新・編集長コラム

ファスト化する高級店、トキ消費の居酒屋―タイパ至上主義は飲食店の追い風になる?

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


「タイパ」重視の価値観は飲食店にとって追い風?

この時間制のいいところは、お客にとっても店にとっても「タイパ」がいいことだ。お客にとって「時間を気にせずゆっくり過ごせる=満足度が高い」という図式は崩れつつある。だらだら飲むより、短期集中で楽しむ方が「タイパ」はよいのだ。特にコロナ禍を機に、そもそも2時間、3時間と長時間にわたって飲み続ける飲み会は本当に必要だろうか?と人々は考え始めており、最近では飲み会を早めに切り上げる人も増えているようだ。最初の1時間はおいしい食事とともに有意義な話をしつつも、2時間、3時間と経てば酔いも回り生産性のない会話が増え(それはそれで楽しいのかもしれないが…)、お腹もいっぱいになって料理を楽しむ余裕もなくなる。深酒による二日酔いで翌日のパフォーマンスにまで影響が出ればなお最悪だ。「タイパ」を考えれば、そうなる前に、楽しいところでぱっと切り上げるのが正解だろう。

そして、お客にとってだけでなく店にとっても、お客が決まった時間でパッと帰ってくれるのは大きなメリットだ。以下の記事のように、「居酒屋ひでじろう」でも、そのメリットを狙っている。

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以下、「居酒屋ひでじろう」(フードスタジアム記事)より
 
「店側からしても、もし満席でもお客様の退店時間が決まっているので、席が空く時間をお客様に伝えることで取りこぼしを防げる。また、近年は良くも悪くもSNSの影響で、お店が狙っている単価の客層とは違うお客様が来てしまい、思うような客単価が取れないといった問題も一部であるようですが、時間制にすることでそうしたミスマッチが防げるのも利点です」。

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「タイパ」の高まりは飲食店にとって追い風かもしれない。先日行われたセミナーでは、Z世代に人気を得ている飲食店オーナー達から「Z世代はお酒をあまり頼まない人も多い」という課題が上がった。一方で、「食べたいメニューが決まっており、それを楽しんだらすぐに帰っていく」という傾向もあるとのこと。つまり彼ら彼女らは「この店に行った」という体験が欲しいのである。その体験をSNSにアップしたり、友達に話したりしたいのだ。その目的さえ達成されれば、滞在時間の長さはさほど重要ではない。むしろ、「タイパ」を考えて早めに帰りたいのかもしれない。そうであれば、単価は伸びないかもしれないがそのぶん滞在時間が短く回転が狙える。こうした性質をうまく利用すれば店・客でwin-winな店づくりが可能になるのではないだろうか。

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