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インタビュー

銀座の大型商業施設へ出店決定。アジア圏進出に向けて本格的に動き出す株式会社First Drop代表取締役・平尾謙太郎氏の快進撃に迫る

2003年の「魚と酒 はなたれ 横浜・長者町本店」の開業を皮切りに、桜木町店、横浜鶴屋町店、品川店、丸の内店、人形町店、恵比寿店、大塚店の8店舗(業務委託含む)、「海を愛する はなたれ小僧 横浜駅東口店」、「日本酒Saka蔵」、「魚とワイン はなたれ野毛店」、「魚とワイン Hanatare」の4店舗、「The Fish & Oysters」、FC店の「焼肉 治郎丸 野毛店」など現在14店舗を展開中。店舗数・業態も着実に増え、毎年125%成長、増収増益を続けている同社の強さと、今後の展望についてのロングインタビュー。


食材の旬を追求する仕入れ

―飲食業界に入るまでの経歴について教えてください。

平尾代表_2大学卒業後、大手流通企業の鮮魚部に約5年間勤務していました。もともと「魚」が好きだったので、自ら鮮魚部門を希望して配属になり、魚の選別方法やさばき方など基本をみっちり叩き込まれ、「魚」について幅広く学ぶことができました。日々の業務では、魚の価格相場情報を見て、単品管理や原価率の計算などの業務を任されていたので、数値管理がしっかり身に付きました。独立をする上で大いに役立ちましたね。いつかは自分で事業をやってみたいという気持ちがありましたから。

―店名の「はなたれ」、社名の「First Drop」の由来について教えて下さい。

「はなたれ」は、焼酎蒸留の際に一番初めに垂れる香り高い希少な液体「初垂れ(はなたれ)」から取っています。社名の「First Drop(ファーストドロップ)」は、その「最初の一滴」から命名しました。弊社は、2003年の創業以来一貫して、「魚、地野菜、日本酒」を三本柱に据え、その「最初の一滴」の美味しさにこだわっています。それは、酒だけでなく食材の旬の「走り」をお客様に届けたいという想いで店舗運営をしています。

―「魚、地野菜、日本酒」を三本柱に掲げていますが、それぞれのこだわりについて聞かせて下さい。

hanatare-ningyocho_料理-生しらす魚介類は、横浜中央卸売市場本場に出向き早朝に水揚げされたばかりの新鮮な魚貝を仕入れます。ただ、「湘南しらす」だけはそうはいきません。漁の状況次第なので、当日にならないと仕入れが可能なのかわからないんですよ。ですから、直接漁師さんのところまで買い付けに湘南まで通ってます。野菜は、鎌倉の朝市で生産者が直接販売している旬の野菜や、三浦半島の朝どれ野菜などを仕入れます。西洋野菜などもたくさんありますし、見たことのない野菜も多くあるのでぜひ食べてもらいたいんです。地酒については、私の地元・神奈川にある日本酒の蔵元にがんばってもらいたいので、店ではいろいろな企画も交えて提供しています。蔵元の方も、僕らと同世代だったりするので、いろいろと協力してくれるんです。お互いに協力し合える関係なので、はなたれPBの低アルコールで呑みやすい発泡清酒などを毎年夏につくってもらったりしています。

 

海の資源保護に取り組む「生しらすプロジェクト」

―「生しらすプロジェクト」や、環境保護団体への寄付などを積極的に行っていますが、どのような活動ですか。

生しらすプロジェクトロゴ魚がないと我々は商売ができないですからね。魚を残し、その魚を使った美味しい料理を提供するという商売をし、お客さんに喜んでもらうことが一番良いことだと思っています。でも、飲食商売抜きにしても、長年、魚に関わってきましたから、海の環境を保ち、しらすを自分の孫の世代にまで食べさせたいという想いがあります。その想いで全社を挙げて実施しているのが「生しらすプロジェクト」です。弊社の経営する全店舗において、「生しらす」「釜場げしらす」を使用した全メニューの売上げの1%を半年に一度、海に関する環境保護団体に寄付したり、水産資源を増やす放流事業などの活動に使用しています。そして、その活動については、店頭や、ウェブサイトで報告しています。しらす漁は、安定しているとはいえない状況が続いています。親魚であるカタクチイワシ自体が減少傾向のうえ、黒潮の蛇行や湾内の海流も影響しています。自然相手とは言え、このままでは美味しい湘南しらすを食べられなくなってしまいますから、少しでも資源保護に力を入れていく必要があるんです。ですから、毎年、稚魚を放流しています。海にとっては、小さなことですが、継続していくことが大事だと思ってやっています。お客様を巻き込んで、還元していく方法が一番だと考えていますので。

 

未経験者が2年間で経営ノウハウを習得!「魚」業態の強みとは

―独立支援制度・業務委託制度の充実、人材教育に注力していますが、内容について教えてください。

Hanatare-Ebisu_店舗外観うちは、スタッフが担当制で、魚、野菜、日本酒などの仕入れをしています。仕入れをして、売価設定をするという一連のことを行うことで、より飲食業の面白さがわかると思うんです。スタッフ達もいずれは独立したいと考えているはずですから、その時に、この一連のことが出来ないと商売はできません。メニュー構成と原価を考えてバランスをいかにとってやっていくか。それが出来るようになると、店の経営が出来るようになります。もう既に11人が独立しましたが、このプロセスを経験したからこそです。独立希望者には数字を包み隠さず公表していますし、経営ノウハウも指導します。少ない資金で自分の店を持つことが可能な「業務委託制度」も確立させ、現在は4店舗が業務委託店です。今後も、ケースバイケースで支援していきたいと考えています。「魚」は、原価が高い、何かと難しいからやらない方がいいというイメージがついていますが、きちんとやれば売り上げは立ちます。「魚」のことを覚えてしまえば、その後も、いろいろな場面で役に立ちます。特に若い人に「魚」についてのノウハウを教えて育てたいですね。ですから、当社は飲食業界初体験の若い人たちを歓迎しています。中途採用しかしないチェーンの魚居酒屋とは違って、まず人を育てることに力を入れています。未経験者でも2年間で出来るようにしています。魚が使えれば、差別化になりますし、強みになるはずです。魚の価格は、毎日劇的に変化しますから、それに対応するために、全店舗で、毎日価格を変えています。ひどい時は、200%の変動、4倍になることもあるほどです。その相場を読んで仕入れて、それを料理として提供する、これは「魚」だから出来ることなんです。相場合わせをして、仕入れをやっていないと分からない。これを鍛えることが、うちのシステムで、他の飲食店ではしないことだと思っています。ですから、これをきちんとマスターすれば、店が経営できるんです。

 

国内外で「はなたれ」ブランド確立を目指す

―今年の2月に、御社にとって初のFC店「立喰い焼肉 治郎丸」を野毛に出店しましたが、経緯をお聞かせ下さい。平尾代表_5

開店して1ヶ月後に、実際に新宿店に食べに行きましたが、「いいな、これやりたい」と思ったんです。もともと、「治郎丸」を運営している越後屋の江波戸さんとは知り合いでしたが、おもしろい業態をやりだしたなと思いました。美味しいものをリーズナブルに、日替わりで仕入れて提供するのは、うちのコンセプトと同じで、それの肉バージョンだと思いましたから、興味がわきました。それに、FCのメリットは、その業態ノウハウを組織作り含めて知ることが出来ることなんです。業態的には、野毛あたりに合うと思いましたし、その頃ちょうど、野毛の物件が動いていて、7坪ほどの物件の話がタイミング良くきまして。FCについては、良い物件が出て、「治郎丸」のようなコンセプトのしっかりしたものであれば、今後もやっていくかもしれません。

―今後の展望について教えてください。

直近では、11月17日に東京・大塚店がオープンしました。2016年春には、銀座・数寄屋橋の商業施設への出店が決まっています。両方とも、「はなたれ」ブランドでのオープンです。特に、銀座店については、商業施設での出店となって、初めてですし、インバウンドの来店客が見込めることも考えられるので、近い将来の海外出店の際に、スムーズになるよう、パッケージとして確立したものにしたいと考えています。

―海外進出をお考えなんですか。

はい、物件次第ですが。ここ数年ずっと考えていました。第一希望としては、シンガポールですね。商業施設に出店できれば理想的なんですが。ただ、海外進出については、慎重にやっていきたいので、当社の事業計画のメインにはしていません。チャンスあれば、動いていくという感じです。
(聞き手・文:玉井 由希子)

平尾謙太郎氏プロフィール平尾代表_1
株式会社First Drop代表取締役。1976年神奈川県生まれ。大学卒業後、大手流通企業に入社。鮮魚部門に約5年間勤務した後、2003年11月「魚と酒 はなたれ 横浜・長者町本店」をオープンして飲食業界に参入。現在は、「魚と酒 はなたれ」、「海を愛する はなたれ小僧 横浜駅東口店」、「日本酒Saka蔵」、「魚とワイン はなたれ野毛店」、「魚とワイン Hanatare」、「The Fish & Oysters」、FC店の「焼肉 治郎丸 野毛店」など計14店舗(業務委託含む)を展開中。

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