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インタビュー

株式会社シャルパンテ 代表取締役 藤森真氏


――田崎真也氏の下で、あらゆることを学んだそうですね。

PB080004_640.jpg当時任されたのは、焼酎と豚料理の店「眞平」の初代店長でした。そこで、店舗の立ち上げから現場での柔軟な対応方法など、今に活かされている様々なノウハウを得ました。「サービスの極意」を教えて頂いたと言っても過言ではありません。全てはお客様のために。お客様に提供するものについて、店側は知らないことがあってはいけない。お酒も食材も、作り手の顔が見える商売をしなさい、と常に仰っていました。
ある時、田崎氏が焼酎の試飲をする現場に立ち会わせてもらいました。約2時間で50アイテム以上をテイスティングして、いずれも、味や特徴をあっという間に分析し、コメントする。判断がとても早い。ただただすごい、という感じですよね。田崎さんの周囲にいる方たちも、すごい方ばかりで、そういう方々に直接会わせていただく機会もありました。
それまでの自分の世界観が、完全に変わりました。あまりの田崎さんの凄さに圧倒されながらその距離の遠さに愕然としたのを今でも覚えています。例えて言うなら、子供が空に手を伸ばし、雲をつかもうとしてるようなもの。でも大人になり少しずつ分かってくると、その雲が、いかに遠いもので、そして手が届かないものか理解するような・・・そんな感覚でしたね。それまでテレビで観ていた田崎さんを、僕は勝手に身近に感じていましたから。
田崎さんは常に自身のレベル、視点で僕に話をして下さりました。毎日世界一のソムリエから世界一のレベルを求められ(もちろん全くできませんでしたが、苦笑)、仕事のレベルは、低いところに合わせるのではなくて、高いところに合わせるのだということを学びました。

――経営者としての考え方を学んだのも、田崎氏からということですが?

ある日、任せてもらっていた店のスタッフのひとりが退社してしまった。「スタッフがやめたのは、君の育て方の問題だ」と、お叱りを受けました。「人は宝だ。スタッフだけではなく、業者さんに何かあって、食材やお酒が届かなかったら、僕らは仕事ができないんだよ。常に謙虚に、人に感謝して仕事しなさい」と。田崎氏は、とても面倒見がよくて、人の良いところを伸ばす方。そしてご本人がとても努力家なので、ついて行く先に何かがあると思わせてくれる方です。
経営者とスタッフだけではなく、お店とお客様の間も、全ては信頼関係。それも、田崎氏の下で学びました。例えば、僕の顔色が悪かったことがあって、田崎氏からサプリメントのようなものをいただいたのですが、僕はちょっと躊躇しました。大げさですけど、毒かもしれない。それでも結局、素直に飲んだのは、田崎氏を僕が信頼しているからですよね。それは、飲食業にもあてはまると思いました。店が提供するものを口にするお客様に、安心して食べていただけること。それは、店とお客様との信頼関係のもとに成り立っている。その信頼度を上げていくには、どうすべきか。それも教えてもらいました。田崎氏の下で働いた期間は、厳しく、そしてとても濃い時間でした。
その後、株式会社スティルフーズで、支配人として1店舗の管理、運営を経験して、本部スタッフとしても多店舗管理の中での1店舗の管理、つまり仕組みの中での管理や、経営のノウハウを得たことも大きかったですね。その経験を活かし、フリーで飲食店のプロデュースに関わった後、会社をつくりました。

-藤森さんが設立した「株式会社シャルパンテ」には、どのような思いが込められていますか?

shop05.jpg会社名の「シャルパンテ」というのは、フランス語の形容詞で、ワインの表現用語としても使用されます。様々な特徴が良く調和しており、骨格がしっかりした力強さを感じさせるワインに対して用います。スタッフ・事業のそれぞれが揺るぎない太い骨格を持ち、その個性を高いレベルで調和しながら、一つの会社を力強く形成できるように想いを込めています。

人の教育についても僕のこのシャルパンテの考えを根底に置いています。僕は、スタッフたちを「スペシャリスト」ではなく、「ゼネラリスト」として育成したいと考えています。
一つを極める「スペシャリスト」ではなく、全ての要素においてスペシャリストの「ゼネラリスト」に育てたい。
ワイン業態だからワインだけ知っていればいい、キッチンスタッフだから料理以外は知らなくてもいいというわけではなく、お店で関わる全ての事柄に興味を持ち全てを極めていってほしい。だから、「VINOSITY」のスタッフはワイナリーだけではなく、ビール工場、ウィスキー工場、野菜農家や生ハム工房などにも、みんなで研修に行っています。

 -スタッフをはじめ、人を大切にしている藤森さんの姿勢がうかがえますね。

僕の会社は、「人」ありきです。人を育てることが結果として会社を育てることに繋がります。
僕は、スタッフに「全ての事に心を込めて、全力で仕事をしよう」と言っています。
「VINOSITY」では、開店前と閉店後にミーティングをしていますが、開店前ミーティングでは、スタッフ自身がいかにモチベーションを上げて楽しく仕事ができるかが課題で、閉店後のミーティングでは、今日の問題点を、明日どうやって解決出来るかを全員で考えることが必要です。毎日、これを積み重ねていけば、将来的に大きく成長していきます。
大手のチェーン店ではない、僕らのような個店は、日々の努力の積み重ねと高いモチベーションで勝負。毎日仕事をトコトン楽しみながら、常にとんがってなきゃいけないと思います。
そして僕の会社では、お客様の笑顔に、素直に感動できる人を育てていきたい。
スタッフには、やっていることの全て、発する言葉の一語一語に心を込めてもらいたいと思います。お客様や、この記事をご覧になられた人が「藤森の会社は、スタッフ全員が心を込めて常に全力で仕事をしている」と知っていただけたら嬉しいです。もちろんまだまだ足りない部分、未熟な部分は多々ございますが・・・。
スタッフは、今現在の技術のレベルよりも、向上心やモチベーション、そして何より飲食業を通して人と接することが好きか?を重視しています。これから伸びる可能性を無限に秘めた、熱いハートのスタッフを採用しています。

-今後の「シャルパンテ」の展開を教えてください。

PB080003_640.jpgあと数店舗カジュアルワイン業態を展開し、いずれはお寿司屋さんの居抜き物件などを使ってカウンターフレンチの店を出したいと思っています。カウンターフレンチにしたいのは、お客様の反応をダイレクトに受け止めたい、そして僕たちの熱い想いを思いっきり感じて欲しいからです。そしてそこに日本らしい要素を取り入れたいと思っています。檜の一枚カウンターでトーションの代わりに僕らがデザインした日本手ぬぐいを用意しひざ掛けとして使っていただき、陶芸工房で僕達が造った和食器に、想いのこもった食材で造るフランス料理を盛り付けて食べていただくお店です。
僕は、スタッフを全員連れて、月に2回は農家や酪農家に行ったり、お酒の工場に研修に行ったりしています。扱うものを自分自身の目で確かめ実際に手で触れ、そして何より造り手さんの熱い想いを肌で感じてくるためです。そしてこの活動が造り手さんとの信頼関係の構築にもなっています。
手作り感のあるもの、想いの詰まったもの、全てに僕らの手がかかっている「モノ」だけがお客様の心に響くと思います。株式会社シャルパンテのスタッフは、お客様に対して、借り物の「言葉」や「モノ」ではなく、自分たちの「心」を伝えていって欲しいです。
将来は、僕の会社のスタッフたちに1店舗ずつ自分のやりたいことを表現できる店を持たせて、ボランタリー・チェーン展開のように出来たらと思っています。つまりそれぞれの店舗が独自性を保ちつつ協力し合い、水平的統合組織としてやっていけたらと思います。
僕自身は将来、ヨーロッパのどこかに住んで、毎日ワイナリーを飲み歩き、気に入ったワインを見つけては、それを日本のスタッフの店に送り、売ってもらう。そういうリタイア計画を立てています(笑)。

 -最後に、今後の飲食業界について、どうお考えですか?

 飲食店は、安心・安全なものをお客様に提供するという責任があります。そのためには、生産者との信頼関係が大事です。だから僕は、スタッフと一緒に生産の現場を目で見て、その現場に行った様子をツイッターやブログなどで情報発信しています。それが、お客様との信頼関係にもつながります。
飲食業は安心・安全の上に成り立っている、お客様の健康(命)に直結する非常に責任の重い仕事です。今も、これからも、これが最重要課題であり、その上で素晴らしい店造りが出来れば今後も発展していくと思います。

藤森真氏プロフィール

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1972年、東京都板橋区出身。株式会社シャルパンテ代表取締役。専門学校のホテル学科卒業後、フレンチレストランやバー、ホテルでバーテンダーとして勤務。その後、田崎真也氏の下で、焼酎と豚料理の店「眞平」の初代店長となる。株式会社スティルフーズで、イタリアンレストランの支配人、多店舗管理、運営を経験した後、独立。欧風ワイン居酒屋「VINOSITY」、「わいんすき」ブランドの酒販店運営、飲食店プロデュースも行う。
主な資格;シニアソムリエ、利酒師、ビアアドバイザー、スピリッツアドバイザー、ドイツワインケナー、フードアナリスト等

(聞き手 長谷川敏子)

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