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スペシャル企画

廃棄される酒粕を「街の資産」に再生! “循環”する社会を目指し、富山の居酒屋オーナーが「SAKEKASU syrup」を売る理由とは?

日本酒造りの際に発生する酒粕。高い栄養価が含まれると言われ食品として活用も可能なものの、有効な利用法が少なく多くは廃棄されているのが現状だ。そんな酒粕をシロップに再生したのが「SAKEKASU syrup(サケカスシロップ)」。現在、首都圏を中心に約60の飲食店で同製品を使ったサワーが提供されている。仕掛け人は富山で居酒屋を3店舗展開するHuman Being代表の布村充司氏。飲んで美味しいだけでなく「循環」というコンセプトを掲げ、想いを持ってこの「SAKEKASU syrup」の普及にあたっている。今回は自店舗で「SAKEKASU syrup」を提供するコジマ笑店の小嶋崇嗣氏、2TAPSの河内 亮氏とともに、その誕生秘話や製品に込めた想いについて、3人で対談を行った。#PR


Human Being代表:布村充司氏(写真中央)
1976年富山県富山市生まれ。かぶらやグループなど経て、2011年、富山駅近くに「居酒屋あんぽんたん」(現在は「野菜肉巻串 酒場あんぽんたん」にリニューアル)をオープンし独立。現在は富山で「富ノ旨ミ28by」(現在は休業中)と「酒場ヤマ富」を展開する。

コジマ笑店代表:小嶋崇嗣氏(写真右)
1977年東京都練馬区生まれ。楽コーポレーションを経て独立。都内では吉祥寺「呑・喰・燃 じぃま」、高円寺「CRAZY×COENZYまんまじぃま」、浜松町「座魚場まるこ」などと、地方で複数の居酒屋を展開する。自身の父親の実家が米問屋を営んでいたことから、白米にこだわった酒場「米のこじま」を2023年3月、高円寺にオープン。10月には渋谷道玄坂の「酒呑気まるこ」を渋谷鶯谷町に移転オープンした。

2TAPS代表:河内 亮氏(写真左)
1982年新潟県村上市生まれ。アパレル企業から飲食業へ転身し、フーズサプライサービス(現・ブラボー・ピープルズ)などを経て独立。現在は三軒茶屋「三茶呑場マルコ」、「ニューマルコ」、「コマル」や、下北沢「下北六角」の居酒屋を展開。来年1月には虎ノ門ヒルズステーションタワー内に「虎ノ門 楽㐂 -LUCKY-」もオープン予定。

「SAKEKASU syrup」とは?

布村氏自身が何度も試作を繰り返し、たどり着いたシロップ。独自製法でアルコールを飛ばした酒粕をペースト状にし、北海道産甜菜糖と天草レモンを独自配合で加えたもの。サワーの割材などに使用できる。富山県氷見市の高澤酒造の純米酒からできる、新鮮な酒粕のみを使い、熊本・天草の工場で製造する。

提供例:「SAKEKASU syrup」を焼酎、ソーダと合わせ、仕上げにレモンやスダチを絞ったサワー。酒粕の風味を残しつつ、すっきりとした味わいで食事とも合わせやすい。「大人のカルピス」「カルピッ酎」など、店によってそれぞれの商品名で提供。ヨーグルトと合わせてより濃厚な味わいに仕上げたり、フルーツと合わせる店もある。

コロナ禍で奔走する居酒屋仲間の姿や、カフェ・カンパニー楠本氏の著書に刺激を受ける

―居酒屋オーナーである布村さんがこの「SAKEKASU syrup」を企画することになったきっかけは?

布村氏:毎年、新酒の季節になると取引のある蔵や酒屋から酒粕が送られてきていました。酒造りの過程では何トンもの酒粕が発生しますが、廃棄するにもお金がかかるそうで、「タダでもいいからもらってほしい」ということでした。うちの居酒屋で料理のソースやシャーベットにして使っていましたが、消費量には限界がある。蔵としても酒粕の処理には頭を抱えているようで、何か力になれないかと思っていました。

―そこで生まれたのが、酒粕をシロップにするアイディアですね。

布村氏:はい、知人のバーテンダーに相談したところ、シロップにしてドリンクとして提供するのは?と提案してくれて。まずは自作でシロップを作って、それをチューハイに加えて「大人のカルピス」という名前で商品化することにしました。最初は軽い気持ちでしたね。

―そこから本格的に事業として取り組むようになった経緯は?

布村氏:最初にシロップを自作したのが2020年の初頭。すぐにコロナ禍となり、それどころではなくなってしまいました。コロナ禍真っただ中で居酒屋は通常営業もできず悶々とする一方で、小嶋くんや河内くんはじめ東京の居酒屋仲間はテイクアウトやデリバリーだったりECを始めたりと、それぞれできることを考え取り組んでいて。彼らの行動力は「本当にすごい!」と刺激を受けました。

同時に、カフェ・カンパニーの楠本修二郎さんの著書「おいしい経済」にも影響されました。「単においしければ良いというのではなく、地球の環境負荷の低さや持続可能性も含めて『おいしい』の基準になる」という楠本さんの考えに感銘を受けた。コロナで大変な状況でも、目先のことや自分だけのことに追われるのではなく世のためになることを何かしたいという思いが沸いてきました。私にできることは何だろうと考え、それがこの「SAKEKASU syrup」だと思い至ったんです。

―どういう思いでこの事業に取り組んでいるのでしょうか?

布村氏:廃棄される酒粕をシロップとして再生することで、飲食店、お客様に喜ばれるのはもちろん、蔵や酒米を作る農家といった地域の人々へも幸せが波及していくのではないか。酒粕を廃棄せずに循環させることでフードロスの削減、持続可能な社会へ貢献できる。作り手よし、飲食店よし、お客様よし、未来へよしの「四方よし」となり、楠本さんの言う、単に「おいしい」だけでなくそれ以上の価値を生み出せるんじゃないかと思ったんです。

―都内の居酒屋で経験を積んだ後、地元・富山に戻って独立した布村さんは地元への想いも強いのですね。

布村氏:はい。富山でも一部の町で過疎化が問題になっている。私が居酒屋を運営できるのは、地元の蔵や農家、漁師などの生産者が素晴らしい食材を生産していただけるからこそ。何かふるさとの力になりたいと思っていました。実際に町の人からの声を聞いて現状を知る機会がありましたが、地方の人達は自身の町の魅力を気付いていないことが多い。酒粕を廃棄ではなく「街の資産」に再生し、それをきっかけに地域活性化につなげていきたいんです。

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