インタビュー

株式会社ノート 代表取締役 貫啓二氏


編集長・佐藤こうぞうと貫啓二氏

―以前の講演で「『サイゼリア』や『鳥貴族』はデジタル化している」とおっしゃっていましたが、そのエッセンスを教えてください。

いわゆる“仕組み”ですよね。この仕組みがないと、同一業態の多店舗化って絶対できないと思うんですよ。うちは人見知りのスタッフが多いですが、仕組みさえあれば何とでもなると言いますか。それを“デジタル”と僕は呼んでいます。
「鳥貴族」がどこ行っても「鳥貴族」っていうのは、仕組みがきちんとあるからですし、同一業態でのFC展開ってそうでないといけないと思います。だからあの仕組み、拡大の仕方っていうのは目標とするところですね。
昔、創作居酒屋のFCって多かったじゃないですか。けど結局全部ダメになりましたよね? それってレシピが多すぎて例えマニュアル化したとしても、調理スキルの高い人でないと難しくてダメになる。

―確かにレシピが200もあるようじゃ、スタッフの技量に左右されますよね。味の均一化が図れない。串カツ業態では、他に大きなチェーンってありますかね?

 調べると「串家物語」が60店舗くらいのようですね。日本一の串カツを目指すなら、そこを超したいなと思ってます。あと「串かつ でんがな」で16店舗くらいでしたね。

-「串かつ でんがな」の後ろが見えてきた感じでしょうか。
今度は、貫さん自身の経営に対する考え方を教えてもらえますか?

僕がいつも考えてる“仕事の取り組み方”って、ゴルフをやることと大差がない。「仕事を休みたい!」と思ったことは一回もないですし、逆に言えば、仕事をしている感じが全くないんですよね。
仕事なんて“息吸う”みたいなもん。息吸うみたいに、当たり前のつまらないことでもずっとやっていける。「今日はこういう吸い方をしてみようかな」とか、こんなつまらないことを10年20年考えられるのが仕事かなと。

 

貫啓二氏

-なるほど。仕事を仕事として捉えず、ですね。

さらに言えば、例えば皿洗いを1日やらされたら嫌になるけど「俺は日本一の皿洗いになる!」という思考を持てるかどうかだと思います。そういうつまらないことでも、モチベーションを維持しながらやり続けられる発想ができるかどうかですよね。

-仕事の中でも一番楽しいことって、やっぱり店づくりですか?

楽しいですけど、初めの頃よりはアドレナリンが出なくなりましたね。今は、店を大きくする、増やしていく、そうするうちに「新しいビジネスチャンスが生まれるかもしれない!」ということを考えるのが楽しいですね。例えば海外からオファーが来るかも知れないとか、スーパーに「田中のソース」が並ぶとか、そういう展開にアドレナリンが出ます。
ある程度のステージに行った時、その次のステージを目指すというのが楽しくて。次の世界が開けると思うと楽しいですよね。

-最近、業界としても注目度が増していると思いますが、オファーは結構来ていますか?

商業施設からは声がチラホラ。けど、今のところは断っていますね。まだ具体的に海外進出を考えているわけではないです。
海外だったらアジア圏でなく、アメリカやヨーロッパで考えたいなと。日本で成功して進出した「一風堂」みたいな展開が理想です。日本で有名になってニューヨークでドンと成功するような。日本でちょこちょこ繁盛店つくって「中国行ったら何とかなる」ってのは違う気がしますよね。
「一風堂」ってチェーン店ですけど“美味しい博多ラーメン”ってブランドを確立できていますよね。普通のチェーンとは違う。
東京で流行って「田中が来た!」って思われるような“ブランド”を確立したいと思っています。チェーンっていうのはあくまでも器であって、やっぱり「田中」を広めたい。
貫啓二氏

-夢がありますね。今、楽しくてしょうがないでしょ(笑)

いや、それでも不安もありますよ。これまでも失敗することもありましたが、ここまで来られたのはタイミングが良かったので、本当に運だったとしか言い様がないですね。もちろん苦労もかなりありましたけど、何て言うか“上手く行き過ぎて不安”というのもあります。
飲食で努力してきた人でも、独立して苦労している人って多いじゃないですか。それなのに、僕は飲食経験がないのに展開できたっていうのは、“ツキ”以外何でもないですよ。
例えば「鳥番長」の岩田さんもそうじゃないですか。10年ラムラに勤めて。そういった経験はやっぱり活きてて、「鳥番長」のお店行くとメニューづくりもメニュー構成も上手いですし。長年いろんなことをやってきたんだろうなってのが、見て分かりますよね。僕にはそういう技術がない分、不安ですよね。
飲食なんてどうなるか分からないじゃないですか。今流行ってるものが明日にはなくなる。「いつまでも続く」なんて思ったことはないんですよ。

-毎日コツコツと、ブラッシュアップを図りながらやっていくことが大切ですよね。そうは言っても、順調にFC出店も決まってきていますよね。

はい。今のところ6月末に自由が丘、6月中旬に蒲田と聖蹟桜ヶ丘での出店が決まっています。今ちょうど物件を探しているのがさらに2社くらいですね。すべて違う企業なので、全部で7社の企業と関わっています。聖蹟桜ヶ丘は、初のスタッフ独立FC店になりますね。
FCは良いですが、直営の展開が進みませんね。人材不足もありますけど、物件がなかなか見つからない。良いのが出てきてもFCオーナーさんが「くれ」と言ってくるので、物件回しちゃって(笑)。だから直営が伸びないんですよね。

 

串かつ田中外観

-では、展開計画は変更ですか?

いや、今変更してしまったら諦めちゃうんで。渋谷店出して年末にかけてダーッと出したいですね。年末に4店舗。昨年も方南町、武蔵小杉、笹塚と3店舗連続でオープンを経験しているので、やれると思います。
今年は人数も増えてスキルも上がっているので、できないと逆におかしいと思っています。後は物件の問題をクリアしたいと思っています。年内で直営10店舗目指しているので。
(インタビュアー・佐藤こうぞう)

 

貫啓二氏プロフィール

貫啓二氏

株式会社ノート、代表取締役。高校卒業後から10年間、トヨタグループにて物流改善を経験。その後飲食に転身、大阪・心斎橋でショットバーを開業する。一度はデザイナーズレストランに手を出すも、本物志向に目覚め2003年に東京進出。京懐石店をオープン(2008年売却)。世田谷に一号店「串カツ田中」を出店し、その後尾山台、中目黒、都立大、武蔵小杉、笹塚に出店。5月には直営7店舗目となる渋谷店が新規オープン。FC店に方南町、学芸大学がある。

 

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