「三代目鳥メロ」に業態転換して生き残りを図るチェーンも現れた。養老乃瀧も店舗数を減らし450店舗台の準大手チェーンに縮小してきたが、地方都市における「養老乃瀧」ブランドは相変わらず、しぶとく強い。養老乃瀧は次世代の総合居酒屋「養老乃瀧」を開発し、活路を拓こうとしている。


店舗数は2002年度で1563店舗



(養老乃瀧 店舗運営・開発グループ営業戦略セクション 執行役員・谷酒匡俊氏)

――養老乃瀧は65年(昭和40年)に横浜市から東京方面にかけて直営で念願の100店舗展開を実現、66年4月には東京・板橋区にFC1号店の成増店を開店、72年には1000店舗展開を達成します。その後、「養老乃瀧、2000店舗展開!」を掲げ、FCを中心に店舗数を増やしていきますが、最大で何店舗まで展開したのですか。


谷酒 ――はい。わたしは2000年の入社です。店舗数ではっきり覚えているのは、2002年度の『日経流通新聞』(現日経MJ)の「日本の飲食業調査」で1563店舗だったということです。これが最高だったのではないかと思っています。養老乃瀧は繁華街の一等立地ではなく、大都市部から離れた私鉄沿線や郊外などの立地に、比較的坪単価の安い物件を求めて店舗展開してきました。また、FC加盟店が9割近くを占めていますが、FCに加盟した人の多くは脱サラ組でした。夫婦二人で、家業として「養老乃瀧」を経営してきたのです。成長段階では養老乃瀧が爆発的に店舗を増やす強みになりましたが、現在のように成熟化した時代では世代交代が進まずに、店舗閉鎖に追い込まれるという弱みにもなりました。

――居酒屋チェーン戦争が本格化するのは73年に札幌で「つぼ八」が創業され、東京で「庄や」(大庄)や「村さ来」が創業されてからですね。それまで養老乃瀧のライバルといえるのは「天狗チェーン」(現テンアライド)しかなく、養老乃瀧と競合する居酒屋チェーンはなく、独り勝ち状態が続いていました。


谷酒――そうですね。一時は私鉄沿線など乗車する駅、下車する駅に「養老乃瀧」があり常に賑わっていました。わたしが塾の講師から転職し、養老乃瀧に入社した2000年頃には郊外型店舗の出店が多かったですね。わたしは現場の店長などを経験して直ぐにスーパーバイザー(SV)に就き、よく新店開店の応援に行きました。開店セールでは飲料の100円セールを実施、お客さまに大サービスしました。物凄く忙しかったですね。当時郊外型の店舗は大きな集客力があったのですが、2002年6月に施行された道路交通法の改正で暗転します。酒酔い運転、酒気帯び運転の罰則が強化されたことで、郊外型の居酒屋は壊滅的な打撃を受けました。当社でも年間100店舗単位で閉店に追い込まれました。
わたしも「養老乃瀧」の閉店を手伝いに行きましたが、オーナーのなかにはそれを機に引退する人もいました。そういうオーナーから、「ありがとうね! 養老乃瀧のFC加盟店になったことで大儲けでき、賃貸マンションを3つも持つことができた。引退しても悠々自適の生活が送れる」と、よく感謝されました。もちろん養老乃瀧のFCに加盟したオーナーたち全部が成功したわけではないけれども、ハッピーリタイアした人たちが多いのも事実です。養老乃瀧はファミリーチェーン(のれん分け・のれん貸し)で発展して来ました。養老乃瀧FCオーナーの2代目などが入社してくるケースも多く、養老乃瀧のDNA(遺伝子)を持った人たちが集結し、団結力が強いのが特徴です。

「一軒め酒場」開発物語


――養老乃瀧はつぼ八、村さ来と共に旧御三家を形成しました。80年代後半から2000年代にかけてモンテローザ、ワタミ、コロワイドの新御三家にその座を奪われ、勢いを失います。総合居酒屋を展開する旧御三家や新御三家が低迷するのは、08年9月に勃発したリーマン・ショックにあったと考えています。リーマン・ショック後、中堅の居酒屋チェーン・三光マーケティングフーズが「全品270円均一 金の蔵Jr.」を投入、客単価2000円以下の激安均一価格戦争を仕掛けました。09年夏から10年12月まで続き、その結果、客単価3000円~3500円の総合居酒屋の市場が消滅するほどの影響を受けました。この際、養老乃瀧は08年12月に、客単価1500円の激安居酒屋「一軒め酒場」を開店します。谷酒さんが中心になって開発したそうですが、何かきっかけがあったのですか。


谷酒 ――ええ。あれは04年頃のことですが、店舗開発のことで大阪に出張したことがあります。その時、大阪の担当者から「全品280円均一じゃんぼ焼鳥 鳥貴族」という大繁盛店がある」と道頓堀の鳥貴族に連れて行かれました。お通しなし、客単価2100円程度なのに、高品質でボリュームのあるメニューを提供する、鳥貴族のビジネスモデルに度肝を抜かれました。その時の驚きが引き金になって、鳥貴族より客単価の安い激安酒場「一軒め酒場」の開発を思い立ったのです。

――なるほど。開発コンセプトは「立飲みの客単価1500円で座席に座って飲める激安酒場」ですね。「一軒め酒場」は具体的にはどんなふうに開発したのですか。


谷酒 ――基本的に原材料費は削らない、飲料のジョッキサイズは小さくしない、お客さまに迎合する業態開発はしないといった原則を立てて進めました。あれもこれもやるというのではなく、「引き算」の経営に徹しました。具体的には店の什器、備品、メニュー、サービス、電気・ガス・水道代、そして消しゴム1個からボールペン1本に至るまですべて見直し、徹底的に削減することにしたのです。ちなみに、「養老乃瀧」の調理場は刺し場・焼き場・揚げ場に分かれています。このうち最も経費がかかるのが焼き鳥を焼く焼き台(電気グリラー)です。導入費用が60~70万円、月間の電気代が10万円かかります。しかも一人がつきっきりになるので人件費がかかります。客単価1500円の激安酒場をつくるうえで電気グリラーは経費負担があまりにも大きいので、思い切って取り外すことにしました。これによって電気代や人件費が削減でき、調理場のスペースが狭くでき、その分客席を増やせるというメリットが生まれました。
余分な経費を削るために1本6~7円のコストがかかるオシボリは廃止しました。料理メニューでは刺身には見映えをよくするために菊の飾りものを付けていましたが、これもやめました。ウニやイクラなどの高級メニューは外しました。替わって「神田旨カツ1本99円(価格はすべて税別)」「揚げたて220円」などを投入しました。料理メニューは約30品目に絞り込み、180円~200円台を中心にし、「ほっけ 350円」が一番高いメニューという設定にしました。減らしたコストはすべて売値に反映させたのです。
その結果飲料メニューでは酎ハイ・サワー、日本酒白鶴の190円という激安価格が実現し、集客の目玉商品になりました。また飲料メニューはサッポロ生ビール(中ジョッキ)を340円として、約20品目に絞り込みました。焼き鳥専門店チェーンの鳥貴族がメニューを絞り込んでオペレーションを簡素化しているのに刺激を受けたからです。これにオリジナルドリンク「バクハイ」(生ビール&ウイスキー・マッコリ。商標登録取得)を投入し、メニューの特色を出しています。なお、販売価格、取扱品目数は08年の開店当時のものです。

――08年9月にリーマン・ショックが勃発、「一軒め酒場」はその3ヵ月後の08年12月に1号店がオープンしました。神田駅南口前のガード下の「養老乃瀧」を業態転換し、店の看板には黄色地に赤文字で酎ハイ・サワー190円、「神田旨カツ」1本99円などと大きく書き、集客につなげました。「一軒め酒場」は順調に店舗数を増やし、現在では71店舗を数えるまでに成長して来ました。「一軒め酒場」は養老乃瀧の強さを象徴する業態だと思いますが、今後どう展開するのですか。


谷酒 ――「一軒め酒場」は客単価1500円の激安価格、商品提供の速さ、安心感を武器に安定的に成長を続けています。お店により営業時間も様々で「朝飲み」「昼飲み」など、年金暮らしの団塊の世代や夜間勤務のワーカーなどを取り込むことに成功しました。もちろん「夜飲み」にはビジネスパーソンもやって来るので回転率は高く、「養老乃瀧」に劣らない収益を上げています。しかしながら「一軒め酒場」は経費削減プロジェクトとしてスタートした経緯があり、不振店の再生のために開発した業態です。「一軒め酒場」は主力の「養老乃瀧」と比べると、立地に左右され人口の少ない地方都市に弱いのが難点です。客単価が安い分、営業時間を長くして回転率で稼ぐ必要があるのですが、地方都市だとそれが出来ません。「一軒め酒場」は大都市圏の繁華街立地で、ラーメン店や喫茶店などの居抜き物件を活用して展開するのが適した業態だと思います。

総合居酒屋の元祖「養老乃瀧」を再生する!


――11年3月に勃発した東日本大震災を契機に宴会需要が激減し、総合居酒屋を展開する大手居酒屋チェーンは軒並み大量閉店に追い込まれ、代わって「全品280円均一」(現・全品298円均一)の焼き鳥専門店チェーン「鳥貴族」などが台頭、養老乃瀧も苦戦を余儀なくされました。養老乃瀧は12年から老朽化したFC店舗の「新ファサード型店舗」への切り替えに踏み切りました。狙いはなんだったのですか。


谷酒 ――東日本大震災が発生する以前から、「養老乃瀧」の進化型のFC パッケージを開発する必要に迫られていました。というのも、「養老乃瀧」のFC店舗はオーナーが高齢化し、店舗の老朽化が進み、リニューアルが必要だったからです。12年からFCオーナーの負担で数百万円かけて看板・ロゴの変更、外観、店内の改装などを実施しました。FCオーナーのなかには「今さらおカネをかけてまでリニューアルする必要はない」と、反対する向きもありました。
けれども新ファサードを導入した大きな狙いは、従来の常連客だけではなく、新しく若い男女のビジネスパーソン、家族連れなど新しい顧客を集めることにあります。実際新ファサードにリニューアルした店舗では売上高が通常の2~3割アップしたとの報告もあり、若い2代目世代や新しく独立したオーナーなどは新ファサードを導入に積極的でした。
新ファサードにした新・養老乃瀧の人気が高いのはブラッシュアップしているからです。その結果、15年10月にリニューアルした「養老乃瀧 六浦店」(横浜市金沢区)で新ファサードは100店舗達成しました。新ファサードの導入はまだ続いています。



(養老乃瀧 新ファサード型店舗)

――養老乃瀧は現在「養老乃瀧」ブランドで360店舗展開しています。ちなみに2016年度が売上高232億円、「養老乃瀧」「一軒め酒場」「だんまや水産」など、合計500店舗、17年度(4月~12月)9ヵ月で売上高170億円、合計488店舗となっています。そんななかで新ファサードを導入する店舗が増えているのは心強いですね。


谷酒 ――当社は56年に横浜に1号店を開店してから今年で開業62年になります。一貫してFC主体の経営を続け、現在FCが8割を占めます。直営で運営するより、FCの方が成功する確率が高いと考えているからです。なぜなら、FCオーナーの方が経営に妥協を許さず真剣に取り組むからです。新ファサードもそうですが、本部は直営・FC店の繁盛のためにあらゆる取り組みをしています。
ベンチマークして定期的に勉強させてもらっている居酒屋チェーンもあります。例えば、「旬鮮酒場天狗」「テング酒場」「立呑み 神田屋」などを展開している老舗チェーンのテンアライドさん。店舗数は119店舗くらいで決して多くはないですが、いつ訪ねても店舗のQ・S・C(品質・サービス・清潔)が行き届いていて、メニューがブラッシュアップされています。居酒屋のビジネスの基本は、こういう地道な積み重ねにあると思います。当社もそういう地道な取り組みをすることで、養老乃瀧ブランドを再活性化したいと考えています。

――なるほど。養老乃瀧は14年からプレスリリース配信サービスのPR TIMMESと提携、新商品開発や同業や異業種とのコラボなど、様々なニュースリリースを年間20本近く、これまで80本以上配信しています。日本料理店の大人気店「賛否両論」とのコラボは、オーナー料理長の笠原将弘氏と養老乃瀧の料理長の中島氏が修業時代の先輩、後輩の間柄で実現したそうですね。笠原さんが開発した養老乃瀧メニューが6品程度、期間限定で楽しめるという試みです。非常に人気が高く、4回、5回と実施され、養老乃瀧の付加価値を高めています。このようなコラボの取り組みを徹底的に実施し、「養老乃瀧」ブランドを高めようとしているのは、居酒屋チェーンのなかで養老乃瀧以外にないと思います。


谷酒 ――当社は62年の長い歴史のなかで常に「養老乃瀧」ブランドを中心にして生きて来ました。「養老乃瀧」ブランドをブラッシュアップし、進化させるためであればどんなことでもやるという覚悟があります。例えば17年11月に本社ビル(西池袋)の「養老乃瀧」の一画を使って、「映像居酒屋 ロボ基地」をオープンしました。バンダイナムコグループのバンダイスピリッツさん、キャラクターやアニメコンテンツのプロモーションで、多くの実績を有するレックスさんと共同で運営しています。「魔神英雄伝ワタル」30周年記念コラボメニューなどを期間限定で販売したりしていますが、熱烈なファンは必ずいます。当社はそういうファンが喜ぶ場を提供することで地域社会に貢献していこうと考えています。
「映像居酒屋 ロボ基地」のようなコラボをすると、同業種や異業種から様々なコラボが申し込まれてきます。いろいろなコラボをすることで、多くのノウハウが蓄積され、それが「養老乃瀧」のブラッシュアップに生きて来るという好循環が出来て来たと思います。

――「養老牛丼」(税抜330円)を復活させたり、ウナギの価格高騰で代替えに一時的ではあるが、「ちくわ蒲焼」を販売したり、バンクラスエナジードリンクと連携して「バクハイ×バンクラスエナジー」の缶シリーズを開発しています。いずれ食品スーパーやコンビニと連携して小売りするのではないでしょうか。


 
谷酒 ――(苦笑)……。当社の人気商品に71年6月から販売している日本初のPBブランドの「養老ビール」があります。サッポロビールさんとのコラボで生まれたものです。今年は「本当に美味しい生ビールを提供しよう」ということで、サッポロビールさんと連携し、講習会を受けました。少しでもブラッシュアップしていこうと努力しています。
繰り返しになりますが、当社は「養老乃瀧」ブランドで成長してきました。様々なコラボをしたり、新商品開発したりするなかから「養老乃瀧」の進化型を開発するようなことが全くないとは言い切れないでしょう。しかしながら、基本路線は「養老乃瀧」ブランドの最大価値化を推進することにあります。この一点に関しては何一つブレていないと、断言しておきます。

――本日は長時間ありがとうございました。


(文中敬称略)

外食ジャーナリスト 中村芳平

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