「働きやすい環境づくり」を進めながら繁盛店に!
現在28歳のPLEIN(プラン/東京都港区)代表・中尾太一氏は、星野リゾートのホテルにフレンチの料理人として入社し、料飲部門の統括本部でも経験を積んだ。その後、「Soup Stock Tokyo」を展開するスマイルズで新業態の商品開発や人材開発なども経て25歳で独立。2017年9月、表参道に「Bistro plein OMOTESANDO」を開業した。同店は、5000円~のコースがメインで客単価は8000円。高級店よりもカジュアルでありながら、料理もサービスも高いクオリティーを追求し、12坪・月商400~500万円の繁盛店に成長した。2020年に2月には、麻布十番に2号店の「Bistro plein AZABU(ビストロ プラン アザブ)」も出店している。
また、2店舗とも定休日を週2日設け(月曜・火曜)、スタッフの完全週休2日を実現。長時間労働を避けるために、ランチも行わず、夜のみの営業にしている。中尾氏は独立する時から「飲食業を憧れの仕事にする」ことを目標としており、「働きやすい環境づくり」の取り組みでも注目される若手経営者だ。
これまで築いた世界観を壊したくない。ならば新業態で!
そんな中尾氏が、3店舗目として代々木上原に出店したのが、カフェ&ショップの「michiru」。ウィズコロナを踏まえて開発した新業態だ。出店の経緯について、中尾氏は以下のように話す。
「『Bistro plein』でランチやテイクアウトをやると、これまで僕たちを応援してきてくれたお客様の世界観を壊してしまうことにもなりかねない。でも、会社としては、ウィズコロナに対応して、新しい食のカタチもフレキシブルに提案していく必要がある。だったら、それは別の場所でやろう、ということで出店したのが『michiru』です。カフェ&ショップという形態で、カフェではカレーやベーグルを提供し、テイクアウトにも対応します。ショップでは、シャルキュトリーやキッシュ、各種ソース等の冷凍商品をショーケースに並べて販売し、『代々木上原の人たちの冷凍庫』を目指します。僕自身、経営者としてランチの営業もテイクアウトも、ショーケース販売のショップも初めての経験。お客様に喜んでいただきながら、僕自身が勉強できる店にしたいと考えています。トライ&エラーをいっぱいしながら、何がお客様のニーズに合っているのかを知り、コロナが終わった後も必要とされる店に育てていきます」
フレンチシェフならではの発想でカレーの「ライス革命」
カフェの一番の売りはカレーだ。「基本的に飲食店の業態は、要素を詰め込み過ぎない方がいい。ショップを併設した『michiru』は要素が多くなりやすいので、カフェは極力、シンプルにしようと考え、『カレーが美味しいカフェ』という分かりやすいコンセプトにしました」と中尾氏は話す。
その看板商品が「農家のスパイスカレー」(1000円)だ。「野菜をふんだんに使い、農家さんとフレンチシェフが一緒に開発したら、こんなカレーになったというイメージです」と中尾氏。このカレーは「ライス」にフレンチシェフならではの新しい工夫がある。米を炊く際、契約農家から仕入れる有機玉葱を皮も一緒に炊き込み、玉葱エキスの旨味を加えた「玉葱ライス」にしているのである。「フレンチの肉料理であれば、肉のだしをソースに使うのが当たり前。肉のだしが、肉とソースのつなぎ役になります。しかし、一般的にカレーは、カレーとライスがまったくの別物で、つなぎ役がない。それでも美味しいのがカレーの凄いところですが、つなぎ役があれば、もっと美味しくなるのではと考え、ライスに玉葱エキスの旨味を加えました」(中尾氏)。世の中にはいろんなカレーがあるが、この手法は今まで聞いたことがない。カレーの「ライス革命」なのではないだろうか。米自体にもこだわっており、「三ツ星お米マイスター」に選んでもらった秋田県大仙産の一等級米を使用している。
「農家のスパイスカレー」を始め、「ビストロのキーマカレー(半熟卵付)」(1000円)、「信濃地鶏のパテと野菜のベーグル」(580円)、「ブルーチーズパテと野菜のベーグル」(580円)などのカフェメニューを、テイクアウトでも販売。テイクアウトの容器に、環境に配慮したオリジナルのパッケージを使用しているのも、こだわりの一つだ。また、ドリンクメニューも、「コーヒー」(450円)は山口県で30年続く老舗「タカダ珈琲」から届くオリジナルブレンドを使用。他のソフトドリンクも、たっぷりの国産レモンと有機ミントを用いた「michiruのレモンスカッシュ」(490円)、「北海道産完熟トマトジュース」(460円)、「農園直送 野菜ジュース」(460円)、「自家製ジンジャーエール」(480円)、「ノンアルコールサングリア」(550円)など、こだわりのあるラインナップで、アルコールはビール、ハイボール、ワイン、モヒートを計8種類(600~800円)用意している。
冷凍キッシュを5000個販売!その実績を引っ提げて出店
「michiru」のショップで販売する冷凍商品は21品。「白レバーペースト(約100g)」(750円)、「黒豚のリエット(約200g)」(850円)、「若鶏のコンフィ(約180g)」(700円)などのシャルキュトリー、「ビストロのバーニャカウダソース(100g)」(700円)、「大沼牛の粗挽きボロネーゼソース(約500g)」(2500円)などのソース、「農園直送野菜の幸せのキッシュ」(2000円)などで、「湯煎やトーストして温めるだけで、ちょっとリッチなビストロの味を家庭で楽しめる」冷凍商品を、食べきりサイズの個包装で販売する。
この冷凍商品の販売は、コロナ前からすでに構想があり、中尾氏は協力メーカーとともに今年1月くらいから開発に着手していた。シャルキュトリーやソースは、メーカーに製造を依頼し、自店舗で製造免許を取らなくても販売を可能に。一方でキッシュの冷凍販売に関しては「Bistro plein OMOTESANDO」のキッチンで免許を取得し製造。
そして、これらの冷凍商品は、まずオンラインショップでの通販を5月からスタート。これが大好評を博した。7月中旬までにオンラインショップだけでキッシュが5000個も売れており、シャルキュトリーや各種ソースなども、その美味しさが評判になった。「Bistro plein 」の2店舗は、4月から5月にかけて完全休業にしたが、オンラインショップだけで5月は350万円、6月は400万円の売上を達成。その実績を引っ提げてオープンしたのが「michiru」のショップだ。ただし、カフェに併設したリアル店舗のショップは、当然ながらオンラインショップとは異なり、地域の人たちがターゲット。その点でPLEINにとっては新たな挑戦であり、「地域の人たちの冷凍庫になる」ために1号店として選んだ場所が代々木上原だ。高級住宅街のグルメな街として知られる代々木上原は、いかにも「michiru」と相性が良さそうで、イートイン・テイクアウト・ショップの売上比率は6:3:1を想定している。
雇用機会を増やす業態としても位置付け。FCの構想も!
「働きやすい環境づくり」でも注目されているPLEINは、例えば無料の求人広告であっても、募集すると200人もの応募があったという。「働きたい会社」としても相当な人気だ。しかし、中尾氏は、「Bistro plein」は「2店舗まで」と決めている。「クオリティーを追求しているので、これ以上、店を増やすのではなく、料理やサービスをさらに深堀りし、ミシュランのビブグルマンを獲れる店を目指しています」と話す。
そうした中で「michiru」は、雇用機会を増やすための業態としても位置づけている。「michiru」は、カレーもメーカーに製造してもらっているので、「Bistro plein」のような高いスキルは必要なく、多店舗化によって雇用機会を増やすことができる可能性を秘めた業態なのだ。なお、「michiru」も月曜・火曜が定休日。さらに、通し営業が一般的なカフェでありながら15時~16時は「中休み」にして労働時間を短縮。業態は違っても、「働きやすい環境づくり」を強く意識しているのは「Bistro plein」と同様だ。
また、「michiru」は、独立開業者向けのFCや、商業施設のショップにも適した業態に育てていきたい考えだという。まさに広い視野と、大きな目標を見据えながらPLEINは力強く歩みを進めており、28歳の若手経営者・中尾氏は、今後もますます目が離せない存在になりそうだ。
店舗データ
店名 | michiru(ミチル) |
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住所 | 東京都渋谷区上原1-29-5 |
アクセス | 代々木上原駅から徒歩2秒 |
電話 | 03-5465-1739 |
営業時間 | 11:00~15:00(LO14:30)、16:00~20:00(LO19:30) |
定休日 | 月曜・火曜 |
坪数客数 | 11坪16席 |
客単価 | 1200~1300円 |
運営会社 | 株式会社PLEIN |
オープン日 | 2019年7月17日 |
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