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編集長コラム

大手チェーンの「新業態進出」の本気度を問う!

2015年に入って、大手チェーン企業が様々な新業態を開発し、展開に乗り出した。日本マクドナルドやワタミ、ゼンジョーなどの業績悪化に見られるように、これまでの画一型、効率主義の業態では顧客離れを食い止められなくなったからだ。いろいろな“実験”が始まっているが、勝ち残る業態はあるのだろうか…。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


赤坂サカスの近くのビル2階に4月17日、華々しくオープンしたのが「熟成焼肉 肉源」。経営は郊外型チェーンの焼肉店やラーメン店を展開する物語コーポレーション。「『霜降りで柔らかく』より『熟成で柔らかく』」「『脂身の旨さ』より『熟成肉その物の旨さ』」をテーマに、牛の赤身の熟成肉(40日ウエットエイジング)を焼肉スタイルで提供するという業態。熟成肉ブームのなかで、本流のドライエイジングのステーキスタイルではなく、あえて焼肉業態でチャンレンジしたのが差別化のポイント。しかし、すでにウエットエイジングの焼肉業態は新和が「熟成和牛焼肉エイジングビーフ」(日暮里、大宮)を展開しており、新規性はない。新和は熟成牛ステーキダイニング「グリルドエイジング・ビーフ」も展開、ウエットエイジングのステーキ業態にも進出している。「肉源」はステーキもオンメニューしており、焼肉専門業態ではない、いわば“総合赤身ウエットエイジング業態”となっている。店内はシックな内装に、バラエティに富んだシーティングでカップルからグループ、接待や軽い商談などでも使えるマルチ利用が可能な空間。ワインも飲み放題を頼めばボトル1本980円と格安で“肉とワイン”を楽しめる。同社らしいオペレーションも素晴らしく、連日満席の状態だが、本流のドライエイジングのスタイルに勝てる突き抜けた業態と評価するにはもう少し時間がかかるかもしれない。

6月19日、赤坂には“スマート・スシ・ダイニング”をコンセプトに女子が一人でも気軽に立ち寄ることの出来る新しいスタイルの寿司業態「ツマミグイ」の2号店もオープンした。経営は回転寿司業態トップ企業のあきんどスシローだ。1月にオープンした1号店の中目黒店は、全面ガラス張りのファサードで、店内は白を基調にした空間。スタイリッシュで山手通り沿いのなかで一際おしゃれな雰囲気を放つ。メニューは彩りもあざやかな創作一口ロール寿司に、アラカルトで一貫からオーダーできる本格的な握り寿司、さらにサラダ、魚や肉のアラカル料理なども充実している。ドリンクではグラスワインが白3赤2、ボトルワインが赤白合わせ10種類にシャンパン、スパークリングワイン、発泡日本酒などもある。モダンデザインの白磁の器に載るスシや料理はポーションも控えめで、タパス感覚。まさに女子飲みを意識していることが見て取れる。基本的にはフルサービスだが、オーダーはタブレッド端末、タッチパネル操作を導入。ただ、空間に比べ料理のクオリティが負けており、“割高感”は免れない。いまのマーケットは“値段以上の価値”を求めており、業態づくりの方向性が時代と逆行している。

コロワイドグループのコロワイド東日本は“Re Concept”として「うまいもん酒場えこひいき」を樽生ワインとシュラスコを打ち出した新業態「肉酒場エコヒイキ」へと替えた。くじらのカルパッチョなど独創的でユニークな料理を揃える。居酒屋でシェラスコが出てくるのはびっくりだが、客前でスタッフがスライスして量り売りスタイルで提供。大森「北の味紀行と地酒 北海道」を「北海道 大森店」へ業態転換。市場に出回らない4〜5Lサイズの特大タラバカニを筆頭に“surprise”と“Live”感を提供するという。270円均一という均一居酒屋で注目を浴びた三光マーケティングフーズも新規事業の大衆酒場「アカマル屋」を大宮、新宿西口とオープンさせた。味噌煮込み、出汁煮込み、備長炭炭火串焼きと三大定番を揃えた本格派の大衆酒場だ。1階は串焼きの炭火を囲むようにカウンター席を設け、客席にはおでんの屋台を置くといった酒場のリアル感も演出している。客との距離を近くする“One-to-One”のサービスも目指しているという。ほかにも南千住、調布には「大衆酒場よろづ」も出店。さらに、“肉問屋が厳選したこだわりの肉をお店に直送”をうたい文句にした厚切り肉が看板の「焼肉万里」を大宮で2軒というふうに、既存店をマーケットニーズの高い業態へとリニューアルしている。

このように飲食マーケットではいま、大手チェーン企業が次々と新たな業態を出店し始めた。これまで“数のマーケティング”で飲食マーケットを牽引した大手チェーン企業。しかし、世代交代、時代の変革で価値観の変化、志向の多様化と、マーケットの傾向は大きく様変わりし、ニーズは個店的なスタンスの高価値化へとシフトしている。さらには新世代オーナーの多店舗企業も台頭してきおり、これまでの“守り”のスタンスから、時代の先を読む“攻め”への切り替えが求められている。ようやく大手居酒屋チェーンが「顧客価値」ということに気づき始めたようである。従来通りのFL管理にもとづく効率主義、マニュアルを押し付けた人材ロボット化という“数”を追う店舗拡大主義、店舗オペレーションが結局、自社都合で顧客に「自社価値」を押し売りし、顧客離れを促していたことがわかってきたということだろうか。マーケットは「顧客価値」重視に大きく転換している。SNS、スマホ時代の到来で、顧客サプライズやライブ感、シズル感、圧倒的なコスパ感というもの(コト)が瞬時に共有される時代。従来のフラットな満足感しか提供できないチェーン居酒屋の時代は終わっているのだ。今回取り上げた各社の試みは、トレンドを追っている懸念がないでもない(トレンドを追っている限り陳腐化も早い)が、その取組みは期待していいだろう。「ブランドを守る」発想から、「個店的スタンスで高価値化を目指す」方向に舵を切り替えないかぎり、大手チェーンに未来はない。

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