直接思いを伝え、コンセプトに共感した店舗にのみ卸す
布村氏:一番大変だったのは製造を委託する工場を探すことでした。酒粕をシロップにする製造ラインを持つ工場がなく、なかなか受け入れてくれるところが見つからなかった。特に、酒粕を加熱してアルコールを飛ばすという工程について「そんなことはやったことがない」と言われてしまって。最終的に手を挙げてくれたのが、熊本・天草の工場。「酒粕を再生する」ということや「循環」のコンセプトに共感してくれて協力してくれることになりました。アルコールを飛ばす工程も、工場の方々が独自の方法を確立してくれた。酸味がやわらかい天草レモンを加えることで味もよくなり、しかも地元の産物なので調達コストも下がるなど、さらに製品としてブラッシュアップできました。
河内氏:改良を重ねて、お客様の反応もすごくよくなった。気に入ってリピートするお客様も増えました。
小嶋氏:「米のこじま」でもお客様の反応がいい。今では店のコンセプトを表す看板ドリンクになっています。
布村氏:首都圏を中心に、つながりある居酒屋やカフェ、約60店舗で提供してもらっています。とはいえ、どんな店でもいいから広げたいわけではなく「SAKEKASU syrup」のコンセプトにきちんと共感してくれる人とやりたい。「導入したい」と問い合わせがあれば、まずは私が富山から直接お店を訪ねて商品のコンセプトやストーリー、思いを伝え、納得してもらったうえで仕入れてもらっています。
河内氏:直接お店に伺ってストーリーやコンセプト、熱量を伝えた方がいい、と布村さんに僕が提案しました。知人のツテで「とりあえずやってみるか」と1回は仕入れてもらっても、思いやコンセプトが伝わってないと継続意義が無く1回きりで終わってしまう。やはり熱量を伴わないと継続しないと思いました。
布村氏:とにかく「売れればいい」とは思っていません。オーナーはもちろん、実際に「SAKEKASU syrup」をお客様に提供することになる現場のスタッフにも思いが伝わってなければならないので、富山から時間や交通費はかかりますが、お店に赴いてしっかりと説明します。スタッフが「オーナーがやれと言ったから」とただ流れ作業で提供するのはコンセプトに反する。廃棄されるはずだった酒粕を利用し、循環する社会の実現を目指していること、地方創生につなげて関わる人を幸せにしたいという想いなど、共有できるお店とともにブランドの価値を高めていきたいです。