新・編集長コラム

ガストロノミーと大衆酒場の融合「ガストロ酒場」が、外食マーケットの裾野を広げる

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


コロナ禍を受けて高級店も相次いで型破りな業態に挑戦!

大衆酒場がガストロノミーに歩み寄る一方で、ガストロノミー側にも変化が見られる。

例えば、渋谷の「Mono-bis(モノビス)」。青山のフレンチ「MONOLITH(モノリス)」の姉妹店として8月にオープン。「MONOLITH」はディナー1万5000円程度からのコース主体の店だが、新店「Mono-bis」は、ディナーは3300円から本格フレンチを楽しめる店となっている。フレンチのコース料理をおぼんに収めた「一膳完結」の定食スタイルを提供。フレンチのコースは「値段が高い」「時間がかかる」と抵抗があるお客に対しても、本格派のフレンチを楽しんでもらおうという提案だ。

客単価は2万円超、「日本一高い居酒屋」で知られる博多発の飲食グループの「田中田」は、2時間半のオーダーバイキング制の「博多 奈良屋」を西麻布に出店。「好きなものを好きなだけ」をテーマに、税・サ込で12800円のオーダーバイキング制を打ち出した。「何をどのようにどれだけ頼もうが一律料金」という安心感で、新たな客層の開拓に挑んでいる。

ガストロノミー側からも、これまで興味のなかった層にもその魅力をアプローチする動きが始まっている。従来のレストランのセオリーとは異なるスタイルで、ガストロノミーの魅力を広めている。

食は人にとって身近なものだが、それだけに食に対する価値観は千差万別。単にお腹を満たせればいいという人がいれば、美味しいもののためなら一食に数万円をはたくこともいとわない人までいる。ガストロノミーはどちらかと言えば後者のような一部の熱狂的な美食家達のものだったが、いま、より大衆に向けた姿へと進化している最中だ。

コロナ禍で外食を控える雰囲気が広がり、外食マーケット全体が縮小する中で、このように外食の楽しみより幅広い人へ訴求する動きは意義深い。今後の「ガストロ酒場」の広がりに期待したい。

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