いまリサーチに行くべき3つのネオ酒場
いま飲食店関係者の中での注目度ナンバー1が、2月20日、渋谷にオープンしたばかりの「タートル」だ。エイジアキッチン出身の久我耕輔氏の3店舗目で、千歳烏山の「我ー喰う」と「酒場アカボシ」に続き、次はかねてより念願だったという渋谷に出店した。「銀座 鼓門」の浅倉鼓太郎氏プロデュースのもと開発したメニューは、目新しさがありつつも料理としてのクオリティは確か。ネオ酒場のレベルアップを感じる仕上がりだ。特に、ネギソースで翡翠色にそまった春雨の上に鮮やかなオレンジ色のカラスミをたっぷりかけた「唐墨春雨」は、個人的には今年イチのヒットメニューだと思う。見た目の美しさから真似するところも出てきそうだが、味のクオリティをどこまで再現できるかはわからない。
【記事】渋谷に「タートル」がオープン。千歳烏山「我ー喰う」と「酒場アカボシ」に続く3店舗目、エイジアキッチンでの修業時代に親しんだ渋谷に念願叶って進出!
同じく2月、浅草には「呑みやしき209」がオープン。渋谷ネオ酒場の雄、「呑ん処209」「シブヤバル209」などを展開するグローバルダイニング卒業生の宮村栄宏氏の新店舗だ。長らくホームとしていた渋谷から浅草に進出。「呑ん処209」をベースに、使い勝手やエンタメ性を追求した店づくり。インバウンド復活の兆しも見える浅草で勝負をかける。
いまや酒場街として知名度を上げた学芸大学には、「西口アオギリ」がオープン。同じく学芸大学で「大衆酒場アオギリ」と「ホドケバ」、都立大学で「はんろく」を運営するアオギリコーポレーションの4店舗目だ。駅を挟んで反対側の「大衆酒場アオギリ」とは一味違い、メニューは作り込み過ぎず、良い意味で肩の力の抜けた気軽な酒場で、この店をベースに各地で展開をしていきたい考えだそう。
【記事】学芸大学に「西口アオギリ」オープン!東口の人気店「大衆酒場アオギリ」などを手がけるアオギリコーポレーションの4店舗目。新たな大衆酒場業態で店舗展開を目指す
シンプルだから映える「引き算映え」がネオ酒場メニューのトレンド!?
そうしたネオ酒場中心に広がっているメニュートレンドに「引き算映え」がある。
いくらやウニをあふれんばかりにかけたり、とろける様子が食欲をそそるチーズ、卵黄トッピング……映える食材をどんどん足して華美にしていく「足し算」の映え方をする料理が爆発的に増えた。が、お客はそろそろ食傷気味だ。その反動として、余計なトッピングをそぎ落とし、かえってそのシンプル過ぎる見た目が「映える」料理が流行り始めている。これを「引き算映え」と言うのはいかがだろうか?
実際の「引き算映え」の例をいくつか挙げてみたい。
西麻布「EUREKA!(ユリーカ)」の「うふマヨ♥」
ゆで卵の丸いフォルムにかかる、つるっと光る黒いソース。「定番のウフマヨを真っ黒にしちゃおう!」と生まれたメニューだそう。黒いソースの正体はイカスミ入りのマヨネーズで、マヨネーズは燻製することで日本酒とのペアリングを意識。見た目だけでなく味にもこだわった一品だ。
【記事】日本酒界のカリスマ・千葉麻里絵氏が独立、西麻布に「EUREKA!(ユリーカ)」をオープン。カウンター、立ち飲み、個室…各自のスタイルで日本酒ペアリングを楽しむ酒場
学芸大学「警視鳥」の「明太子チーズオムレツ」
いま学芸大学で若い女性を中心に大人気の焼鳥居酒屋「警視鳥」の「明太子チーズオムレツ」は、チーズオムレツの上に、ピンク色の明太子ソースが一面にかけられたビジュアルがインパクト大。ソースをめくるとようやく黄色いオムレツの姿が見える。
【記事】学芸大学に「警視鳥(けいしちょう)」がオープン。「鳥せん」の2号店は、「居酒屋らしさ×居酒屋らしくない」が作るギャップで見せる焼鳥居酒屋
渋谷「タートル」の「黒酢豚」
先ほども紹介した「タートル」からは、「黒酢豚」。照りを湛える黒酢ソースを一面にかけたスタイルの酢豚は昔からあるが、いま「引き算映え」として再注目されそうだ。
あくまで映え要素ばかりに走りすぎてはいけないが、お客を楽しませたいという心意気から生まれるトレンドメニュー。今後もより酒場カルチャーが盛り上がっていくことを期待したい。