M&Aはコロナ禍で一時中断するも、互いの熱意で再始動。今後は“自分自身の答え”を探究する
中原氏:そういった想いの込められたい志井グループですが、今回M&Aを意識したのはどういった経緯があるのですか?
石井氏:い志井グループは「い志井」、「エムファクトリー」、「ビーヨンシー」の3つの会社から成るものです。そして、父の代から続く「い志井」は私の息子に引き継いでもらい、洋食業態を中心に展開する「エムファクトリー」と「ビーヨンシー」は1つにして、参謀の長谷川勉という者に託そうと考えていました。
しかし、息子と話をしてみると、彼はひとつの店舗を徹底的に作り込みたいという職人肌で、代表として会社全体を回していくことにはあまり関心がない。また、長谷川も病に倒れてしまい、すぐさま会社を任せられるような状態ではなくなった。どうしたものか、と考えていたときに、中原さんと出会ったんです。
中原氏:たしか、2016年でしたね。封書でお手紙をお送りさせていただきました。
石井氏:私自身、M&Aというものはよく知らない状態だったのですが、この状況を打破するための選択肢が色々ある、ということは理解できました。そして、お会いして話を聞いてみると、ウチの会社のことを親身になって考えてくれていた。実は、中原さんとお会いした後にも他のM&Aコンサルタントと話をしてみたのですが、中原さんほど熱意を持ってくださる方はいらっしゃらなかったんです。そんな中原さんが自信を持って紹介してくださったのが、ホットランドの話だったんですね。
中原氏:ほかにもいくつか案件の引き合わせをしていたので石井会長の人となりや考え方が分かり始めた頃でした。それもあって、ホットランドはきっと相性が良いのではないかと思っていました。
石井氏:それは、ホットランドの佐瀬社長とお会いしたときに感じました。この人なら、私が大切にしてきた店、味、そしてスタッフを大切にしてくれる。きっと、いいカタチで継承をしてくれると思ったんです。結局、まとまりそうなタイミングでコロナ禍になってしまって、かたちになったのは1年半後になってしまいましたが。
中原氏:石井会長はこの1年半、どのようなお気持ちで過ごしておりましたか?
石井氏:コロナ禍の煽りを受けて売上面では落ち込んでいましたが、心中は穏やかでした。と、いうのも父が築いたい志井ブランドの味や魅力があれば、コロナ禍が落ち着いて世の中が動き出したときにも、すぐお客さまが帰ってきてくれると信じていたからです。ウチには、ウチにしかない味がある。それならば私たちにとっての「いつも通り」をブレずに守っていけば、きっと大丈夫。結果、コロナ禍が少し落ち着いたここ最近、お客さまは戻ってきている。そして、佐瀬社長も戻ってきてくれました。
中原氏:私は延期になった1年半前、このM&Aは「流れてしまうかも」という考えがよぎりました。実際、他社の案件はコロナ禍で全て流れてしまっていたんです。その中で、唯一ホットランドだけは案件の検討を再開してくれた。きっと、佐瀬社長の本質的な「やりたい気持ち」が違っていたのだと思います。
石井氏:ありがたいですね。佐瀬社長に感謝です。
中原氏:今後はホットランド主導で展開を広げていくことになると思いますが、石井会長個人としてのやりたいことなどはありますか?
石井氏:ホットランドに相談しながら「自分自身のもつ焼き屋」を一軒、作りたいと思っています。私は、これまで父のもつ焼きの味を守り、表現してきました。そんな私自身が出した「自分の答え」を表現するお店を作りたいんです。そして、そこでも若い世代にいいお店をつくる原点を伝えていきたい。それこそ、ホットランドから「お店をやりたい」と思う若人を送り込んでいただいてもいいなと思っています。お客さまに喜んで食べてもらえる店づくり、お金の稼ぎ方、それらのバランスのとり方。こういったことを後進に伝えていくことが、今後の私の仕事なのだと思っています。
中原氏:素晴らしい考えですね! ありがとうございました!
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(取材=高橋 健太)