皆さんこんにちは、飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。
今回は久しぶりの配信となります。
まず初めにこの度の新型コロナウイルスにより多大な影響を受けられた飲食店の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
この配信を執筆している2020年6月末の状況ですが、郊外の食事需要業態等は前年を超える店舗が出始めていますが、繁華街の居酒屋業態に関してはまだまだ前年対比50%~60%で推移しており、依然として厳しい状況が続いています。
こうした中で今回の講座では私共が実際にコンサルティングをさせて頂いているご支援先でアフターコロナにおいてV字回復をされたお店がやっている成功事例についてお話をさせて頂きます。少しでも皆様のご参考になれば幸いです。
今回私共のご支援先でV字回復をされた店舗には共通点があります。
それは「顧客情報の徹底した活用」です。
アフターコロナにおいてV字回復をされたお店がやっている事
自店舗の顧客情報をしっかりと保有しており、自社のコンテンツをしっかりと既存客にPRできている店舗がアフターコロナにおいてV字回復を実現されています。
皆様も今回のコロナ禍においては「グルメサイト」等による集客が一切機能しないと感じられたと思います。
アフターコロナにおいてグルメサイトでお店を調べて、今まで行った事の無い新しいお店に行きますでしょうか?ほとんどの方が今まで行った事のある「馴染み」のお店に行くかと思います。こうした理由から新規客獲得に力を発揮する「グルメサイト」が機能しない状況となっているのです。
実際に先日、消費者2,000人に対する「アフターコロナの飲食店選び」に関するアンケート調査結果を当社にて分析しました。その結果でも消費者がアフターコロナで飲食店を選ぶ基準の一つに「馴染みのお店」がありました。
その他、来店基準のアンケート結果で注意するべき点としては「衛生(感染)対策が行われているお店」でした。仮に皆様が会社の飲み会や会食の幹事だった場合、衛生(感染)対策が行われているお店と、行われていないお店でしたらどちらを選びますか?衛生(感染)対策をしていないお店を選んだ時に参加メンバーや上司から怒られるのでは??というマインドが働くと思います。
そうした意味でも衛生(感染)対策は重要です。さらに言うと衛生(感染)対策をしている事をしっかりとPRする事が重要です。最近では丸亀製麺さんがテレビCMで大々的に衛生(感染)対策を発信しておられました。せっかく自店舗で衛生(感染)対策をしていても、お客様にそれが伝わらなければ意味がありません。私はこれを「衛生マーケティング」と呼んでおり、今回V字回復を実現した店舗でも「衛生マーケティング」を徹底しています。
具板的には店内をアルコール等で消毒する風景を撮影した動画等をSNSで投稿する等の手法も有効です。当社で計測した結果、こうした衛生(感染)対策動画は再生率、再生時間共に高い事が分かりました。グルメサイトの「こだわりページ」等の衛生(感染)対策を掲載する事も有効です。
話を元に戻します。アフターコロナにおいては「馴染みのお店」というのがとても重要なキーワードになります。これは何も今に始まった事ではありません。ここで先人の商売の知恵として「江戸の大火」のお話をさせて頂きます。皆様も一度は聞かれた事があるかもしれませんが、江戸時代は火事が非常に多く、2~3年に一度大火事に見舞われていました。
こうした中で店主は、火事が起きるとまず初めに「顧客台帳」を持って逃げたそうです。高額な商品よりも「顧客台帳」を優先して持って逃げるのです。そして、火事が納まった後に顧客台帳を見ながら常連客の自宅を訪ねて自身の無事と営業再開の報告をしていくのです。そこで常連のお客様が来店や購買をして下さり、少しずつ商売を復興させていったとの事です。
さらに注目するべき点は「江戸時代は2~3年毎に大火を繰り返していた」という事です。せっかく火事から復興しても、また2年後にお店が全焼するといった事も珍しくありませんでした。こうした繰り返す経営危機下において「顧客台帳」を持っていない店舗は次々と廃業に追い込まれていったとの事です。
私はこの度のアフターコロナにおいても「江戸の大火」の教訓は大いに役に立つと思っています。商売において最も重要なのは常連のお客様です。そして常連のお客様に自社のコンテンツを迅速かつダイレクトに届ける為にも「顧客台帳」が必須となります。
では飲食店において「顧客台帳」はどうやって集めるのか?その代表的な方法を下記に記載させて頂きます。
飲食店の顧客情報収集の一例
①LINE公式アカウント(旧LINE@)
これは既に取り組まれているお店も多いかと思いますが、お客様にLINEを通じて定期的に情報発信を行います。ただし情報発信を行う為にはお客様に公式アカウントを友達登録して頂く必要があり、スタッフのマンパワーが必要な点がデメリットです。
②メールアドレス
お客様のメールアドレスを獲得した上で定期的にメールマガジン等を配信する手法です。当社のご支援先で上手くいっているのは、特典を付与したデジタルアンケート等(無料のグーグルフォーム等を利用)を活用してアドレス収集を行うやり方です。その他には、グルメサイトの予約時に取得したメールアドレスを活用する事も有効です。
③SNS
Instagram、Facebook、Twitter等のSNSを通じて情報発信を行う手法です。SNSマーケティングに関しては業態(客層)によって向き不向きがありますので、自社の業態(客層)に合わせた媒体選定が必要となります。とある調査会社の結果ではInstagramの利用者数がFacebookの利用者数を抜いたというデータもあります。飲食店でもInstagramを上手に活用して集客している店舗が増えてきています。
④予約時の携帯電話番号
携帯電話番号を獲得することでSMSマーケティング=ショートメッセージを配信する事が可能になります。携帯電話番号は他の顧客データと異なり、予約時等に自動で集める事が可能な為、顧客情報の母数を増やすには非常に有効です。一方で個人情報保護の観点から予約ページにプライバシーポリシーを記載する等の対応が必須となります。なお、専用のシステムサービスを活用する事で、簡単に一斉送信する事もできます。
⑤自社アプリ
自社で開発したアプリ等を活用する方法です。アプリをダウンロードしてもらえればプッシュ通知等の有効なアプローチが可能ですが、アプリ開発コストの捻出や継続的にアプリを保有してもらう為の特典設定等の工夫が必要となり、小規模の飲食店で上手に運用できている企業様は少ないというのが実情です。
⑥住所会員
紙のポイントカード等を通じてお客様の住所を獲得し、その住所に対してハガキ等を郵送する方法です。WEBマーケティングがマッチしない高い年齢層やファミリー層等には有効ですが、配信までの時間とコストがかかる点がデメリットとなります。
こうして獲得した顧客情報も活用しなければ一切意味がありません。次は顧客情報の活用に関してお話をさせて頂きます。
顧客情報の活用方法
当社の複数のご支援先ではコロナ以前から「顧客情報」の取得に戦略的に取り組んできました。営業自粛直後には、今まで獲得してきた「顧客情報」を活用してテイクアウトのPRを実施しました。実施したのはメルマガ、ショートメッセージ、LINE、SNS等のWEBマーケティングです。
これらの訴求により1店舗で1日15万円以上のテイクアウトお弁当を販売した事例もありました。さらに6月に入ってからは営業再開のご案内や、旬の食材を活用したメニュー、スタッフの奮闘記等を次々とWEBマーケティングを活用して発信し、常連客の来店促進に成功しています。
ここで重要なポイントは「一つのコンテンツ(PRしたい事)」を「複数のチャネル(WEB媒体)でPR」する事です。なぜなら先ほど申し上げたようにWEB媒体によって顧客層が異なるからです。WEBマーケティングの売上獲得方程式は下記の通りです。
「①配信数(インプレッション数=表示回数)×②開封率(クリック率)×③来店率×④1組人数×⑤客単価」
つまり、まずは母数である①の配信数、SNSであればインプレッション数(表示回数)をどれだけ高められるかです。そうした意味でも複数のWEB媒体でのPRが必須となります。ただWEB媒体毎にPRするコンテンツを変えるのはとても手間がかかるので、一つのコンテンツを複数のチャネルでPRする事が大切なのです。私はこれを「シングルコンテンツのマルチチャネルPR戦略」と呼んでいます。
ハガキ発送、チラシ配布等のアナログマーケティングに関しても有効ですが、今回のような緊急性を要する場面においては時間とコスト面からWEBマーケティングの方が圧倒的に有利です。
また、配信するコンテンツの内容に関しても、アフターコロナにおいては割引などのPRだけではなく自社の価値を伝えるような内容にしていく事が重要です。
アフターコロナの消費者のマインド調査データでは「家では食べられないもの」等も来店動機の上位に入っています。そうした意味でも自店舗でしか食べられないもの、自店舗でしか体験できない事(サービス)等をしっかりと伝えていく活動=コンテンツマーケティングが重要となります。アフターコロナに伴う経済不安がある為「安さ」というキーワードは重要ですが、それだけでは競合店に埋もれてしまいます。
第二波や秋の感染再拡大等が懸念される中で、今からでも遅くありませんのでぜひ皆様のお店でも「顧客情報の獲得」と「コンテンツマーケティング」に力を入れて頂き、繰り返す経営危機に備えて頂ければと思います。
少しでも皆様のご参考になれば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
◆セミナー情報「アフターコロナでV字回復した飲食店のやっている事」
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★三ツ井創太郎プロフィール
株式会社スリーウェルマネジメント代表
一般社団法人日本フードビジネス経営協会 理事長
1980年、アパレル業を営む父と老舗呉服店の娘である母の長男として神奈川県横浜市で産まれる。高校三年の時にバブル経済の崩壊に伴い家業が倒産し家を追われる。大学時代は昼は、寿司店の板場でアルバイトをする傍ら、累計2,600万部以上の著書を発刊している日本で最も有名な料理研究家の栗原はるみ氏の元で、調理アシスタントとして住み込みで働き、夜はバーでバーテンダーをして学費を稼ぐ生活を送る。家業の倒産などの経験から経営者を支援する「経営コンサルタント」という職業に漠然と興味を持ち出す。
2003年、大学卒業と同時に日本全国で60店舗以上店舗展開している東京の企業に入社。同社レストランのキッチン、ホール、店長等を歴任した後、最年少で飲食部門統括責任者に昇進。多店舗化に向けた組織構築やライフスタイル提案型カフェの業態開発、フランチャイズ本部構築などを最前線の現場において10年以上経験。それでも「経営コンサルタントになって、かつての父のように困っている経営者の助けになりたい!」という想いは強く、 2009年より、昼は飲食企業の統括業務を行いながら、夜は東京のビジネススクールに通い2年間で2,000時間以上を費やして、国内外の最新の経営学を学ぶ。
2012年、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研入社。入社2年で飲食部門のチームリーダーに昇進。10年以上の飲食勤務で培った“現場感覚”と、数多くのコンサルティング実績に裏づけされる“最新のビジネス理論”を取り入れたコンサルティングにより、中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントへ支援を行う。
2016年、4月株式会社スリーウェルマネジメント設立。2017年に出版した「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(同文舘出版)」がアマゾン外食本ランキング1位のベストセラーとなる。
現在は日本全国の個人店から上場チェーン、海外企業までの幅広い企業に対して「業態開発」「業績アップ」「店舗マネジメント」「人材マネジメント」等、様々なコンサルティング支援を行う傍ら、日経MJへの外食記事提供やテレビ、業界紙などでの専門家解説等も多数手がけている。